白の回答
「……まさかあなたがくるとは思いませんでしたよー来るなら予め連絡ぐらいして欲しいものですねー」
路地裏の小さなバー。
まだ時間が早いせいもあり店内にはバーのマスターの他に男が2人いるだけだった。
薄暗い店内の中、愚痴をこぼす1人の白いスーツの男はわざとらしく大袈裟なアクションをする。
「あははーその件は本当にすまない! だが私も予想外だったものでね」
特に悪びれる様子もないもう1人の男は赤ワインを楽しむように口に運ぶ。
男の着ているスーツには半分ずつ赤と黒で塗られ中央にGの文字が書かれたバッチが光り輝いている。
「嘘つきは泥棒の始まりですよー? 最も今回はあなたが盗まれた側ですけどねー」
白いスーツの男がからかうように言うがもう1人の男は特に気にする様子もなく笑みを浮かべている。
まるで何もかも上手く行っている人のように余裕のある笑みだ。
「少しだけ訂正させて頂こう……盗まれたのではなく盗ませたのさ!」
再び口にワインを運びつつ男は笑った。
その様子を見た白いスーツの男は呆れたように苦笑いを浮かべながら白ワインを口に運ぶ。
「もしそれが本当だったら大問題ですけどねー私が誰かに言ったらおしまいですよー? 社長自らプログラムに穴を開けたと知られたら信用ガタ落ちですからねー」
再び大袈裟なアクションをとる男の前に小さなディスクが差し出される。
「……これは?」
「次のシナリオとでも言えばいいかな? その中に君たちにやって欲しいこととそれに必要なものを入れておいた!」
ディスクを差し出した男は子供のように無邪気な笑みを浮かべている。
「なるほど〜まだ私たちをこき使うつもりですかー……まぁ構いませんけど報酬は上乗せさせてもらいますよー」
「あはは! わかっていているとも! 報酬の方は君たちの言い値を払おう!」
「それはありがたいことですねーでは契約は成立ということでいいでしょうー」
男は契約成立の証として握手を交わすと一つため息をついた。
「さてそろそろいいでしょうー?」
白いスーツの男は先程のまでの笑みを一気に消し去ると赤ワインを口に運ぶ男を睨む。
「何がかな?」
「組織としての依頼は受けましたがこれならわざわざ私を呼ぶ必要はなかったはずですよねー?」
「……」
自身の考えが読まれていたのに不機嫌になったのか一瞬笑みが曇り口に運びかけたグラスをカウンターに置く。
「やはり君は察しがいいみたいだね!……通りで私が君を脅威として認識してしまうわけだ……では本題に入ろう!」
先程までとは打って変わり真剣な雰囲気になる2人。
しかし互いに笑みを崩すことはないようだ。
「この前の少女が使っていたあの武器……君は直接見てないだろうが音は聞こえただろう?……率直に聞こう! 君はアレが何かわかるかい?」
どこか試すように白いスーツの男をじっと見つめる。
少しの沈黙の後白いスーツの男はゆっくりと口を開いた。
「恐らくは憎しみや悲しみに由来する欲望ってところですかねー? 残念ながら私は直接見れていませんからあなたの記録映像を見ての判断になりますけどねー」
白いスーツの男の回答を聞き満足したのか男は愉快そうに笑うと一言だけ言ってその場をさった。
「少しピースが足りないがほとんど正解だろう! 概ね私の回答と同じだからね! まぁ真実はあの少女にしかわからないが……そう遠くないうちに明らかになるだろう!」
残された男は手元に残ったディスクをしまいバーを後にする。
「……全くあの人はどこまで見えてるんですかねー……まぁ考えても仕方ありませんねー私は私の仕事をこなすとしましょうかー」
足りないピースの事を考えつつも男は目の前の仕事をこなす為に次の場所に向かった。




