33 わたしは、聞かれないと答えなくってよ?
有田里緒奈のまま圭理が変装している私に近づきサッと入れ替わる予定だったんだけど……。
Lemon:なんで服が違うのかな???
ケイリ:ワインを頭からかぶった。
どんな状況!?
ケイリ:服は弁償する。
Lemon:理由にもよるけど、別にいいよ。何が濡れたの?
そんなに高いもんじゃないし、思い入れもないし。
~十秒経過~
……指止まってる?
どうかしたのかな。
~二十秒経過~
……私はそこまで察しの悪い人間じゃない。
Lemon:分かったもう聞かない。付いて行くからそのまま歩きだして。
送信した後、すでに合流している伊予と蓮に一言話した後、檸檬は歩き出した。
ケイに付いて行き、ケイは元の服に、着替え終わったケイから私の服をもらい、私も檸檬に戻る。
ケイはケイ、私は私で合流して、少しケイに伝えた後に刑事さん達が沢山いた方に向かう。
外から関係者入り口の方に向かい、タイミングよく出てきた三浦くんに近づく。
「あ、あのさっきの辻村さんと一緒に居た……」
「どうかしましたか?」
辻村さんが慶太さんがどっちに向かったかを聞きに来た時に話してはないがあっている。
「あの、辻村さんっていらっしゃいますか?」
「辻村ですか? 辻村はもう帰りましたが……」
「あ~じゃあ、元特生環の関係者の方を呼んでもらってもいいですか?」
「分かりました。じゃあ……ご案内しますね」
「すみません、ありがとうございます」
特生環とは特別生活環境対策室という警視庁の生活安全局の一つだけど、実はこれ、人外のことの対応もするところ。
妖など人間以外の人やその存在を知る人は一番最初にここに配属される。
そのあとどこに行くかは本人の希望によるらしいが、そこでかかわった件で人外のかかわりの可能性が出てきたら特生環も一緒に捜査するとか。
特生環に一度所属すると特別な理由がない限り抜けることはできない。
表向きは刑事でも、過去に特生環に所属しているなら今も特生環に所属している。
「鉛口さ~ん。狐木さん知らないですか?」
おっと鉛口さん。
近くに楓芽くんは……いない、か。
「狐木さん? 楓芽くん一瞬見てもらってるよ」
「あの部屋にいますか?」
「ええ」
あ、これは楓芽くんに合う運命ですか。
何も反応しない。
檸檬と楓芽くんの関係はクイズの案内係とそれに参加した参加者の一人だ。
楓芽くんと一瞬目が合ったけど、気づかれることもなく狐木刑事にアサを送って私の妖力が残っているかもしれない、と伝えた。
運悪く妖の方だったので蓮ほどまでは行かなくとも、話しづらかった。
別に蓮と話しづらいわけではないけれど、なんとなくテンションを分かってください。
帰りに楓芽くんとも慶太さんとも会わず、後日、慶太さんの両親と会った時にお礼を言われたが、
「社長とご両親によろしくね」と言われ「あ~、社長に距離置かれてるんだな~」と理解した。
この人たちも悪い人じゃないんだけどね。
♢♢♢
「「ただいま~」」
家に帰って、一言も発さずにケイがお風呂直行した。
あんなに素早く動けたんだ。
シュバ、シュバババって感じで、猫みたい。
リビングに行き、ソファで十分ほどゴロゴロする。
回復している原理は本当に分からないけど、一度妖力がほぼなくなったし、体力もかな~りやば~くえぐられている。
目を閉じていながら暇ながらにボーっと頭を回していると、一つ聞かなきゃいけないことを思い出した。
「蜜柑さん、結果どうでした?」
「無事合格よっ!」
夕飯の支度をしてくださっている蜜柑さんがルンルンで答えてくれた。
「わ~すっごくおいしそうなお赤飯! ありがとうございます~」
炊飯器を開け、炊き立てのお赤飯を覗く。
「はじめて炊いたけど、上手く行って良かったわ~!」
「炊飯器っていろいろできるらしいですよ。人参ケーキとか作れるみたいですし」
「うちの炊飯器ならヨーグルトも作れると思う」
お風呂を上がったケイが会話に混ざってくる。
「え~おいしそう! お母さん、今度作ってよ! ……じゃなくて、何が合格?」
「え? 中学校」
伊予に言ってなかったっけ。
昨日受験当日って。
「……? ……え、受験してたの……?」
「あ、うん。伊予たちの学校ね」
「…………え、え、ええっ!? ……え――――ッ!?!?」
そんな驚く?
ケイなんて表情一ミリも変えないよ?
ケイと比べちゃダメなのかもだけど。
「言ってよ~!」
「別に言ってもあんまり意味ないし、聞かれなかったから……」
「伊予と違って檸檬ちゃんはあんまり受験に対して思うことはないみたいなの。だからこんなにサッパリしてるのよ」
え~羨まし~い~! といいつつも渋々納得してくれたようだ。
私も受験のためにいっぱい勉強したわけじゃないけど、その前にたくさん勉強した。
特に羨ましがられることでもない。
えらそうなことを言うけれど、伊予は私ほどすぐ長期記憶をできる特技はない。
けれど、一度しっかりと覚えれば忘れにくい。
それまで時間がかかっても、自分に合った勉強法と毎日コツコツを続ければそんなことも言わないと思う。
その毎日コツコツが晃さんと昴さんの圧と碧の煽りと人々の私に対する期待がなければ私だってできないだろう。
「……いやなこと言うけど、私にとってはこのくらい受かって当たり前、もっと上を目指せと言われるかもしれないレベルなの」
「檸檬……」
「そんな場所だから」
眉毛がはの字になっていることが自分でも分かる。
「本っ当……かなり十分だと思うんだけどね!」
一人で怒る。
この私の怒りが誰に対してかはもう、解らない。
「さぁ~て、合格ほ~こくし~よお」
スマホを開いて晃さんに電話する。
「もしもし、檸檬です」
『はい、晃です』
「嘘」
『……その通りです』
私には二人の微妙過ぎる違いも見分けられる。
晃さんと昴さんが入れ替わったってまるわかりだも~ん。
「合格したよ。騒がなくていい、分かった?」
『了解です』
「……」
もう遅かったかな……。
裏がもう騒がしいもん。
「……じゃあね」
『はい。失礼します』
そう言って電話を切る。
用意が早いんだから。
「端的ね~」
「二人なら伝わるし。『合格したよ。騒がなくていい、分かった?』だって、『あ~そんなことより、合格しましたよ。私不在で無駄に騒がなくていいから。自分たちが住宅街にいると思って。近所迷惑にならない声量で。お金をかけずに。分かった?』って言って言う意味になってるし」
「熟年夫婦ね~羨ましい限りだわ」
「ある意味そうかもですね」
二人とも生まれた時からずっと私たちの世話係だし。
「檸檬は植物に詳しいか?」
「……急だなぁ。え~、ケイが聞いてくるってことは知識だけじゃなくて経験も含めてじゃない?」
「……」
「そうだな~学校の、生活とか理科ぐらいでしかないかも」
生活っていうのは小一、小二でやる理科社会が合体した科目のこと。
生活科ともいう。
「知識はある程度あるんだな?」
「ケイ並みじゃないと思った方がいいよ?」
「いや、いい。僕が今から鬼の矢柄と紫苑を育てると言って、出来ると思うか?」
(――なるほど……)
「急すぎだって! 今からか~シオンは春、秋だったっけ。鬼の矢柄はわかんないけど、シオンは今からなら無理なんじゃないかな。少し待てば出来ると思うけど」
「……そうだよな」
「えっ、お兄ちゃん植物育てるの!?」
伊予さん、めちゃめちゃ驚いていますが……?
「言ってみただけだ。育てる気はない」
(……この二つを挙げたのはたまたまではない、と。元から育てる気なんかさらさらないんだろうな~)
「……いいじゃん、やってみたら?」
乗り出して言ってみたけれど、遠慮しとく、の一言で終わってしまった。
「はぁ……踏み込みたくなった時のために一言。必要ないと判断したら、わたしは、聞かれないと答えなくってよ?」
「……」
(それでも今、聞く気はない、と。別に今じゃなくても問題はないか)
「そう。好きにしてね」
「二人とも、ご飯だから手伝って」
「は~い」
翆「三章が終わりました!」
小「うっげ、意味深な終わり方」
翆「翆ちゃん、がさつだからこれをどうするか決めてないんだよねぇ、使い道なくなっちゃった、っていうかもともとなんでこの設定を追加したかを忘れたというか」
小「じゃあなんで乗せたんだよ、消せばよかったのに」
翆「まあまあ、いいじゃない! 翆ちゃんは天才だから、全部全部回収するんです~!」
小「一人称、翆ちゃん(笑)」
翆「今更、っていうか、今出すの!?」
ここまでお付き合いいただきありがとうございます!
引き続き四章をよろしくお願いします!




