Fは手段を選ばない
「レミ達にこっちの場所がバレたみたいね……」
通信魔法により偵察犯からレミ達がこっちに向かってきていると報告を受けたクロネ。
崖上の森をトーカの操る魔物に乗りながら逃げつつ偵察班の報告をもとに敵の位置を割り出し弓を撃っていたクロネ達は接近戦になればかなり不利な状況になってしまうのでなんとか距離を取りたい。
しかし2人が乗っている魔物の体力的にこれ以上スピードを上げることはできない。
「ど、どうすればいいんでしょう!お、おいつかれたらま、負けちゃいます……」
不安そうな顔をしながら魔物にしがみつくベル。
レミ1人ならまだ何とかなるかもしれないがミケは後からこのゲームを始めたのにも関わらず既にベルと同じレベルまで上げ終わるほどやり込んでいる。
そもそもミケと一緒にクエストに行った回数も少ないのでまだどのような技を使うか把握しきれていないのだ。
その点はミケ側も同じことだが獣人のミケの危機感知能力はかなり高いので初見同士の戦いなら負ける可能性が高い。
「接近戦になったら私の弓は使えないしベルのハンマーも普通に使うんじゃ当てられそうにないし……あ!ベル!」
「な、何ですか?いきなり大きな声出さないでください……こ、怖いです……」
「あ、ごめん!でも今はそんなことより聞きたいんだけど……」
クロネ達が逃げながら作戦を立てている頃。
「久しぶりに全力で走れるにゃー!楽しいにゃ!」
「あんまり走りすぎてあのボッチ達と戦うときに体力切れとかやめてくださいよねー!レミさんあの猫ほんとに大丈夫なんですかー?」
魔剣が心配するのも無理はない。
レミはなるべく体力を使わないように走りやすそうな場所を選んで走っているがミケはそんなこと関係ないと言うように障害物を破壊、向かってくる魔物を瞬殺して一直線に進んでいく。
2人とも獣人なので体力に補正が入るが無限に体力があるわけではないためあまり無理をすると後が辛くなる。
現実世界ではもう少し計画性を持っていたミケだがゲームの中では違うのか脳筋プレイで突き進んでいく。
少しだけ不安なレミだがミケは色々なゲームをやり込んでいるので多分心配は要らないはずと思いながら走る。
「……大丈夫」
「ほんとですかね〜まぁレミさんの足を引っ張ることがなければ何でもいいですけど〜」
そんな話をしているとクロネ達の声が遠くから聞こえてきた。
獣人の能力がなければ聞き取ることはできない距離だと思うが確実にクロネ達に近づいている。
「もう少しで追いつけそうだにゃ!スピード上げるにゃ!」
一気にスピードを上げて距離を詰めようとするミケ。
「ちょっとちょっと〜!これ以上上げるのはレミさんの体力的にきついんですけどって聞いてないですねあのクソ猫ー!レミさんあんなのほっといてレミさんのペースで私と2人で行きましょう〜!あれ?レミさんまさか〜……」
魔剣の提案をガン無視してミケの速度に合わせるレミ。
ミケを先に行かせるのが心配なレミはなるべくミケから離れたくないようだ。
「レミさん〜速すぎて私気持ち悪くなってきたんですけど〜……というか風圧が凄くて体が痛いんですがー!もう少しスピード落としてくださいよ〜!」
魔剣がレミに懇願するがその願いが叶うことはなかった。
「トーカ!さっさと降りて私と戦いなさい!」
レミ達がクロネ達を追いかけている頃戦場ではFがトーカの元にたどり着いていた。
トーカはFの挑発を無視して空中から魔法攻撃を仕掛けたり魔物を操り襲わせる。
Fはトーカの攻撃を避けながら魔物を倒し距離を詰めていくが上空にいるトーカに対してFでは攻撃を当てる術がない。
「降りるわけない。自分の優位性を捨てる奴はいない。」
「そのキャラ本当腹立つわね!ロボットと会話してる気分になるから嫌いなの!学校ではそんなんじゃないじゃない!」
「リアルのことは厳禁!何度言っても聞かないのはなぜ?」
空中に対する攻撃手段のないFはオンラインゲームでは禁じ手のリアルの話題を出しトーカを挑発する。
「何よ!学校ではいつも教室の隅の方で怯えた小動物みたいになってるくせに!私が話しかけても無視するからゲームならちゃんと会話できるかなって思ったのに何その態度!」
「うるさい!お前に私のことなどわかるはずない!それに今はリアルのことなんて関係ない!ここで殺す!」
Fの狙い通りトーカは直接攻撃を仕掛けるために降りてきた。
トーカのデザイアウェポンである羽が羽ばたく度に魔物が召喚される。
トーカの召喚する魔物は通常の魔物と異なり倒されるとトーカに魔力が集まるためほぼ無限に魔法を使えるトーカ。
その魔力を使い雷の剣を作り出すとFに向かって切りかかる。
「ふふん!バカね!降りてきたならこっちのもの!一瞬で片付けてやるわ!」
雷の剣を避けそのまま反撃を入れる。
既に何回かトーカと戦っているFの剣はレミと戦ったときとは比べ物にならないほどの速さと威力をトーカにくらわせた……ように見えた。




