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Toy ガンナー  作者: チョーゆんふぁ
第三章 ハンター編
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地道が近道

「赤字だね」

ギルドのカウンターに頭を臥せマギさんは言った。


カマキリとついでにカエルを倒し、1日かけて獣車で町に帰ってきた翌朝。

ギルドで討伐の報告をし隣の解体屋でカマキリから取った鎌とカエルを売ったのだがマギさんの笑顔にかげりがあった。

重い足取りでギルドに戻りカウンターで一杯呑むとマギさんはつぶやくように言ったのだ。


「もともと虫系の魔獣狩りは報酬以外の収入はほとんど無いからな、カエルがおまけで2匹も狩れたのはラッキーだったな」

ダニロさんはガハハと笑いながら言ってくれたのだが、そのカエルが赤字の原因になったんですよね

「マギさん、赤字になったのは水の魔玉を全部使ったせいですよね。すみません」

「倒した魔獣の消火に魔玉を使うとは思わなかったよ」

マギさんの口調からは僕を責める様子はなかった。

だけど今回の最大の出費は戦闘とはまるで関係無いところで発生した私的なものなんだよね

カエルとの戦いで油断した僕はスパスというエアガンを奪われカエルに飲み込まれてしまった。

この世界では新たに手にいれることが出来ない武器の喪失で頭に血が上り、おもわずカエルに必殺コンボを叩き込んで丸焼きにしちゃったんだよ

マギさんにカエルのお腹をから銃を取り返せると言われて我にかえったのも後の祭り。

自前の土魔法とありったけの水の魔玉でゴウゴウと燃えるカエルを消火し、生焼けの胃袋を切り裂いて無事に銃を取り戻せたのだが、カマキリの討伐報酬と残り二匹のカエルの売却額を合わせても使った水の魔玉の補填には足りなかった。

反省してます、ごめんなさい

うちのパーティーの被害はそれだけじゃなかった。

「アイツはまだダメか?」

「今朝から便所にこもりっぱなしだよ」

「あんなもん喰うからだ」

ダニロさんとマギさんが話してるのはブロンのことだ。

僕がカエルから銃を取り出している間に消火されて生焼けになった肉をブロンは喰っていたんだ。

その時は半生でもいけるぜとか言って旨そうに食べていたけど、そんなもの食べて無事なわけがない。

ブロンは今朝から腹を壊していた。

「しばらくは使いもんにならねぇな、あのバカ」

ダニロさんの言う通りブロンのバカの食い意地の悪さまで気にするつもりはない

僕への悪態が便所から聞こえてきても知ったことじゃない

村長のお坊ちゃんだっていってたけどあの悪食は何なのだろう


ブロンの話で気を取り直したのか、マギさんはいつもの調子で僕らに聞いてきた。

「私は水の魔玉を補充しにいくけど君達はどうする」

魔玉といえばカエルとの戦いで雷の魔玉はあまり効かなかった。

火の魔法は素材の剥ぎ取りの関係で使えないことが多いから別の攻撃魔法が欲しいな

補充のついでに衝撃の魔法を込めた風の魔玉を作ってもらおう

「マギさん、僕の分に衝撃の魔法を込めて下さい」

魔法を込めてない魔玉の入った革の小袋をアポーツで呼び寄せマギさんに手渡した。

マギさんはジャラジャラと6ミリの魔玉の詰まった小袋を受けとると確めるように

「これ何個ある」

と僕にたずねた。

「50個です」

「1個あたり50ベスタだよ。いいの?」

2個で銀貨1枚、50だと25枚か

「12個ほどお願いします」

僕の所持金は銀貨10枚と銅貨が約50枚、当座は12個で使った分だけ補充した方がいいな。日本じゃBB弾は1,000個単位で売ってたから平気で弾幕張ってたんだけどね

最近は剣の稽古もやってなかったし、いざという時のためにも少しずつ実戦で経験積んだほうがいいかもしれない

誰に習うかが問題だが、ダニロさんに比べてブロンの方が僕に体格が近いしお互いに剣を両手で持つんだけど、アイツは大剣をブンブン回すパワーファイターっぽい、教えかたも感覚でやる気がする。野球界の某ミスターみたいなのは凡人にはつらい。

生焼け肉のこともあるし、パスだね。

「ダニロさん、剣の修行をしたいんだけど付き合ってもらえますか」

ダニロさんは見上げるほどの大男だけど片手剣の扱いは素人の僕から見ても流麗なんだよね。

師事するなら断然この人だよ。

「おう、いいぜ」

やった。

「お前がどれくらい剣を使えるか見てやるぜ」

「実戦経験は無いんでお手柔らかに」

ハードルは下げとかないと、最初の一太刀でズバッは怖い。

僕とダニロさんの予定も決まったのでマギさんはポンと手を合わせ

「じゃあ、ブロンが回復するまでは各人適当に過ごすということで、解散」

と言ってギルドを出ていった。




ダニロさんと僕は町の外に出て手合わせすることにした。


互いに持ってるのは真剣だがこいつはなまくら以下の等身大ペーパーナイフみたいなもので、武器屋の親父さんが鍛冶屋で鋳潰してもらうために店の端に積んでいたのをダニロさんが借りてきたんだ。

じいちゃんの所では日本刀を模した木刀を使ってたから西洋風のロングソードは違和感がある。柄の長さも違うし正眼に構えたときのバランスが変だ。

初めての手合わせだからバランスのいい正眼の構えで様子をみたかったけどかえって不安になるよ

剣を肩で垂直に持ち八相に構え気合いをいれた。

攻撃よりのこの構えでさんざん立木に撃ち込んでたから上段からの一撃はそれなりに自信がある。

ダニロさんは自然体で剣と盾を構え楽しそうに僕を見やった。

「構えも中々だし気合いも十分だな。いつでも仕掛けてこい」

僕はダニロさんが受けにまわってくれたから内心ホッとした。

練習とはいえ始めて会ったときオーガと見間違えた巨体でしかけられたら剣を捨てて逃げ出してたかも。

実際にダニロさんが剣で戦う姿を見ていたからその強さはよくわかっていたしね。

僕は深呼吸で肺を空にし、スッと素早く息を吸い込んだ直後、

「たぁっ」

と声を上げ剣を振り下ろした。

強さを信頼してるからこそ迷いなく全力で真剣を撃ち込んだんだ。

「素人にしては上出来だ」

それは誉めているの?と思うまもなくあっさりと左手の盾で受け流されてしまった。

「くっ、だったら」

次はどう攻めるか、

そこで僕は動けなくなった。

「なに呆けてやがる。魔獣は待ってはくれねぇぞ」

分かってます、分かってるんだけど。

どうしよう

戻して構え直すか返す剣で斬り上げるべきか、剣をフラフラと揺らしながら迷っていたら、ガツンとダニロさんの剣でヘルメットを

どつかれた。

「何してやがる」

すみません。

ニノ太刀いらずと言われる本物の示現流は一撃目を外せば弱いという俗説があるけど実際には第二、第三の太刀が存在するんだそうだ。

それはそうでしょ、蜻蛉の構えからの一撃しか無い剣術なんてあるわけがない。

僕がニノ太刀を使えないのは単に知らなかったからです。

知らないものは練習出来ないし、立木相手に真似事の撃ち込みだけ

してたから初太刀を簡単に防がれて戸惑ってしまった。

かえって何も修行しないでチャンバラごっこみたくガンガン仕掛けた方がよかったのかも。

「かかってこい」

ダニロさんに促されてまた八相に構える。

じいちゃんに習ったのは上段からの面打ちと正眼からの突きと胴打ちの素振りだけだった。

何しろ僕に剣道の経験がなかったからほぼ全て我流になってるだろう。僕なりに手応えのあったのは蜻蛉の構えとは似ても似つかないこの八相からの袈裟斬りだけ、あとは時代劇や漫画の知識からだけじゃ血肉にはならないんだとおもいしったよ。

「お願いします」

次は連続攻撃だ、てやっ。

ドガッ

「先の手を考えすぎて初撃が軽い」

けほっ、バイクにはねられたみたいだ。

「寝っ転がってるな、次だ」

がんばります。



こうして修行の日々がしばらくは続きました。


少しはましになったけど剣の腕と比例して体はボロボロです。



ある日、宿屋で飯を食べていた僕の前にダニロさんが現れてこう言った。

「近くの村に出たイノシシの魔獣を狩るぞ」

実戦みたいです。


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