管理者と謎
「こ、怖かったです……」
「そうね……何あの人?」
「あれが戦闘狂ってやつですかね? とんでもない火力でしたけどーレミさんのが可愛いのでレミさんのが強いですね!」
レミはうるさい魔剣のことを無視して考え事をしていた。
空から切りかかったあの男は一体なんだったんだろう?
空から切りかかった男は一撃でスケルトンを粉砕すると雄叫びをあげながら次々とスケルトンをなぎ倒していく。
「レミさん! あの人なんですか!? この魔剣ちゃんですらほとんどダメージ与えられなかったのに一撃で倒すとかずるいですよ! しかもあれNPCじゃないですかー! ま、まぁ反転さえ使えれば私だってあんなスケルトン楽勝ですけどね!」
苦戦してた相手を楽々倒されて悔しがる魔剣のことは無視して目の前の戦闘を観察するレミ。
かなりの重量があると思われる大剣を軽々と振り回し次々とスケルトンを倒す男はまるで嵐のように暴れていた。
「こ、ここから離れた方がいいと思うのですが……」
もはやレベルの違う戦闘を見せられて怖がってしまったベルは今にも逃げ出しそうだ。
「で、でもそれじゃあクエストが……」
「そんなこと言ってる場合じゃないですよー! なんかあの人こっちの方見てますし! やばい予感がするんですけどー!」
「そ、それはフラグになっちゃう……」
魔剣がフラグを立てたせいなのかはわからないが男はスケルトンを倒し終わるとこっちに向かってきた。
明らかに敵意むき出しの男は再び雄叫びを上げるとレミ達めがけて走り出してきた。
「は、早く逃げるわよ!」
クロネに手を引かれながら男から逃げる3人。
「これ向こうの方が早いですねーこのままだとすぐに追いつかれますし森に隠れるのがいいと思いますよー! あんなのに捕まったら絶対ろくなことにならないですし!」
魔剣の提案に頷くとレミは森の茂みに隠れる。
クロネとベルもどこかに隠れたのか姿が消えた中男は雄叫びを上げながら過ぎ去っていった。
レミが森から抜け出すと既に森から出ていたのかクロネ達が待っていた。
「レミ! 大丈夫だった?」
「レミさんがあんな奴に負けるわけないでしょー! 返り討ちにしてやりましたよ! まぁこの魔剣ちゃんとレミさんのコンビは最強ですからねー!」
バレバレの嘘をつく魔剣にため息をつきながら首を横に振るレミ。
「ま、まぁ無事でよかったわ……」
そして今に至る。
あの男は魔剣によるとNPCらしいがこんなところにいるのはおかしいと言っていた。
「あれほど強いNPCがこんな序盤の森にいるわけないですよー! あのクエスト絶対おかしいですってー! あのスケルトンだって明らかにおかしいですしーなんなんですかー?」
「こっちが聞きたいくらいだよ……まぁ後でハルさんに聞いてみようか」
「は、早く帰りたい……」
かなり散々な目にあいながらも3人はギルドに着いた。
「お帰りなさーい……あれクエストの方はどうしたんでしょう?」
「あのクエスト明らかに難易度がおかしいですよー! あんなオーラ纏ったスケルトンが出るなんて聞いてないですしおまけにへんな男に追いかけられるし最悪ですよー!」
「えっ?どう言うことですか?」
「えっとね……」
クロネが事情を話すとハルは青ざめた表情になって泣いてしまった。
「す、すみません……また私のせいで……」
「そ、そんなことはないです!」
「そうよ! そもそもこのクエスト出した奴が悪いわ!」
ハルを慰める2人を置いて部屋に戻るレミ。
無表情だが内心はかなり怖かったようだ。
「大丈夫ですかー? 」
めずらしく気を使う魔剣を持ちながら布団に入るレミ。
レミが怖がっているのを感じとったのかマクラがレミの元によってきた。
「ムキュ?」
「クエストで色々あったんですよ……少し静かにしてくださいよー!」
「ムキュ!!」
「え? お前にだけは言われたくないってなんですかー! 私そんなにうるさくないですしスライムごときに言われたくないですよー!」
魔剣とスライムが喧嘩をするのも無視してレミは布団に潜り込み一眠りするレミ。
かなりの恐怖を感じていたはずだがどうやらすぐに立ち直った様子のレミは安らかな眠りにつくのだった。
「……2日目ではやくもバグですかー? あのNPCはもっと後に出るNPCだと思うんですけど?」
魔剣はレミが寝たのを確認すると誰かに話すように呟いた。
「……ただの試験運用だ……特に問題がないようだからしばらくは消しておく……」
誰もいないはずの空間からそんな声が聞こえるが特に驚く様子もなく魔剣ノイズは会話を続ける。
「別にいいですけどあらかじめ通達ぐらいはしてほしいものですねー? レミさんに何かあったら私が許しませんよ!」
「……お前程度のAIに私を倒すことなど出来ないし許してもらう必要もない」
「ほんっと性格悪いですねー! いくら管理側のAIだからって酷くないですかー?」
魔剣が謎の声に対して文句を言うも特に聞く様子もないのか声は消えてしまったようだ。
「まったく……大人しく仕事をしてろってことですかー? ストライキ起こしてやりましょうかあのやろうー!……まぁ今回はレミさんが無事ですし許しますけどね!」
届いているのかどうかもわからないが魔剣は文句を言いつつ休息に入った。
「なんであのイベントNPCが勝手に出現してるんだ?」
「どうも管理側のAIが試験運用を勝手にやったみたいです……幸いあれの出現による被害は軽度なもので済んでますけど少し管理AIの権限を制限したほうがいいのでは?」
運営側でもあのNPCが勝手に出るのは異常事態なのか対応に追われる中主任に提案するプログラマー。
「いや……特にその必要はない。 むしろ計画の進行が遅くなるだけだ。 上に確認も取ったがこのまま様子を見ろとのことだからな……こちらの都合で変えることはできない」
「それなら仕方ないですけど…2日目でこんなことを起こすなんて信じられませんよ…」
やってられないと言うようにため息をつくプログラマー。
「むしろ2日目だからやったのだろうな」
「え? それはどう言うことですか?」
「サービス開始2日目はまだそこまでプレイヤーが多くはない。 初日はかなりの人数が同時ログインしていたが2日目ならそんなこともないしまだプレイヤーもさほど増えてはいないはずだ。 なら今やるのが最も被害を少なくできるのではないか?そんな浅はかな考えでやったのだろうな……私ならもう少し落ち着いた時期にやるがな」
AIの行動についての考察をする主任。
「なるほど……しかし本当に制限しなくて大丈夫ですかね? あの程度のNPCなら問題ないですが……」
「しばらくは大人しくする筈だ。 先程デザイア武器側のAIから干渉されていたようだからな……なんにせよ我々は基本傍観者だゲーム内のトラブルについて関与するのは控えるべきだ。」
「……主任がそう言うなら」
腑に落ちない様子のプログラマーは再び仕事に戻るのだった。
(……なぜこのタイミングなのか考察をしてみはしたが……なぜだろう答えからかなり遠い……そんな印象を受けるのはなぜだ?……やはりもう少しこの計画について調べるべきかもしれない……)
未だ謎の多いこのゲームの行く末を知る者は誰もいない。
シェイプデザイアオンライン……それは願いで作られた世界の物語。
「うわぁぁぁん……またレミちゃんに嫌われちゃう……」
「だ、大丈夫ですよ……わ、私たち無事だったんですし」
「まぁお菓子でも用意しておけば大丈夫だと思うけど」
「そ、そうですね! そうと決まれば今すぐ材料買いに行ってきます! クロネさんたちも手伝ってください!)
「え? 私たち被害者側なんだけど……」
「ま、まぁいいじゃないですか……て、手伝いましょう!」
「わかったわよ……それじゃあ行きましょう!」
レミの満足するお菓子を作るためにハルたちの終わらない戦いが始まろうとしていたのを知る者は誰もいない。




