変わらない朝
はじめまして。
『青春の真ん中で、君を想う』を手に取ってくださり、ありがとうございます。
この物語は、幼なじみたちの友情と恋愛、そして高校生活のかけがえのない時間を描いた青春物語です。
大切な人と過ごす日々は当たり前のようでいて、実はとても特別なものなのかもしれません。
伊吹たちの笑顔や涙、ときめきや葛藤を、少しでも一緒に感じていただけたら嬉しいです。
それでは、彼らの青春をお楽しみください。
【登場人物】
■ 水原 伊吹
本作の主人公。
明るく面倒見が良い高校2年生。
幼なじみたちとの時間を何より大切にしている。
■ 東堂 湊
サッカー部所属。
爽やかで誰からも好かれる人気者。
伊吹とは幼い頃からずっと一緒。
■ 鳴沢 陸
伊吹の隣の家に住む幼なじみ。
ぶっきらぼうだが優しい性格。
伊吹とは兄妹のような関係。
■ 久我 玲央
成績優秀で冷静沈着。
口数は少ないが仲間思い。
幼なじみたちを陰から支えている。
「伊吹ー!遅刻するぞー!」
聞き慣れた声に、私は布団の中で顔をしかめた。
カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しい。
時計を見る。
七時四十二分。
「……え?」
次の瞬間、私は飛び起きた。
「やばいっ!!」
慌てて制服に袖を通し、髪を整えながら階段を駆け下りる。
「お母さん!行ってきます!」
「朝ご飯は!?」
「時間ないー!」
玄関を飛び出すと、そこには呆れた顔の鳴沢陸が立っていた。
「今日から二年生だぞ。」
「知ってる!」
「ならもう少し余裕持て。」
「無理!」
陸は大きくため息をついた。
家が隣同士の私たちは、幼稚園の頃からずっと一緒だ。
今さら取り繕う必要もない。
寝癖だって、寝坊だって全部知られている。
「ほら、行くぞ。」
「うん!」
私たちはいつもの通学路を歩き始めた。
桜の花びらが風に乗って舞っている。
春だ。
新しいクラス。
新しい一年。
少しだけわくわくする。
「あ、おはよー!」
前から聞こえた声に顔を上げる。
そこにいたのは東堂湊だった。
肩にサッカーバッグをかけて、朝日に照らされながら笑っている。
「おはよ、伊吹。」
「おはよ!」
「また寝坊?」
「なんでみんなそれ聞くの!」
湊は声を上げて笑った。
その笑顔につられて、私も笑う。
昔から変わらない。
湊はいつだってそうだった。
私が泣いている時も。
失敗して落ち込んでいる時も。
いつも隣で笑ってくれた。
「今年も同じクラスだといいな。」
私がそう言うと、
「だな。」
湊は少しだけ優しく目を細めた。
その時だった。
「お前ら朝からうるさい。」
後ろから聞こえた低い声。
振り返ると久我玲央がいた。
「玲央!」
「おはよう。」
「おはよう!」
こうして四人が揃う。
幼稚園からずっと変わらないメンバー。
私たちの当たり前。
学校が見えてくる。
昇降口にはたくさんの生徒が集まっていた。
みんなクラス替えの結果を見ている。
「見に行くぞ。」
陸が言った。
「うん!」
私は少しだけ緊張しながら掲示板へ向かう。
どうか。
どうか今年も――。
「あった!」
思わず声が出た。
私の名前の近くには、
東堂湊。
鳴沢陸。
久我玲央。
三人の名前が並んでいた。
「また一緒じゃん!」
「すご。」
陸が笑う。
「腐れ縁だな。」
玲央も珍しく口元を緩めた。
そして。
「よかった。」
湊が小さくそう言って笑う。
胸が少しだけ高鳴った。
だけど。
それが何なのかは分からない。
春だからだろう。
きっとそう。
私はそう思うことにした。
この時はまだ知らなかった。
変わらないと思っていた私たちの日常が。
少しずつ形を変えていくことを。




