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彼はそれでもペットをもふるのをやめない  作者: みずお
第三章 夏イベ 腐龍編
64/88

09.彼は妹達と再会する2

 実はこれ、イベント期間中なんだぜ……。

 ΩΩΩ<な、なんだってーっ!


 遅々として進みませんが、ようやく次の話からイベント描写です。

 追記:夏休み残り 十日→二週間弱。イベント期間 五日→十日。修正しました。

 俺達五人は連れ立って館の正面玄関に歩いて行く。

 その道中すれ違うプレイヤー達がコハネやナギを見て、ひそひそ話したり指指しをする。

 その光景を見ながら、俺は隣のアリシアに何気なく尋ねる。

「やっぱり『雪月花』は有名なのか?」

「『雪月花』が、というよりあの二人が有名なんです。とは言ってもあの二人が『雪月花』の看板である事は間違いないですが。……ソラさん達も私が『雪月花』のメンバーだと気付いてなかったでしょう?」

「……悪い」

「お兄さんは何も悪くないですよ」

 俺が謝るとアリシアが苦笑する。

「私はお二人に比べてギルド加入の期間は短いですので、周囲からの認知度が低いのは理解しています」

 私は正式サービスからの参加ですから。と付け加える。

「まあ実際、お二人の実力をみたら納得してしまうんですよね。二つ名持ちは伊達じゃないのですよ」

 そういえば俺はナギのは少ししか、コハネに至っては全く戦闘を見たことが無い。

「そーなのかー」

「ええ。ザクとガンダム並みに違いますね」

「お、おう……」

 時々この子が俺よりも年下なのか疑いたくなる。

 俺の戸惑いには気付かず、アリシアは俺にだけ聞こえる声で続ける。

「でも――」

 アリシアは強い笑みを見せ、

「私もいつか憧れのお二人に追いついてみせます」

「……そか」

 本当に強い子だと俺は改めて彼女を認識する。

 俺達の会話に気付いたコハネが俺に飛び付く。

「二人はさっきから何を話しているのかなっ?」

「……お前の実力についてだよ」

「おおっ! そういえばお兄ちゃんには私の雄姿を見せたこと無かったねっ。今度どっかに攻略行こうねっ!」

「そだなー。攻略デートでついでに約束も果たすかー」

 確かハルを紹介した報酬的なものがあったはずだ。

 早く清算しておかないと後々面倒になりかねない。

「お兄ちゃんっ!? それは流石に酷いよっ!! 攻略とデートは別だよっ!!」

「俺はコハネとならどこでもデートだと思ってるぞー」

「ふおおぉぉぉっ!! その言葉が嬉しくて流されそうな自分が憎いっ!!」

 コハネが頭を抱えて激しく振り、雑念を追い払う素振りをする。

 そんな妹も可愛いと思っていると、三人がひそひそ話す声が聞こえる。

「コハネさんと、リ、リクさんは兄妹ですよね?」

「ええ。そうですよオカリナちゃん」

「あれです。所謂重度のブラコンとシスコンです」

 好き勝手言われている。

 俺がやれやれと首を振っていると、オカリナが慌てながら話題を変える。

「きょ、兄妹といえばっ。私初めはアリシアちゃんとリクさんが兄妹だと思ってました」

「アリシアちゃんは先輩の事お兄さんって呼んでますからね」

 ナギがその台詞を拾う。

 アリシアは考え込むと、真面目な表情で言う。

「そういえば呼び名で思い出しましたが、ナギさんはどうしてお兄さんを先輩と呼んでいるんですか? 同じ学校なんですか?」

「ん? そうなの?」

「何でお兄さんが聞くのですか……」

 慣れてしまって違和感が無かったからスルーしていたが、そういえば何で先輩なのか俺にも分からない。

「……最初は名前だった気がするなー」

 あまり思い出せないが、多分そうだった。

「ええっと、そうでしたかねー」

 ナギが言葉を濁すのを不審に感じながら、俺は何時頃から思い出そうとする。

「てめぇはあの時のテイマーじゃねえかっ!!」

 しかしその思考に割り込むように、叫び声が俺に突き刺さる。

 そちらを振り向くと、何時ぞや酒場で『雪月花』のメンバーをナンパしていたチャラ男がいた。

 彼は俺を指差しながら、ズンズンとこちらに近づいてくる。

「テメェッ! 前回といい今回といい、どうしてこう――」

 面倒くさそうなので聞き流しながら、俺はコハネの方を向く。

「コハネ。テイマーとタイマーって似てるよな」

「うん。スイマーも似てるよねっ!」

 脊髄反射の語りに付いて来るとは流石俺の妹だ。

「――うらやまけしからんッ!! って話聞けよ!!」

「ああ、悪い悪い。ひよこの性別の見分け方だっけ? あれ難しいよね」

「鳥類の話はしてねえぇぇぇッ!!」

 叫ぶチャラ男。ナギが困った表情をしながら、俺に提案する。

「あの……。取り敢えずアルベルトさんの話聞きませんか?」

「ん? 知り合い?」

 疑問を口にする。あと、ナギがチャラ男の名前を呼ぶのがそこはかとなく面白くない。

 その事を顔に出さないようにする俺の袖を引っ張りながらコハネが答える。

「この間、うちのギルドに来たんだよっ!」

 チャラ男ことアルベルトが決まりが悪そうに頭を掻きながら、

「……あの誘い方は乱暴過ぎるってLBに折檻――説得されてな。謝りに行ったんだ」

「ほー」

「でも女の子への声掛けは止めねえけどなッ!!」

「おいっ!」

 こいつ実は反省してないだろ。

 アルベルトはいい笑顔をしながら、

「可愛い女の子が居るのに声を掛けないのは失礼だろ? っとそうだ! お前にも言っとく事があったんだ」

「……俺は男だよ」

「気色悪い勘違いすんじゃねえよッ!! 嫌な汗が出てきたじゃねえかっ!!」

 アルベルトが心底嫌そうな顔で俺を非難する。

 彼は深呼吸を繰り返し落ち着くと、真剣な顔で告げる。

「俺の仲間がお前とお前の友達に迷惑掛けたって聞いた。すまなかった」

「仲間?」

「『影月シャドームーン』のメンバーの事だよ。LBから聞いてないか?」

 『影月』。

 プレイヤーの間でも有名な戦闘系ギルドの一角。

 その構成は戦闘系ギルドというだけあって、殆どのメンバーが冒険者レベル(戦闘系スキルの合計値)

150越えの上位プレイヤーである。

 今のプレイヤーの冒険者レベルが平均で100なのを鑑みれば、その異常な戦闘民族っぷりが分かるだろう。

 ちなみに二つ名持ちは200近いレベルである。黄金のオーラを放つスーパーな戦闘民族である。

 そして彼はそんな『影月』のメンバーを「俺の仲間」と言った。

「じゃあ――」

 目を見開く俺にアルベルトは頷くとはっきりと告げる。

「ああ。俺が『影月』のギルドマスター、アルベルトだあああぁぁぁぁぁッ!?」

 突如アルベルトの足元に黄色の魔法陣が展開し、そこから水晶の鎖が飛び出す。

 鎖で簀巻きとなったアルベルトが地面に転がるのを俺達は唖然と見る。

 そんな俺達に近付く人影がひとつ。

 蓑虫状態の彼に足を掛けながら、ローブの男LBは億劫そうな声をアルベルトに投げる。

「やれやれ。ようやく見つけたぞアル」

「ちょっ!! LBテメェ何してんだッ――!!」

「黙れ痴れ者が。ギルドに迷惑を掛けただけじゃ飽き足らず、他のプレイヤーにも迷惑を掛けるとは。―-《岩塊ロック》」

「ぶべらっ!?」

 アルベルトに魔法の岩石が落ちる。

 気絶したアルベルトに見向きもせず、魔法を唱えた本人は飄々と俺達に言う。

「うちのばかが失礼した」

「い、いえ。特に迷惑を被ったりはしてませんけど……。その、やりすぎでは?」

 ナギの言葉にLBは首を横に振る。

「このまま野放しにしていたら、どっちみち誰かに迷惑を掛けていただろう」

 それに、とLBは続ける。

「女を追いかけて集団行動を乱したこいつには丁度いい罰だ」

(あ、凄く怒ってる)

 その場に居る全員がその言葉で事情を察する。

「では、急いでいるのでこれで失礼する」

 自分のギルドのマスターを引き摺ってLBは俺達の前から立ち去る。

 『影月』の二人が嵐のように去った後、ゲーム初心者のオカリナが彼らの雰囲気に当てられて若干涙目なりながらぽつりと呟く。

「こ、このゲームのギルドって、これが普通なんですかっ!?」

「ないない」

 全ギルドの尊厳の為に、俺達は揃って否定したのだった。



  ◆



 コハネ達と別れた俺達はソラ達との待ち合わせ場所である館の正面玄関に辿り着いた。

「お、来た来たー! ってあんた達何で疲れた顔してるのよ?」

 笑顔でこちらに手を振っていたユーナが、俺達の様子を見て怪訝な顔で迎える。

「いや、何でも無いですよー? そっちも知り合いには会えましたか?」

「うん。あっちも上手くやってるみたいで安心したよ」

 ソラが笑顔で答える。

 ソラ達もイベント前に職人の友人達とパーティを組んでいたらしい。

 しかしその職人組みだけ別のチームに入ったようだ。

 俺がペットを受け取りに行くと言った時、だったら少しだけ別行動にしてその友人達に会いに行こうという話になったのだ。

「しっかしあいつらもラッキーだよな。まさか上位ギルドのチームに入れるだなんでなー」

「上位ギルド、ですか?」

 ジャンの言葉にアリシアが反応する。

 オカリナは上位ギルドで先程の彼らを思い出したのか顔を青くする。

 かくいう俺も『影月』を思い出して嫌な汗を流す。

 そんな俺達の様子には気付かず、ソラが言う。

「ああ。『ドラゴンウィンド』の幹部達らしくよ。普段じゃお目にかかれない素材が扱えるとかで喜んでたね」

 『ドラゴンウィンド』。

 錬度の高い統率力とそれを率いるトップのカリスマ性が特徴のギルドだ。

 ギルドがモンスターを駆逐する様は、それが一つの大きな生き物を思わせる程の連帯感があり、個の『影月』、全の『ドラゴンウィンド(DW)』と対比されるくらい有名らしい。

 まるで騎士団みたいだなー。と感想を抱く俺に、説明をしてくれたユーナが呆れながら言う。

「リクって常識というか、皆が知ってる事を知らないのね」

「アリシアちゃんと一緒だから、そういった上位ギルドには詳しいと思ったんだけどね」

「わ、私ですか?」

 ソラの言葉にアリシアが驚く。

「うん。だって君、あの有名な『雪月花』のメンバーでしょ?」

「ちょっ! それには触れない事になってただろッ!!」

 ジャンが慌ててソラの言葉を遮ろうとする。

「何故、触れない事になっているのですか?」

 しかしアリシアの質問にジャンが決まり悪そうに答える。

「いや、その、アリシアちゃんが此処に居るってことは、その……」

 口ごもるジャンの代わりにソラが答える。

「君がギルドのメンバーと離れて一人なのを気にしているんじゃないかっって話になってね。現に元気も無いようだったし。だからギルドの事には触れないようにしようって話し合ったんだ」

「言い出した本人が破ってんだから世話無いわね」

 ユーナが半眼でソラを睨む。

「ごめん。ついポロッと……」

「あんたは普段から抜けてるというかデリカシーが――」

 ユーナ達がソラにガミガミと説教を言うのを目を見開いて眺めるアリシア。

「良かったな」

「はい?」

「思ったよりもあの二人に近いみたいだぞー」

「……そーですかね?」

 言葉とは裏腹にアリシアは口元を緩ませると、ソラ達の仲裁に向かう。

「皆さん落ち着いてください。そもそも私が言わなかったのが原因ですから」

 そして彼女は堂々と言う。

「改めて自己紹介します。私、『雪月花』所属のアリシアといいます。チームのメイン盾として、貴方達は私が必ず守ります」

 俺からは見えないが、その顔は晴れ晴れとしていただろうと俺には簡単に予想できたのだった。

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