表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/65

1人ボッチの女王

 海の家に勢いよく入り込んでくる謎の集団。

 神輿のようなものを担ぎながら猛スピードで近づいてくる水着姿の男性の集団なんてトラウマものだろう。

 神輿の上には大きな日傘と玉座のようなものが置いてあり1人の少女がくつろいでいる。

 神輿が海の家の前に下され少女が軽やかな足取りで海の家に入ってきた。


「ベル〜今日もアイテム交換に来てあげたわよ!」


 聞き覚えしかない声の少女は大量のNPCを連れながらベルの元に一直線で向かってくる。


「レミさんあれってもしかして〜」


「知らない」


 魔剣の声を遮るとレミはカウンターの下に身を隠す。

 今まで散々こう言う意味不明な連中に振り回されてきたレミは今回こそ回避しようと隠れたようだ。


「れ、レミさん?」


「シー! 静かにしてくださいよーポンコツ悪魔!レミさんがいるのがバレちゃうじゃないですかー!」


「す、すみません」


 レミよりも魔剣の方がうるさいと思いつつ息を潜める。


「い、いらっしゃいませ〜!」


「今日もきたわよ! それにしてもまだ挨拶なれないのね……あんまり嫌だったら私がポイントで雇ったNPCでも配置してた方がいいんじゃない?」


 かなり近くで声が聞こえる。

 さっきは少し距離があったから聞き間違いの可能性もあったがここまで近ければ嫌でもわかる。


「だ、大丈夫ですよクロネさん! な、何事も経験です!」


 やっぱりかーとカウンターの下で頭を抱えるレミ。


「やっぱりあのボッチでしたかー……まぁ夏になったら人って変わりますからあれぐらいは普通なのかもしれませんねーしかしボッチすぎてとうとうポイントで友人を買うようになりましたか〜落ちぶれたものですねー」


 今喋ったらまずいのに急に喋りだす魔剣。


「そもそもあのクソボッチのくせにあんな神輿になって登場だなんて調子乗りすぎですよー! なんだか腹立ちますねーレミさん!」


「……バカ」


 向こうの声がこれだけ聞こえてるのだからこんなに騒いだらどうやってもバレるに決まってる。


「ねえベル? 今明らかに聞き覚えのある声が聞こえたんだけど……」


「き、気のせいじゃないですかね?」


「気のせいじゃないわね! レミ! いるなら出てきなさいよ!」


 もうこうなってしまってはしょうがないと魔剣を睨みつつカウンターの下から出てくるレミ。


「……久しぶり」


 あからさまにめんどくさそうな顔をしつつも久しぶりの再会をどこか喜んでいるように見えるレミ。

 そんなレミを見て安心したような表情を浮かべたクロネ。


「ミケから聞いてたけど熱が出て寝込んでたんでしょ? まぁその様子なら大丈夫そうね」


 サングラスを少しずらして笑みを浮かべるクロネ。

 少ししか空いていないのになぜかとても懐かしい気持ちになるレミだったがすぐに現実に引き戻される。


「……その格好」


 まるで夏を満喫するセレブのような格好にプラスしてNPCをSPのように連れて歩くクロネを同情の目で見つめるレミ。

 どうやらクロネがボッチすぎて狂ってしまったと結論づけたようだ。

 クロネはそんなレミの目に気づいたのか恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。


「こ、これはちょっと羽目を外しただけよ! NPCだって1人だとできないクエストがあるから仕方なく雇ってるだけだし……それに夏なんだから少しぐらい羽目を外したっていいじゃない!」


「さっきまで余裕そうにゆっくり話してたくせに急に早口になりましたね〜それにしてもこれだけのものを揃えるにはかなりのポイントが必要なはずですけどどこで稼いだんですかー?」


 隠れてる時に魔剣が見つけたカタログにはNPCを雇うのに必要なポイントは最低でも1000は必要なようだった。

 イベントアイテムや水鉄砲などは高くても650ぐらいなので交換レートがかなり高いのがわかる。

 そんなNPCを複数連れて歩けるだけ稼ぐなんてそう簡単にできることではないだろう。


「く、クロネさんはイベントが始まった時からほぼずっとログインして頑張ってたんです! そのおかげで今イベントランキング1位なんですよ!」


 まるで自分のことのように誇らしげに語るベルと恥ずかしそうにするクロネ。


「イベント開始からずっとって要するに暇人ってことですかー? まぁクロネさんはリアルでも友達いなさそうですし夏休みでもやることなくて暇そうですもんねー」


「そ、そんなことないわよ! 今回はたまたま暇だっただけよ! 私だって友達の1人や2人ぐらい……」


 どんどん声が小さくなっていくクロネ、かなりかわいそうになってくる。

 とりあえず余計なことを言った魔剣は再度机の下に放り投げクロネの頭を撫でるレミ。


「と、とにかくあんたが無事でよかったわ……まだ病み上がりだろうからあんまり無理しないようにね! それじゃあ私はポイント稼ぎに行ってくるから何かわからないことがあったらいつでも呼びなさいよね! このランキング1位の私が丁寧に教えてあげるわ!」


 少ししていつもの調子に戻ったクロネはそう言い残すとNPCを連れてどこかに行ってしまった。

 特に面倒なことに巻き込まれなかったのに若干戸惑うレミだったがすぐに元に戻る。

 ため息をつきつつ魔剣を拾い上げたレミにベルが声をかけた。


「く、クロネさんどこかに行っちゃいましたね……この後どうするんですか?」


 完全に一緒に行く流れだと思っていたのかベルも戸惑った様子で聞いてくる。

 正直何をするかまだ何も決めていないレミは少し考え込む。


「多分焦って頭真っ白になっちゃったんじゃないですかー? ボッチにはよくあることですしーそんなことより早く海行きましょうよー!」


「そ、そうですよ! せっかくの夏イベントですし海でのんびり遊ぶのがいいと思います!」


 魔剣やベルの言う通りどうせやることもないし海に行くことにしたレミはのんびりとした足取りで海へと向かうのだった。


 一方その頃。


「あー! レミを誘えばわざわざこんなNPCを雇わなくてもすんだんじゃ……でも今から戻って誘ったら絶対あの魔剣にからかわれるしどうしよう……」


 レミを誘い忘れたことを後悔していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ