夏の魔法
お待たせいたしました!
夏祭り編スタートですどうぞ^^
夏祭り当日。
私は鏡の前で深呼吸をした。
「大丈夫、大丈夫……。」
慣れない浴衣姿。
淡い水色の生地に小さな白い花。
髪も少しだけ巻いてもらった。
鏡の中の自分は。
いつもより少しだけ大人っぽく見えた。
「可愛いじゃない。」
母が笑う。
「そうかな。」
「絶対そう。」
そう言われても落ち着かない。
胸の奥がそわそわする。
理由は分からない。
……たぶん。
分かりたくないだけだ。
集合時間が近付き、私は家を出た。
夕暮れの空。
どこからか祭囃子が聞こえてくる。
駅前に着くと。
すでに誰かが待っていた。
「お。」
湊だった。
黒いTシャツにジーンズ。
いつも通りの格好なのに。
なぜか少しだけかっこよく見える。
「早いね。」
「伊吹も。」
そう言って顔を上げた湊が。
ぴたりと動きを止めた。
「……。」
「な、なに?」
急に見られると恥ずかしい。
すると湊は少し目を逸らした。
「似合ってる。」
たった一言。
それだけだった。
それなのに。
顔が熱くなる。
「ありがと……。」
声が小さくなる。
心臓がうるさい。
その時だった。
「お前ら早い。」
陸がやって来た。
そして。
私を見る。
一瞬だけ。
本当に一瞬だけ動きが止まった。
「……。」
「なに。」
「別に。」
絶対何かある。
だけど陸はそれ以上何も言わない。
代わりに少しだけ顔を逸らした。
「陸。」
湊がにやりと笑う。
「なんだよ。」
「顔。」
「うるせぇ。」
二人のやり取りに思わず笑った。
その時。
「騒がしい。」
最後に現れたのは玲央だった。
相変わらず落ち着いている。
「玲央!」
私が手を振る。
玲央は私を見て。
少しだけ目を細めた。
「似合ってる。」
「えっ。」
「その浴衣。」
「ありがと。」
今日はみんな変だ。
いや。
最近ずっと変だ。
そんなことを考えながら歩き出す。
屋台の明かり。
聞こえてくる笑い声。
夏の夜の空気。
そして。
並んで歩く四人。
毎年同じはずなのに。
今年だけは。
少し違う気がした。
気付けば。
私の隣には湊がいた。
前を見ると。
祭りの灯りが輝いている。
まるで魔法みたいに。
夏の夜を照らしていた。




