お洒落よりも本が好き
「アン、お茶をどうぞ」
「ありがとう、エリー。もう喉がからから。近頃雨が降らないから空気が乾燥してるわよね」
「そうなのよ。うちの牛もなんだか体調が悪そうなのよね。早く暖かくなって欲しいわ」
「でももうすぐ雨が降ると思うわ、だって山の向こうが暗いんだもの」
「本当?私も後で見てみないと」
「アン、このケーキ食べてみてくれる?初めて作ったから感想が聞きたいの」
「ブレッタのお菓子なら美味しいわよ。いただきまーす。ん、ほら美味しい。え?っていうか美味しい何これ。どう作るの?美味しい、もう一切れ貰っていい?」
「どれだけ美味しいって言うのよ」
「もう、アンってばいつも大袈裟なんだから」
「大袈裟じゃないわよ。ねえこれ売ってみたら?焼き菓子だから日持ちもするし」
「それいいかも!考えてみなさいよ、ブレッタ」
「皆アンに乗せられないでよ、アンはいつも褒めすぎなの。失敗したときだって褒めるのよ?」
「褒めすぎじゃないわ、本心だもの。大体失敗ってブレッタにとってはでしょ、私の口には十分美味しいの。でもいいなあ、ブレッタは料理が上手くて。どうしたらこんな風に作れるのかしら」
「それを言うならアンでしょ?」
「んぐ?」
白い粉砂糖がまぶされた素朴な菓子を摘んでいた私は、意味が分からず首を傾げた。
「……口にお砂糖がついてるわよ」
「えっ、どこ?」
「ここ、ほら拭いてあげるから。アンってばせっかくこんなに綺麗なのに本当になんっにも活かしてしないわよねって言いたいの」
「ああ〜、それは言えてる。今日だってこれ髪ボサボサじゃない?」
「さっき整えたわよ!……手で」
「せっかくの綺麗な亜麻色の髪が酷い扱いを受けてる…」
「ごめん、ごめんなさいってば」
「もっと着飾ったりしないの?アンは村で一番可愛いのに一番持っている服も少ないし、お化粧だってほとんどしないわよね」
「そもそもここから出ないものねえ」
「待ってよ、私だって町にくらい行くわよ、本が欲しいときとか。ねえブレッタ、この前一緒に行ったわよね」
「この前っていう程最近じゃないわよ…もう2ヶ月くらい前になるんじゃない?」
「……そんなに前だった?」
「時間の感覚どうなってるのよ、アン」
「し、仕方ないじゃない、毎日忙しくてそんなの覚えてられないもの」
「それで?町に行って買ったのは本だけなの?服屋は?アクセサリー屋は?お化粧品店には?行かなかったの?」
「い、行ったわ…勿論…」
「私の付き添いでね」
「ブレッタ、しーっ」
「しかも途中で別行動になったしね」
「……アンはどこに行ったの?」
「…市場にお野菜を見に…」
「野菜なんて毎日見てるじゃない!」
「まったくこの子は〜…」
「あんたたちお節介はおやめなさいな。アンは他の町にもその辺の殿方にも興味がないのよ。ハルがいるせいでね」
私たちの中で一番年長で、頼れるお姉さんでもあるエリーが皆を止める。
だけど騒ぎを収める為に言ったのだろうその言葉に、私は逆に顔を赤くしてしまった。決して間違っているわけではないのだけれど、だからこそ恥ずかしいというものだ。
そしてエリーの発言に異を唱えず皆揃って納得してしまうので、私は更に照れてしまった。




