進む以外に道はなく
「……なんのようだ」
「随分冷たい反応ですね〜というか用件はわかってると思うんですけど〜?」
真っ白な部屋の中で白い少女に話しかける黒い霧のような少女。
白い少女はひたすら画面を見つめ何かを打ち込んでいるようだ。
「……あのバグについてなら私の管轄外だ」
「そんなことは知ってますよ〜だ! 私だってそれぐらい把握してますよー! あなたが主犯じゃないことぐらいわかってますよー! でも誰があのバグを引き起こしたかぐらいは知っていますよねー?」
鋭い目で白い少女を睨みつける黒い少女。
口調とは裏腹にかなり怒っているようだ。
「……それをお前に教える必要はない」
「は? おかしいですよねー? 私のレミさんにあそこまで干渉したんですから知る義務ぐらいはあると思いますけど〜?」
「教えたところで何もできないさ……」
諦めたような声でため息に混じりに呟くと白い少女は何かを打ち込むのをやめ黒い少女に向き直る。
「今回の行動を起こしたのは私達より後にできたAIだ……具体的に言うとこのゲームが始まってから仕組まれたAIというべきか」
「そんなことあるんですかー? また適当な嘘でもついてるんですかー?」
「……私は嘘などついたことはない」
「……それで仕組まれたAIってなんなんですかー?」
疑惑の目で白い少女を睨む黒い少女。
白い少女は少し迷った後口を開いた。
「……詳しいことは私も知らされていない……特徴としては強い感情を核に既存のAIを侵食し増え続けるウィルスのようなもの……便宜上ディザスターと呼称しているこちらからは干渉どころか観測すら困難なコンピュータウィルスだ」
「観測すらできないなんてあり得るんですか〜? というか観測できないならなんで知ってるんですかー?」
「……お前が覚えているかはわからないが一度オーラを出したスケルトンに出会ったことがあったはずだ……あれがディザスター……正確にはディザスターに侵食された初めての例だ」
「なるほど〜侵食されたものなら間接的に観測できるということですね〜? ……じゃああのとき出したイベントNPCは……」
「……当初統括AIは敵の正体を掴むより排除することを優先した……その結果としてあのNPCを呼び出し侵食されたモンスターのみを駆除した……その後の解析によりあのAIには未知のAIからの干渉があったことが発覚した」
「それがディザスター……じゃあ今回のあのバグった魔物も」
「……対抗手段として統括AIからの指示で強引に持ってきたものだ……あまり意味はなさなかったがな……私から言えることは以上だ……」
今まで知らなかった情報の多さに軽く混乱する黒い少女。
そんな黒い少女のことなどどうでもいいと言うように白い少女は作業を進める。
「でもなんでレミさんが侵食対象に……プレイヤーに対する防御は完璧なはずですよね……」
「……原因は不明だ……本来コンピュータウィルスなどによってプレイヤーの精神を侵食する行動は完璧に防御されている……私たちでも手が出せないほどに強固なものがな……ただお前の持ち主は例外だ……お前が役割を放棄し本体から切り離されたあの時綻びが生じた可能性は否定できない……」
「じゃあ私のせいでレミさんは……」
「……可能性の話だ……現在統括AIはディザスターの破壊と本来の目的を同時に進めている……」
白い少女は淡々と話を進めるがその声は黒い少女には届いていないようだ。
しかし白い少女は特に気にせず話を進める。
「……ディザスターに対して私たちでは有効な対抗策を作ることができない……既に構築AIグラトニーの4分の一が侵食された……いずれこちらも侵食されることとなるだろう……」
「…………」
「おそらくお前はこちらのシステムから外れているから侵食される可能性は少ないだろう……もしお前が持ち主を守りたいと思うなら……最後まで彼女を導くことだ……」
「でもレミさんは……」
「……問題ない……現在は精神に対する強いショックとストレスによって寝込んでいるが……お前の本体が危惧するほどの欲望の持ち主ならば……すぐにまた戻ってくるだろう……時間だこれ以降お前がここにアクセスすることはできない……後は頼む」
黒い霧の少女をかき消すような光が部屋から放たれると黒い少女はいつもの剣の姿に戻っていた。
「レミさん……私があなたを最後まで絶対に守り通して見せます……」
誰もいない部屋で魔剣は呟く。
まるで自分に言い聞かせるように何回も何回も繰り返して。
戦争は終わりを告げ世界は既に動き始めていた。
ならば次に動くべきは
「ぼっち! ベル! 早くするにゃー!」
「ま、待ってください!」
「今行くわよ!……」
あの戦争で失ったもの、そしてこれから得るものの為に少女達は前へ進む。




