表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRの紺碧の海、紅のガレオン~女艦長スカーレットの冒険記~(改訂版)  作者: s_stein & sutasan


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/97

鬼の居ぬ間に長崎へ

 ユキムラさんとラファエルさんが仲間になったことにより、これで最大数の30の地方艦隊を持ったことになる。「このVRゲームの世界で一大勢力になったね」とユキムラさんは言ってくれたが、私にはその実感がない。楽しくチャットをしたりイベントをこなしたりする仲間がいっぱいいるという感覚はそのままだし。一大勢力という派閥を連想させる言葉が好きではないし、自分には似合わないと思う。


 ユキムラさんは「これからラファエルと函館に行く」と言って私と別れたが、二人が肩を並べて歩いている姿を見ると、お似合いのカップルに見えて仕方がない。


 頭の中で、ユキムラさんの立っている位置にソッと自分を置いてみる。二人でドキドキしながら歩く姿を想像する。互いに手を近づけ、指を絡め、手を握る……。


 ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだぁ……!


 想像しただけで猛烈に恥ずかしく、首筋の血管がドクンドクンと音を立て、顔が()()ってきて両手であおいでしまう。顔中の毛穴という毛穴から湯気が吹き出すかのようだ。


「明日から学校、どうしよう……」


 いつものように、私は(みず)()先輩を避けるように通り過ぎ、先輩は私の方を振り向かない。そうやって互いに関心がないかのように装いつつ、其の実、互いに恋い焦がれる……。


「――!!」


 いかんいかん! 妄想が膨らみすぎて、とんでもないことになりそうだ。私は、気を紛らすため、大阪で交易品を仕入れて杭州に向けて出港することにした。その程度では気が紛れないことはわかっていても。



 杭州で交易品を満載して大阪へ戻る途中、長崎の様子を(うかが)いに針路を少し南寄りに向けてみた。すると、哨戒中のヨシツネの艦隊がいないことに気づいた。これは好都合。そこで、急遽長崎へ入港を試みた。


 実はヨシツネが隠れていて、近づくと港からヌッと現れるのではないかとビクビクしたが、そのようなこともなく、すんなり入港できた。


 長崎に入れたとなると、真っ先にやることは2つ。宝箱からのアイテム獲得と探検だ。先に宝箱の探索を開始する。


 まず、町の建物の扉を一つ一つ開けていくと、3つの宝箱に毒消しの小瓶と復活のポーションと隠れ蓑が見つかった。2つは、ステータス異常やHPが底を尽きそうになった時に使えそうなアイテムだ。隠れ蓑は何に使うのか不明。


 次に噴水の所へ行って「探検」メニューをタップすると、なんと扉が出現した。もしや覇者の宝具が手に入るのかと思うと、緊張で喉が渇く。


 扉の中へ入ると、いつもの賢者の小人が現れた。金閣寺以来、もう会う機会がないのかと寂しい思いをしたもので、久しぶりに会えて嬉しい。しかし、相手はこちらが喜びを噛みしめる余裕を与えずに質問してきた。


「第1問。魏志倭人伝を書いたのは誰か?」


 中国の誰かさんじゃない? 名前は……教科書にあったのか記憶なし。


 時間切れで扉の外に放り出されたので、再度挑戦するため「探検」をポチッとな。


「第1問。江戸時代天明年間の志賀島で発見された純金製の金印の正式名称を書け」


 出たー、書き取りテスト。教科書に載っているあの金印でしょう? 和の菜の国王? 何だっけ?


 適当に書いたら不正解で、またもや扉の外へ放り出された。こうやって失敗を繰り返すのは作戦である。なぜなら、どんな問題が現れるのかがわかり、後からそれと同じ問題が出て来るからだ。


 3度目の挑戦しようとしたとき、背後に人の気配がしたのでギョッとして振り返る。すると、そこには黒い軍服を着た七三分けの少年がニヤニヤしながら立っていた。


「あーあ、ついに扉を開ける奴がここに来ちゃったか」


 この言葉にピンときた私は、ちょうど画面を開いていたのでメニューから録画を開始する。これは、バルバロッサから教わったチートの証拠をつかむ作戦だ。この場合、私の目と耳と口がカメラとマイクになり、見聞きしているのがそのまま動画になる。


「あなたは誰!?」


 うすうすわかっていても、そう尋ねるのは記録に残すためだ。


「人の名前を()くなら、自分から名乗りなよ。無礼な大人だな」


「私はスカーレット」


「スカート?」


「スカーレット」


「スカーレッド?」


「スカーレット! わざと間違えていない?」


「スカーレット……。ああ、風立ちぬのスカーレット・オハラ?」


「それ、風と共に去りぬよ。それに、私はスカーレット・オハラじゃありません。あなた、からかっているでしょう?」


「ああ、緋色のスカーレットね」


 ずっとニヤニヤしているから、人が怒るのを見るのが楽しいというイヤな性格なのだろうか。


「私は名乗ったわよ。今度はあなたの番よ」


「何その言い草。初対面を相手に喧嘩腰で生意気な口の利き方だな」


「喧嘩腰なのは、そっちよ。それに先に『奴』って言ったのはあなたよ」


「話にならないや」


 少年はそう言って画面を表示し、何やら操作するとフッと消えた。


 彼は間違いない。ヨシツネだ。


 おそらく、彼は哨戒を再開したに違いない。今、外へ出ようとすると攻撃され、まず間違いなくゲームオーバーになる。彼が哨戒を維持したままログアウトすると、艦隊が居座り続けることになり、きっとゲームオーバーの無限ループに陥るだろう。


 逃げるには方法が一つある。それはセーブデータをロードすることだ。これで杭州に戻れる。しかし、これではせっかく入手した毒消しの小瓶などを手放すことになる。問題を2問聞いただけで逃げ出すのももったいない。


 逃げないで、アイテムを所持したまま探検を続ける方法もある。問題を覚えてログアウトし、参考書などで答えを調べて再度ログインするのを繰り返して、全問正解を狙うのだ。あわよくば、レベル99になれるかも知れない。ただし、これには毎回セーブが必要。なお、寄港中の船は攻撃されないので、探索にいそしむ間、自分の艦隊が全滅することはない。


 さあ、どうする?


 逃げるか、探検を続けるか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ