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嵐の前に

 レミ達が王都に来てから1週間後。

 いよいよ王国vs魔王軍の戦争イベントが始まる。

 イベント開始時刻は22時から0時までだがゲーム内では現実より時間の流れが早いので思ったよりも短いイベントだと思ったら大間違いだ。

 やるからには勝ちたいレミは夕食とお風呂を済ませすぐにログインした。


「レミさん〜待ってましたよー!いよいよ始まりますね〜!魔王軍をちぎっては投げちぎっては投げ大活躍するレミさんの姿が目に浮かびますよ〜!」


 いつもよりもうるさい魔剣だがイベントでテンションが上がっているレミは特に気にする様子もなく城に向かう。

 戦争イベント開始まで後1時間もある。

 イベント開始と同時に王国軍はあらかじめ指定された防衛ラインに強制転移させられる為ある程度離れた場所に行っても特に問題はない。

 このイベントに参加しないプレイヤー達の中には中立区域を襲撃してアイテムを手に入れようとするプレイヤーも他のサーバーでは出ていることをレミはこの前知ったのでハクムの村が襲われないか心配な様子だが今更どうすることもできない。

 襲われないことを祈りつつ時間まで特にやることのないレミは他の王国軍が来てないか探しに行くことにした。


「それにしても敵側についたあのボッチとドジっ子悪魔と戦うことになるとは思いませんでしたね〜あのボッチが使う弓は相手を眠らせる効果がありますし〜あの悪魔が使うハンマーは何が起こるかわからないですから結構面倒ですよね〜」


 正直あの2人と戦うのはあまり乗り気ではないレミだが王国側に着いたからには今回のイベントの指揮官を務めるRの言うことを聞かざるおえない。

 軽くため息を吐きつつレミは城に足を踏み入れた。


「あら早いのね」


 城に入るといきなり1番会いたくなかったFと出会ってしまった。

 気合が入っているのか殺気のようなものを見に纏っているように感じたレミは少し後ずさってしまう。


「ちょっと〜!レミさんを怖がらせないでくださいよ〜!」

「あっ……ごめんなさい……まだイベントが始まるまで時間があるのに気合が入りすぎたわね……少しリラックスしなきゃ」


 Fはぶつぶつと独り言を呟きながら町の方に行ってしまった。

 Fの後ろ姿を見送りレミは城の奥に進む。

 城は結構広いため未だに設備を全て把握しているわけではないレミ。

 とりあえず1番行く機会が多かった会議室に向かって歩いていると廊下で寝てしまっているミケを見つけた。

 正確には完全に寝てるわけではない。

 もしゲームの途中で完全に睡眠状態になると強制的にログアウトさせられるためだ。

 何はともあれここで寝かせておくわけにはいかないのでミケを起こす。


「うにゃ?あーレミかにゃ!なんにゃ!もうイベントの時間かにゃ!」

「まだ後1時間ぐらいありますからそんなに慌てないでくださいよー!」

「ならよかったにゃー!楽しみすぎて2時間前ぐらいからログインしてたんだにゃ!」


 レミや魔剣ノイズ以上にテンションの高いミケを連れて会議室に入る。

 まだあまり人が来てないのか会議室にはほとんど人がいない。


「おやおやお二人とも早いですね!」

「出たにゃ胡散臭い指揮官!」

「出ましたねー!怪しすぎる指揮官のRさん!」

「なんだかひどい言われようですね……」


 少し悲しげな表情を浮かべるRだが完全に演技だと誰でもわかる。

 ここ1週間レミとミケはRから出されたクエストをこなしつつ過ごしていたがそのクエストのどれもがクエストの難易度と報酬があっておらずいいように使われてしまったためRのことをあまり信用していないレミ達。

 そんなレミ達の様子を満足げに眺めるRを見るとこの反応まで計算されたことなのではないかと錯覚してしまう。


「まぁ無理もないですね〜無理矢理参加してもらってるわけですし裏切りに合わないだけマシな方ですねー!私は最終確認をしないといけませんのでお二人は時間まで適当に時間を潰しててくださいね」


 楽しそうに笑いながらRは他の幹部達の元に行ってしまった。

 相変わらず何を考えているかよくわからないRのことは考えても無駄だとこの1週間で充分すぎるほど理解している2人。


「相変わらず彼は楽しそうだね。」

「あー!黒騎士さんだにゃー!このイベント終わったらまたカステラを奢ってほしいにゃー!」

「……こんにちは」


 暇そうに席に座っていた2人に話しかけてきた黒騎士はミケの隣に座る。

 Rのクエストで疲れ果てた2人に度々お菓子を奢ってくれた黒騎士は2人にかなり懐かれていた。

 ミケには完全にお財布扱いされているが心がかなり広いのか気にしない黒騎士。


「今日はよろしく頼むよ。とは言っても私は私の仕事をこなすだけだけどね!」


 鎧で表情は見えないがこの人もイベントを楽しみにしていることが声のトーンで丸わかりだ。


「イベントが始まったらしばらく王都に入れなくなっちゃうからね。城にいても特に何もないだろうし今のうちに王都のスイーツでも楽しんできたらどう?」

「そうするにゃ!レミ早く行くにゃー!」

「……わかった」


 黒騎士に言われすぐさまミケがレミの手を引いて町に向かう。

 やる気満々な王国軍は各々戦争前の最後の休息を取り戦争に備えるのだった。

 イベント開始まで残り1時間。

一方その頃魔王城では。


「……何やってるの魔王様?」

「あいつさては寝てるな……」

「後1時間しかないけど大丈夫よね?」

「だ、大丈夫です!シージュさんはぜ、絶対きます!」


魔王が寝坊していた。


「むにゃむにゃ……もう食べられないのじゃ〜」

 

イベント開始まで残り1時間。

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