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そしてダンスパーティへ

 翌日の癒しの治療魔法はまあまあの入りで、学園で仕事をしている人たちやメイドさんたちが来たり。屋台の人たちの子供たちがやってきてたのはかわいかった。

 みんな傷が治るのが不思議ですごいらしく、大騒ぎ。様子を見に来てくれたデリクや騎士のお兄さんたちに肩車をしてもらい嬉しそうだった。


 そろそろ終わるかな、と思っていたころ、外から声がかかった。

「姉さん、いいですか?」

 ルーカスがテントを覗いた。

「あら、どうぞ。ルー……」

 ルーカスと言いかけた口を思わず閉じた。


 ルーカスが連れてきたのはどこかのメイドさんらしい姿の女の子。同じぐらいの年頃に見える。

「そこで転ばれて」

「あら、どうぞ座って」

 見ると、足をすりむいたらしい。膝をおさえて椅子に座った。


「出てますね」

 ルーカスが外に出ると、椅子に座ったメイドさんの膝に手を置いた。

「あ、あの」

「大丈夫よ。ちょっと嫌かもだけど、ごめんなさいね」


 すぐに手に気を入れ込んで、傷が治るのをイメージした。

 だが、なんだか、不思議とひんやりとした感じが自分の中に流れてくる。

 これはこの人の中のイメージ?

 おとなしい、物静かな人なのかな。


 それにしてもメイドさんなんだろうけど、かなり人見知りなのかも。顔を見たいけど、深くフードをかぶっていて見えないし。かなり恐縮しているのか、恥ずかしがっているのか。

 もう傷は治っているはず。だけど私はこの人が温まるような気を入れ続けた。


「あ、あの」

 手を通して暖かさが感じる。たぶん身体も温まっているんじゃないだろうか。

「うん、もう大丈夫だからね」

 ふうっと息を吐きだし、立ち上がった私は外にいるルーカスに声をかけた。

「終わったよ」

「はい、じゃあ、外まで送ります」


 だが、メイドさんは首をふるふると横に振ると、小さな声で「大丈夫です」

 言うが早いか、門の方へと行ってしまった。

「ありゃりゃ。ルーカス、怖がらせた?」

「な、失礼な」

 ムッとしたルーカスは、

「きょろきょろしてたから、どなたかか、何か探しているのかと声をかけたんです。ただそれで驚かれたのか段差に足を引っかけてしまって」


「ふーん」

 と答えた私に、ルーカスは、

「それより、もうそろそろダンスの時間ですよ」

 とそれはそれは嫌そうに伝えてきた。



「姉さん」

「ん?」

「これはいつまで続くんです?」

「え? ああ、そうねえ」

 学園祭しめのダンスパーティ。

 私は弟のルーカスとワルツを踊っている。


 ルーカスの姿はそれはそれはかわいらしくも美しい。

 男子学生のまなざしを一身に浴びている。


 どうよ、うらやましかろう。


 鼻高々で踊る私は、最近通常気味になった男装姿。服はもちろんカロリーナ様からのプレゼント。いい加減、服代はお支払いしないとよね。今回はルーカスのドレス代もあるし。

 そう、私は男装でルーカスは女装、美しい貴族令嬢に姿を変えている。


 私と踊りたい、あの人は誰? と言う声が生徒会に殺到したらしい。本当かしら。

 で、ベシー達が一計を案じて、もうお相手がいるとみんなに知らしめよう、そのためには貴族女性に頼まないと、そんな人いる? ってなって、ちょうどと言うか運悪くというか、生徒会室に顔を出したルーカスがいけにえになったというわけ。

 それにしてもこんなに美人になるなんて。

 さすがに私の弟、血のつながりはないけれど。

 ふたりして、ダンスが始まる前にシャンダのとこに走り、メイクをしてもらい、ウイッグも借り、変装してダンスに戻った。


 あちこちから熱いまなざしを感じるのは、

「さすがルーカスね。みんなが見てるわよ」

 ため息をついたルーカスは一言、

「姉さんって……」

 とだけ返された。何? 変なこと言った?


 それにしても、みんなきれいだし、かっこよくキメている。

 ベシーもロザリンも、アンも。


 ベシーは胸元のレースと裾のレース、あとは花が散っような細かい刺繍、ウエストはきゅっとしまり、裾に向かって華やかに広がるドレスは、一見おとなしそうにも見えるが大人っぽい華やかさに満ちている。一緒に踊るバーナードも嬉し気で誇らしげで何とも言えない幸福そうな顔してる。


 ロザリンは、マーメイドラインの大人っぽいドレス。何よりも色が美しく絵画のようだ。青系で上から下へと濃くなるようにグラデーションで染めてある。クール系のロザリンにはよく似合っている。

 今まではフリルレースとリボンまみれのドレスをあてがわれていたらしい。

「男性はこういったかわいらしさを求めるものだって。特に、フレディと仲良くしてほしいみたいで」

 と口の端を曲げていたが。もともと幼馴染みな二人、親もそういう目でみていたのだろう。


 今のロザリンは、男なんて関係ないとばかりに自分の好きなドレスを着て楽しそうだ。

 まあね、人の目なんて関係ないし、自分が好きなもの着たいものを選んだ方がいいには違いない。何より本人が楽しそうなのが一番だもの。だけど。


「せっかくですから、踊って差し上げたら?」

 私と踊っていたロザリンからフレディにバトンタッチした。

 ロザリンは「エマ様!」と小声で怒っていたが、何やかや言って二人とも楽し気に踊ってる。

 ダンスぐらい、楽しまないとね。


 アンは、多くの男性の目をくぎ付けにしていたが、私からノアにバトンタッチして踊る姿はとても素敵だった。


 それに何といってもカロリーヌだ。さすが悪役令嬢、黒いドレスがめちゃくちゃ似合っている。

 なぜか、私と踊ってから、王太子とは短い曲だけ踊っていた。

 

 いいのかな。それとも、以前の行為を怒っているのかしら。それなら私に対しても怒っているはずなんだけど。すっかりお友達のように接してくれているし。


 カロリーナと王太子、ふたりって、結局どういう関係なんだろう。

 幼馴染み? 婚約者よね? 

 あんなに絵になるふたりなのに。踊る様は童話の王子様とお姫様そのもの。挿絵の一場面のようだ。


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