始まりは近く
レミ達が王都の観光をしていた頃。
魔王城ではクロネとベルが魔王に会いにきていた。
「すまんな観光中に呼び出すのは嫌だったんじゃが……」
どうやら2人が観光中に何か起きてしまい呼び出すしかなかった銀髪の魔王シージュは申し訳なそうに言う。
「だ、大丈夫だよ!わざわざ泊まる場所も用意してくれたし」
「一応私たちクエストとしてこの戦いに参戦するんだから呼び出されたぐらいで文句なんて言わないわよ」
2人が怒っているのか少しだけ心配していた魔王は安心したのか小さく息を吐く。
「ふぅ〜お主らが怒ってなくてよかったのじゃ……万が一ここで戦力が低下すると勝てるものも勝てないからの!」
魔王は自分達が勝利すると言う絶対の自信を持っているようだ。
その様子に少し呆れたような顔をするクロネ。
「自信があるのはいいけど本当に勝てるのー?いくらあなたが強いからって向こうにも同じくらい強い奴はいるでしょ!」
魔王城に来た際一度魔王と戦ったクロネはあの時の光景が頭をチラつき少し顔が青くなる。
「そこまで傲慢になったつもりはないのじゃが……まぁその辺はとりあえずよかろう!今現在の問題はこれじゃ!」
魔王が杖をかざすと空間が歪み空中に何かのメッセージが出てくる。
「な、なんですかこれ!?怖いです!」
見たことのない文字が空中に突然現れ怖がるベル。
クロネは特に驚く様子もなく文字を見つめているが少し警戒しているようだ。
「うむ実はな……魔王や王様になった者には運営側から特殊なメッセージが届くんじゃ!しかもこれが少し面倒でのわざわざ暗号文にして送ってくるせいで毎回読むのに時間がかかるのじゃ……普通に書けばいいのにめんどくさい……」
一瞬魔王の素が見えたつつ文句を言う魔王シージュ。
今回の文章もよくみると上の方の日付が2日前になっている。
「先に幹部達には伝えたがこの文章によるとちょうど1週間後……まぁ解読に手間取ったので本当はもう少し時間があったはずなのじゃが……戦争イベントが始まるのじゃ!」
いきなり声を大きくしたせいで怖がるベルの頭を撫でるクロネ。
魔王はそれに気付いて慌てた様子でベルのそばによる。
「すまんのじゃ……リア友でありながら怖がらせてしまうとは……一生の不覚じゃな……」
魔王はかなり落ち込んだ様子でベルに抱きつく。
ベルは少し戸惑った様子になりながら嬉しそうに笑っている。
「だ、大丈夫ですよ!わ、私がビビリなのがいけないんです!」
「そんなことはないのじゃ!いきなり大声出した妾が悪いのじゃ!」
「わ、私が悪いんです!」
「いや妾が悪いのじゃ!」
意味のない会話の無限ループを始める2人。
魔王の言うように2人はリア友でかなり仲も良く今回のクエストはベルがクロネを誘ったものだった。
クロネは最近ミケとばかし遊ぶレミへの仕返しとしてベルと一緒にクエストを受けたのだった。
そんなクロネは2人を少し羨ましそうに見ていたがあまりの微笑ましい光景に耐えきれず会話を止めに入る。
「どっちが悪いとかはいいから早く話の続きしてよね!」
「すまんのじゃ……つい夢中になって……」
「ご、ごめんねクロネさんいつもの癖で……」
2人のお母さんにでもなったような気分を感じる自分が恥ずかしすぎて顔を手で隠し悶絶するクロネ。
「だ、大丈夫?す、少し休む?」
「大丈夫だから……それより話の続きは?」
なんとか立て直したクロネは平生を装う。
魔王はそんな様子のクロネにからかうような笑みを向けると話の続きを始めた。
「なんか色々忘れてしまったのじゃがまぁ端的に言うと時間ないからお主らにもそろそろ戦争の準備をしてもらおうと思ったのじゃ!あとでトーカが来ると思うんじゃが作戦を元に予行練習をするからトーカの指示に従いつつ練習に参加して欲しいのじゃ!」
結構念入りに準備をするタイプの真面目な魔王によって予行練習が始まるのだった。
両陣営が戦争イベントに向けて準備をするなか中立区域でもギルド会議が開かれ村の防衛方法などについて議論をしていた。
「いつ戦争が起こるかわかりません!なので早めに罠の設置や壁の修復や武器、防具の準備をしておいてくださいね!」
着実に戦争への準備を進める各陣営……そしてもう一つ。
「そろそろ戦争イベントだな」
開発主任は画面を見ながら次のイベントのことを考える。
「そうっすねー思ったより早いですけど始まっちゃいますね〜楽しみっすー!」
呑気にそんなことを言う社員の1人を無視しつつ主任は考え込んでいる。
「……何も起きないといいんだがな……万が一のことに備えて介入用のアカウントを準備しておけ」
「わかりましたー!」
前回のイベント用の敵を勝手に設置した事から少しだけ警戒する開発主任。
四つの陣営を巻き込んだ戦争イベントはゆっくりとその幕を開ける。
「マクラちゃんにも餌あげておかないと」
「むきゅー!」
ハルはクエストに行ったレミの代わりにスライムの世話をしていた。
前からレミのいないとかにこっそりスライムと遊んでいたせいでハルはだいぶスライムに懐かれていた。
「可愛い……このもちもち感癒される〜」
「ハルさーん!この物資はどこにおけばいいですかー?」
「今行きますから待っててくださーい!」
ひとときの癒しを得つつハルは今日も仕事をこなす。




