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彼はそれでもペットをもふるのをやめない  作者: みずお
第三章 夏イベ 腐龍編
63/88

08.彼は妹達と再会する1

 ※短め。

  遅くなって申し訳ないです。

 俺とアリシア、そしてオカリナはお屋敷の前方、そこに広がる優美な庭園の中にある休憩所にいる。

 俺達はそこに設置されたベンチに並んで座る。

 アリシアを俺とオカリナで挟む形である。

(……とういか露骨に避けられてるんだよなー)

 アリシアの陰に隠れるオカリナを一瞥しながら、俺は内心苦笑する。

 そんな俺にアリシアが真面目な顔を向けてくる。

「こ、こんな感じですかお兄さん?」

「ん。いいよー」

 アリシアがたどたどしい手つきで膝の上の浅緋あさひにブラッシングしている。

 不器用ながらも優しさを感じるやり方に俺は頷く。

 実際ブラシをかけられているあさひは気持ち良さそうに欠伸をしている。

 その女王様然とした態度に笑うと、自分が笑われたと勘違いしたアリシアが反応する。

「なっ、何か可笑しいですか?」

「んーん。偶に逃げられる俺より上手いよ」

 大抵の場合、構い過ぎる俺が煩わしくなるのが理由であるが、それは言わないでおいた。

「女王様みたいです」

 俺と同じ感想を抱いたのかオカリナが微笑みながらそんな事を言う。

「だなー。この場合女王猫だなー」

「……っ!」

 俺が同意する。

 するとオカリナは体を跳ねさせた後、視線を前髪で隠して小さく頷く。

 反応を返してくれたので、まだマシになった方だろう。

 最初の時は怯えていたので充分な進歩だと思う。

 アリシアは何度かあさひをブラッシングした後、息を吐いてオカリナにブラシを手渡す。

「さあ、次はオカちゃんの番です!」

「ええっ!? む、む、無理だよッ!!」

 オカリナはアリシアが差し出す緋色のブラシを拒否する。

 ちなみにこのブラシは数日前にガイルから受け取った物の一つである。

 緋色に染められた持ち手は手にしっくり馴染んで使いやすく、毛の部分は固めの植物繊維により作られた珍しいもので、癖になる肌触りをしている。

 これは俺があさひ専用に頼んだオーダーメイド品であり、この素材集めにイベント前に原生湿地に篭っていたのだ。

 勿論くちは専用も頼んで受け取っている。

「大丈夫ですオカちゃん。貴女なら出来ます」

 アリシアがそう言ってオカリナにブラシを握らせる。

「えっ? えっ?」

 慌てふためく彼女が可哀想になり、俺はアリシアに耳打ちする。

「少し、無理矢理過ぎないか?」

 いくら仲良くなる為とはいえ、無理は良くない。

「いえいえ。引っ込み思案な人にはこれくらい強引でいいんです」

「ふーん。そっかー」

 考えてるんだな。と感心しているとアリシアがさらに付け加える。

「それに、私だけ醜態を晒したままでは納得出来ないですからねっ!」

「……そっかー」

 俺の純粋な感心を返せ。

 俺達がそう言い合っていると、空気の読めるあさひがおろおろするオカリナの膝に座る。

「ふええぇぇッ!!」

 いきなりの事に奇声を上げるオカリナにも動じず、膝の上で優雅に寛ぐあさひ。

 まるでブラシをかけろといわんばかりのその様子に、俺はすかさず彼女に言う。

「あーたんもしてもらいたいみたいだし、お願い出来ないかな?」

「……は、はい」

 俺の言葉を受けて、オカリナは恐る恐るあさひにブラシをかける。

 オカリナは丁寧な労るような手つきでブラシをかける。

 その所作だけで彼女が几帳面な性格である事が見て取れる。

(一つ一つの事を一生懸命にやる子なんだろうな)

 それだけで好印象を感じる。

「なぅ~」

 気持ち良さそうに喉を鳴らすあさひを見ながら、思わず言葉が出た。

「ありがとね」

「い、いえっ! わ、私も嬉しい、ですからっ」

 オカリナが前髪の隙間からこちらを伺い、小さく微笑む。

 ぎこちないながらもこちらに見せた笑顔に、俺は彼女との距離が少し縮まった気がした。

 アリシアがそんな俺達を見て言う。

「計算通りです?」

「……そこは断言しような」



  ◆



「いやっほーお兄ちゃん!」

「……おー」

 俺達が座っているベンチにコハネとナギがやってくる。

 そんな益体の無い事を思っていると、アリシアがコハネに飛び付く。

「うわっとと。どうしたのアリシアちゃん?」

「いえ。何となく、です」

 言葉とは裏腹にアリシアの腕の力が増す。

 目を丸くしてアリシアの様子を見ていたコハネは、優しく微笑むと柔らかく抱き返す。

「ぎゅ~だよっ、アリシアちゃんっ!」

「はい。ぎゅ~です!」

 ぎゅ~ぎゅ~言い合う二人を見ていると、ナギが俺に耳打ちする。

「寂しかった、みたいですね」

「だなー」

 二人で笑いあう。

 そしてナギはこちらを見ると、

「それでは今度はこちらの番ですね」

「ッ!?」

 瞬時に身構える。

 ナギは俺の様子に喜色を濃くすると、

「はいどうぞ。くーちゃんですっ!」

 くちはを差し出す。

「……え?」

 唖然とする俺の顔にくちはが張り付く。

「やっぱりくーちゃんも寂しかったみたいですね」

「……ああ、うん。そっちね」

「そっち?」

「ナンデモナイヨー」

 俺は体勢を戻す。

 そうしているとコハネとアリシアが戻ってくる。

「コハネさん、ナギさん。こちら仲間になったオカリナちゃんです。そしてオカちゃん。こちらが私と同じギルドのコハネさんにナギさんです」

 ナギが笑顔でオカリナに近付く。

「ナギです。よろしくねオカリナちゃん」

「……はっ、は、はいぃっ!」

「私はコハネだよっ! 私もオカちゃんって呼んでいいかなっ!?」

「!?」

 内気でいかにも気が弱いオカリナは、二人に答えようと口を開く。

 何度か開閉した後に、萎れる様に口を閉じる。

「あーもーっ! 可愛いなっ!! 初めて会った時のアリシアちゃんみたいで初々しいよっ!!」

「あー。そういえばそうだったね。懐かしいね」

「わ、私こんなにおどおどしてませんでしたよっ!!」

「そうだね。ヴィヴィさんの陰に隠れて縮こまってたよね」

「ナ、ナギさんまでッ!!」

 コハネ達がオカリナを中心に話に花を咲かせる。

 コハネに抱き竦められたオカリナは周囲の状況に目を白黒させている。

(こういうのはコハネに任せるのが吉だなー)

 本当はくちはを受け取るだけなら俺だけでも良かったのだが、コハネの人懐っこさを当てにして二人を連れてきたのだ。

 コハネ達を呼んで正解だったと俺は一人頷く。

「……自分の先見の明が恐ろしい」

 俺は一人で怪しく笑う。

「先輩、くーちゃんを貼り付けたまま笑ってる……」

「なっちゃん。お兄ちゃんが変なのはいつもの事だから、気にしない気にしないっ」

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