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変わらない朝

はじめまして。


『青春の真ん中で、君を想う』を手に取ってくださり、ありがとうございます。


この物語は、幼なじみたちの友情と恋愛、そして高校生活のかけがえのない時間を描いた青春物語です。


大切な人と過ごす日々は当たり前のようでいて、実はとても特別なものなのかもしれません。


伊吹たちの笑顔や涙、ときめきや葛藤を、少しでも一緒に感じていただけたら嬉しいです。


それでは、彼らの青春をお楽しみください。


【登場人物】


水原みずはら 伊吹いぶき

本作の主人公。

明るく面倒見が良い高校2年生。

幼なじみたちとの時間を何より大切にしている。


東堂とうどう みなと

サッカー部所属。

爽やかで誰からも好かれる人気者。

伊吹とは幼い頃からずっと一緒。


鳴沢なるさわ りく

伊吹の隣の家に住む幼なじみ。

ぶっきらぼうだが優しい性格。

伊吹とは兄妹のような関係。


久我くが 玲央れお

成績優秀で冷静沈着。

口数は少ないが仲間思い。

幼なじみたちを陰から支えている。



「伊吹ー!遅刻するぞー!」


聞き慣れた声に、私は布団の中で顔をしかめた。


カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しい。


時計を見る。


七時四十二分。


「……え?」


次の瞬間、私は飛び起きた。


「やばいっ!!」


慌てて制服に袖を通し、髪を整えながら階段を駆け下りる。


「お母さん!行ってきます!」


「朝ご飯は!?」


「時間ないー!」


玄関を飛び出すと、そこには呆れた顔の鳴沢陸が立っていた。


「今日から二年生だぞ。」


「知ってる!」


「ならもう少し余裕持て。」


「無理!」


陸は大きくため息をついた。


家が隣同士の私たちは、幼稚園の頃からずっと一緒だ。


今さら取り繕う必要もない。


寝癖だって、寝坊だって全部知られている。


「ほら、行くぞ。」


「うん!」


私たちはいつもの通学路を歩き始めた。


桜の花びらが風に乗って舞っている。


春だ。


新しいクラス。


新しい一年。


少しだけわくわくする。


「あ、おはよー!」


前から聞こえた声に顔を上げる。


そこにいたのは東堂湊だった。


肩にサッカーバッグをかけて、朝日に照らされながら笑っている。


「おはよ、伊吹。」


「おはよ!」


「また寝坊?」


「なんでみんなそれ聞くの!」


湊は声を上げて笑った。


その笑顔につられて、私も笑う。


昔から変わらない。


湊はいつだってそうだった。


私が泣いている時も。


失敗して落ち込んでいる時も。


いつも隣で笑ってくれた。


「今年も同じクラスだといいな。」


私がそう言うと、


「だな。」


湊は少しだけ優しく目を細めた。


その時だった。


「お前ら朝からうるさい。」


後ろから聞こえた低い声。


振り返ると久我玲央がいた。


「玲央!」


「おはよう。」


「おはよう!」


こうして四人が揃う。


幼稚園からずっと変わらないメンバー。


私たちの当たり前。


学校が見えてくる。


昇降口にはたくさんの生徒が集まっていた。


みんなクラス替えの結果を見ている。


「見に行くぞ。」


陸が言った。


「うん!」


私は少しだけ緊張しながら掲示板へ向かう。


どうか。


どうか今年も――。


「あった!」


思わず声が出た。


私の名前の近くには、


東堂湊。


鳴沢陸。


久我玲央。


三人の名前が並んでいた。


「また一緒じゃん!」


「すご。」


陸が笑う。


「腐れ縁だな。」


玲央も珍しく口元を緩めた。


そして。


「よかった。」


湊が小さくそう言って笑う。


胸が少しだけ高鳴った。


だけど。


それが何なのかは分からない。


春だからだろう。


きっとそう。


私はそう思うことにした。


この時はまだ知らなかった。


変わらないと思っていた私たちの日常が。


少しずつ形を変えていくことを。

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