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19 初級冒険者中


 魔の森は魔素の密度が濃い・・・


 宮廷学者の研究では、魔の森にあるダンジョンは神が創った施設ではないかと言われている。

 ダンジョンからは滾々と魔素が溢れ出て、そのせいで魔の森は魔素の密度が濃い。


 魔素とは魔力の元だ。人間は大気中にある魔素を取り込み、体内にある魔力回路によって魔力へと変換している。

 魔力とは言わずもがな魔法を使うための基ではあるのだが、人間の生命にも欠かせないものとなっている。


 血液のように体中を巡るそれは、日本で似た例えで言うなら〈気)とでも言えばいいのだろうか。

 いや、上手く例えられて無いな。

 ともかく、気持ちが弱れば病気に成り易くなるわけだし、目に見えない体に大切なものとでも思ってもらうのが良いかもしれない。


 閑話休題


 つまり、人間が生きていくために必要な魔力を供給するためにダンジョンは存在し、それを神が作ったと宮廷学者達は言ってるのだ。


 では、魔力回路を持たない人間以外の生き物はどうか。何故なのかは分かってないが、大量の魔素を取り込んでしまった生き物は魔物へと変化してしまうという研究発表が成されている。魔の森に沢山の魔物が居るのはこのせいだ。

 ある学者の説ではダンジョンを守るために強い魔物を作っているのではとのことらしいが、本当の理由を知るものはいない。


 魔素は当然森の外へも流れ出てゆく。世界中の大気へと薄く広く。

 もちろん魔の森のような濃いものではないから、それに触れた生き物たちは魔物になることは無いのだが、性格が凶暴になってしまうことが多々ある。


 そんな生き物が餌を求めて農地や村を襲い、そこに依頼を受けた冒険者が退治に来る。

 それがこの世界の日常のひとつだ。

 

 *  *  *


「よし、残りは二匹だ!」


「いくよ~! <ホーミングライト>!!」


 絵美が持つ杖から拳より大き目の光が流線型の形で二発飛び出していく。


「ギャウッ!!」


「ギュウッ!」


 一体の凶暴化した猪はその光の玉に直撃され絶命したが、その後ろにいた一体はその状況を見て咄嗟に横に反れて難を逃れた。


「まだだよ!!」


 だが絵美は慌てずに持った杖の位置をクイッと傾ける。すると、反れてしまった光の玉がUターンして猪の背後を強襲した。

 二体目の猪も後方からの攻撃には気が付かなかったようだ。後頭部から顎へと貫いた光の玉が消滅するとその体躯は横たえた。


 冒険者登録をしてから一週間が過ぎた今、俺達は凶暴化した猪に畑を荒らされている村の討伐依頼を受けて戦ってる最中だ。

 初心者講習を済ませ、いくつかの依頼をこなせば[Dランク]ランクアップできるとのことで、絵美と共にスキルの検証や戦いの練習も兼ねて今回の依頼を受けたわけだ。


 マテスから北東へ徒歩で二時間ほど離れたこの村は、マテスより魔の森に近い分凶暴化した獣が出やすい場所であるため度々こう言った依頼が出され、言い方は悪いが初中級冒険者からは小金稼ぎとして人気の場所となっている。

 ただ、俺達は小遣い稼ぎが目的ではなく、日帰りが出来る距離であることが気に入っている。

  

「まったく、追尾型の攻撃魔法とかとんでもないな」


 絵美のアイテムバッグに猪を入れながら、俺は一人ごちる。この世界に追尾する攻撃魔法なんて聞いたことも見たことも無い。

 絵美が言うには(あるある)なんだそうだ。


「小説では、魔法の具現化はイメージだって良く出てくるでしょ。だから某ロボットアニメのビットとかファンネルとかをイメージしてみたの」


「そしたら出来たと?」


「もちろんこの一週間苦労したよ~」


「一週間で作れるほうがおかしいと思うんだが」


 この世界ではこの魔法はこういうものだ、このスキルはこういうものだと、決め付けた考えしかない。その性質や内容、あるいは原理などを考える者はいない。だから魔法をイメージするなんて考えは当然のように無い。

 いや、考えた者は居るのかも知れない。ただ、理解は出来なかったのだろう。此処はそれくらい知識や学問が地球程発展してないんだ。

 

 たとえば何故光が物質にダメージを与えれるのか、なぜ風がカッターのように物を切るのか、誰も理由を答えられない。

 そういう魔法だからとしか認識してないから。


 だけど俺たちはレーザービームとか、真空によるカマイタチとかをアニメや小説やインターネットで知っている。さらには学校の物理や化学なんかでもある程度の原理を習ってたりする。


 俺達が何気に言ってる(あるある)は、こっちと地球の両方を知ってる俺にとってかなりのアドバンテージになってると思う。

 まぁ、これもまた(あるある)の一つか。



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