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VRの紺碧の海、紅のガレオン~女艦長スカーレットの冒険記~(改訂版)  作者: s_stein & sutasan


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エピローグ

 翌日の夜、ヘッドギアを手にしたものの、ヨシツネのことが気になってゲームを始めようかどうかと迷っていると、スマホがポコッと音を立てて部屋の静寂を破る。誰がメールを送ってきたのだろうと確認してみると、ココだった。


『グランド・デクヴェルト公式サイトのお知らせ、見てごらんよ』


 思わず唇がほころび、声が出る。


「やっぱりね」


 まだ見てもいないのに、このタイミングでのお知らせ公開でおおよその見当が付いてしまった。きっと、運営側で動画を解析して不正の確認が取れたのだろう。早速確認のためにサイトへジャンプし、NEWの表示があるお知らせのリンクをクリックする。


 ------------------------------

 ~運営より重要なお知らせ~

 不具合などの不備を利用した不正行為が発覚したため、

 該当するプレーヤーのアカウントを停止いたしました。

 今後も不正行為が見られる場合はペナルティを受ける場合がございますので、十分ご注意ください。

 ------------------------------


 予想通りの結末だった。


 実に素っ気ないアナウンスだが、裏では大騒ぎになっていたことだろう。これで、ヨシツネのプレーヤーはアカウント停止になったと思われる。もう長崎へ近づく度にヒヤヒヤすることはなくなった。


 ただ、偽の個人情報でアカウントを作ってレベル1からプレイを開始し、私を捜し回ってちょっかいを出してくるかも知れないので、注意は必要かも知れない。


 すぐにヘッドギアを被ってベッドに横たわり、深呼吸をしてからゲームにダイブする。そして画面を表示すると、運営から回答が届いていた。内容は『ご協力ありがとうございます。該当のプレーヤーについては、不正行為があったため、アカウントを停止いたしました』と、こちらも簡単な内容でチートツールについては何も言及がなかった。


 私はため息をついて、運営の回答へのリプライを書く。


『今後ともゲームで不正行為が起こらないように対策をしっかり打っていただきますようお願い申し上げます。それと、具体的な証拠を求めるのも良いですが、それは今回の私たちのようにプレーヤー側に負担を強いることになりますので、不正の噂が流れた段階で、できるだけ早く運営サイドで調査を進めていただきたいと思います』


 書き終えてフーッとため息をつき、送信ボタンをタップした。



 次の日の休み時間に、私は学校の廊下をSPに囲まれて歩く(みず)()姉さんとその追っかけが通り過ぎていくのを、自席に座って見送った。


 するとココが私の所にやってきて、自分自身の右肩にかかっているセミロングの髪の毛をいつものように指で挟んでリズミカルに滑らせながらニヤニヤと笑った。


「追っかけないの?」


「いいの」


「何? ゲームで仲間になったから、もういいと?」


「……まあね」


 そう。私の30もの地方艦隊にみんなが会長だと信じているユキムラさんがいる。でも、実は副会長が影武者をやっていて、ラファエルさんが会長だということは、仲間ですら知らない。


 それは、私と(みず)()先輩と()()()先輩だけの秘密。


 その秘密には、(みず)()先輩が私の実のお姉さんであることも含まれている。


「生で会って、『今度一緒に世界一周をしましょう』とか誘えばいいのに」


「生で? ゲームでもいいじゃない?」


「ゲームだけじゃなくて、生でどんどん近づけばいいじゃん。こーみは有名人なんだから」


「とにかく、いいの」


「へー」


 ちょっと呆れた顔をするココを前に、私は『いつでも会えるお姉さんだから』という言葉を飲み込んだ。


 危ない、危ない。


 ゲームでも、つい「お姉さん」って言ってしまいそうだ。


 これからは、気をつけないとね。


 そうそう。私は、(みず)()姉さんからメールで『今晩、二人だけでお話をしたい』と夕食に誘われている。


 何度メールを読み返したことか。もう今からドキドキが止まらない。


「会長にも会えてレベル99にもなって、もうやることないんじゃない?」


「あるよ」


「何?」


「まだハワイにも行っていないし、きっとあると思うけど、ナスカの地上絵を見ていないし。もしかしたら、ナイアガラの滝もエアーズロックも発見出来るかも知れないし。村も世界中のを制覇したわけじゃないし。やることいっぱいあるわよ」


「それだけ?」


 ココの意味ありげな言葉で言わんとすることがわかった。そうだ、自分の事よりもそれを先に言うべきだった。


「いや。仲間とイベントを楽しまなくちゃ」


 すると、ココがサムズアップする。


「そう来なくちゃ、スカーレット艦長。今日もゲームでみんなが待っているよ」


 その時、教室の窓から爽やかな風が吹き込んだ。それはまるで、VRゲームの潮風のように。

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