ステージ
「……疲れた」
「結構走りましたね〜そこまでして勉強するのが嫌だったんですか〜?」
「……別に」
「……そうですかー」
ミケ達が追いかけるレミは武器屋の主人が言うように東の森にある遺跡にいた。
ハクムの村からだとそれなりに距離があるが獣人の身体能力が有れば大した疲れを感じずに走り切ることができる。
「適当に隠れられそうな場所に案内したつもりでしたけどこれ目的地とはまた別の遺跡っぽいですね〜微妙に座標がズレてるみたいです〜」
「……そう」
魔剣の案内ミスなどどうでもいい様子のレミは遺跡の奥に向かって足を進める。
遺跡の中は暗いが所々に青色の仄かに光る石があるのと獣人の特徴の一つである暗視のおかげで光源を持っていなくてもある程度は進めるようだ。
(やっぱり失敗でしたかね〜……極力影響は無いように薄めはしましたけど使うべきじゃなかったかもしれませんね……というかあの管理AIは何考えてるんですかねー! レミさんに手を出したら容赦しないって言ったと思うんですけどー! 次あったらぶっ飛ばしてやりましょうかねー!」
「……どうしたの?」
「あれ? も、もしかして途中から声に……」
「…………」
「なんでもないですよ〜それよりレミさん気をつけてくださいねー! ここ私の知ってる遺跡じゃないのでトラップとかあるかもしれませんし怪我するかもしれませんよ〜!」
「……わかった」
石橋を叩いて渡るように魔剣で少し先の地面を叩きながら少しずつ奥へと進んでいく。
「レミさんその確認方法はちょっと痛いんですけど! そのうち私のナイスバディが欠けちゃいますよ!」
「……大丈夫」
「何がですか!? 全く大丈夫じゃないんですけど! レミさん!レミさーん!」
魔剣の悲痛な叫びと剣で地面を叩く音だけが虚しく響いていく。
しばらく遺跡の中を進んでいくと最深部と思われる広い空間にたどり着いた。
床にはタイルが敷き詰められ壁や天井も先程の遺跡とは雰囲気が全く異なる空間は何故か一切の光源がなくレミの暗視でも視界を確保することが出来ない。
「なんですかこの空間……世界観ここだけ違いませんかねー? なーんかこの遺跡にとって付けたようなツギハギ感がありますし視界どころか私のセンサーにまで干渉してくる何かが仕掛けられてるみたいですし明らかに入っちゃいけない空間っぽいんですけど! レミさん今すぐ引き返しましょう!」
魔剣の言うように撤退しようとするレミだが足がその場に固定されたように動かない。
それどころか先程までは感じていなかったプレッシャーが全身にのしかかってくる。
「レミさん危ない!」
僅かに発生した光を感知した魔剣の声に反応して体を捻り暗闇の中から飛んできた魔法を避けようとするも体が言う事を聞かないせいで反応が遅れ肌を掠る。
「ーーー!?」
ほんの僅かに掠っただけにも関わらず体に激痛が走り声にならない声が漏れる。
明らかな異常に魔剣も焦りを隠すことができない。
「レミさん!! くっ……どこから攻撃が来ているか全く感知できません! 相手の魔法発動からでは避けるのが間に合いませんしせめて視界だけでも確保しないと! こうなったらレミさんのHPを無理矢理MPに変換して反転を使います! ちょっとだけ我慢してください!」
魔剣が言い終えると同時に急に体から力が抜けたような感覚に襲われフラッと倒れそうになった体を魔剣を支えに堪える。
ステータスを確認するとHPが四分の一ほどまで減り変わりにNPが回復していた。
「レミさん!」
「……反転!」
レミの声と共に暗闇が反転した。
「これは……」
時は少し遡りレミが遺跡に到着した頃。
施設を飛び出した壊田は初めて丸井四季と出会い今は廃墟と化した病院に来ていた。
あの一件以降も度々病院の様子を見に四季が訪れていた事は施設長から聞かされていたし何よりあの病院はSDO計画と深く関わりがある事からも四季が訪れる可能性は高い……そう考え病院を訪れた壊田だったが。
「どうなってやがる……」
最後に来てから半年以上は経っているもののあまりの変わりように思わず声が漏れる。
廃墟と化していた病院は見る影もなく壊田の目の前には大きな工場がそしてその工場にはSDOを運営する会社グリードのマークが書かれている。
「いやーよく来てくれたね〜! 君ならきっとくると思っていたよ!」
敷地内を覗き込む壊田の後ろから聞こえた声に驚き振り返るとそこには
「ようこそ! 私の夢! その始まりの地へ! 君を歓迎しよう魔王軍幹部ブレイク君」
銃を構えた2体のロボットとグリードの社長夢野薫が立っていた。
ロボットの方は完全に壊田をロックオンしている一方夢野薫は手元の携帯型端末のモニターをジッと見つめている。
「あんたの言う歓迎ってのは随分物騒なんだな?」
「ハハハ! 君は自分の立場がわかっていないようだね? 私から見れば私の敷地内を覗き込む不審者だよ君? 当然の対処だと思わないかね?」
「チッ……」
「なに大人しく着いてきてくれればいいさ! 恐らく君が探しているものもここにあるだろうしね?」
「…………」
無言で睨みつける壊田だが夢野はそんな事など気にもせず依然モニターに目線をやっている。
「ゲートを開けてくれ! せっかくのショーだ! どうせなら人数は多い方がいい」
ゆっくりとゲートが開き2体のロボットに背中を押されながら壊田は工場へと踏み込んでいった。
「さてと彼はどんな反応を示してくれるのかな?」
手元のモニターを見ながらニヤリとした笑みを浮かべ男もまた工場へと足を踏み入れるのだった。




