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夫の話


自分を表す言葉は、どこにでも居るという表現であっている侯爵家の次男。


長男を中心に回る中、兄弟仲は程々で、下の妹共小まめに会い雑談や買い物や夜会のパートナーも務める仲で婚約者ができるまで毎回勤めていた。


変わっていると言えば、兄が王宮で文官として働き、その姿を見て妹も王都で働きたいと言い出したので、ならば自分は自領に残り領の運営をする。


互いに歪み合うのではなく、領民の為と兄と手を取り補佐に回り次々来る仕事をこなし過ごす。


兄夫婦は王都


自分は領地


互いの仕事をし、兄夫婦に子供ができ長男が産まれると結婚の話が来るものの


「自分は働く事が生きがいなので」


「仕事中心の自分に嫁ぐ令嬢に申し訳ないです」


などと断り文句を次々告げ兄夫婦や両親に告げ、


遂には


不能なのでは?


仕事を言い訳に実は同性が好きなのでは?


そんな噂が出ているのも知っているが、年に1回の新年を祝う舞踏会のみ参加なので痛くもないが、兄夫婦と家族には噂の否定し、気にしない様に告げいる。


噂などあっと言う間に消える。


今の旬の話題は殿下と妹殿下の仲の良さが噂の中心で殿下と妹殿下は大変仲が良く、お2人で散歩をしている。


数日前に妹殿下が殿下と散歩途中でお倒れになった。


急な事だったのでどこかご病気なのかもしれない。


そうなれば、妹殿下の嫁ぎ先が


お子を成せるか・・・


聞こえてくる噂を精査し兄の手紙と従者の報告書などから判断をくだす。


理になると判断すれば、兄に手紙を送り様子を伺うが、


それ以外は捨て置く。


邪推と憶測に時間を使うのは無駄だ。


暫く領地で仕事をこなし、時に領民と話を聞き、孤児院で勉強会を開いたりと充実している日々が続き数年過ぎると、


王都から流れきた噂は、殿下に婚約者ができ妹殿下とも仲良く過ごしている。


妹殿下はオリビア公爵令嬢を気に入り、憧れ勉強に励む様になった。


領には不必要であるものの、国全体には喜ばしい噂の様で、


妹殿下がお生まれになってから王宮は穏やかである。


と、口々に告げている。


そんな噂に気に求めず、領民からの嘆願書に目を通しどこから予算を出そうか、どうすれば領民の理解が得られるのかに頭を悩ませるのが大事だった。


年々減る結婚の話は無くなり、煩わしい事が1つ減り仕事に集中していると、


社交界の旬の噂は、兄殿下の火遊びが元でオリビア令嬢が不穏の仲になり、


今まで仲が良かった妹殿下とも火遊びが原因で仲違いをしている。


火遊びのお相手は男爵令嬢。


父王を超える国王になるのではと囁かれていた兄殿下も年頃には勝てなかったのだろう。


噂が噂を呼び、何より生真面目と評されてきた殿下の初めての醜聞な噂に面白半分で膨張さてるのだろうと思ったが、


蓋を開けてみたら王位継承権剥奪に加え、数日後にはこの世から存在が消えた。


囁かれる様々な噂の中、ソフィア殿下であられるソフィア様に王位継承権が移り、事実上の時期国王をなる祝いのパーティーが開かれるという事で、


慌て自領から出て王都にある両親と兄夫婦が住まうタントハウスへ向かい、噂の真相を確かめるべき、両親と兄夫婦に聞けば


噂は真実らしく、男爵令嬢は奇しくもソフィア様の性格と行動を真似、兄殿下に近づいたのだと言う。


ソフィア様は殿下を始めオリビア公爵令嬢や兄殿下の側近候補方が大切に思っていた方。


ソフィア様に何かあれば兄殿下の周りにいる次世代の跡取り達が黙っておらず


いわばアキレス腱とも囁かれていたお方。


そのお方に目を付け、行動をしたのは策略として良かったのだろう。


現に兄殿下や側近候補達は見事にハマった。


だが、爪が甘ったのは、ソフィア様とオリビア様の関係。と、


ソフィア様が殿下を慕う気持ちの量を計り間違えた事だろう。


ソフィア様は殿下から溺愛されていることを理解した上で素気なくしつつも甘えている。


外部から見れば末っ子の我儘姫を兄が可愛く猫可愛がりしていると見えても不思議では無い。


聞こえてくる噂にソフィア様の悪い噂は一つも無い為、ソフィア様が意図的にそう見せていると考えたのだが、もし考え無しでの行動なら中々魔性を秘めている事になる。


「国内ならば良いだろうが、国外の王族や外交関係者から下に見られかねない」


父親の言葉に心痛な表情の兄が頷き、母親と兄嫁は微笑むだけ。


男女の考えが違うのだろうか?


それとも母親達の情報網は男性陣の知らない情報を持っているのだろうか?


様々な考え、どんな答えが来ても驚かず対応できるように策を考える中、


「ソフィア殿下の側近候補はまだ正式には決まっておりませんが、存在を匂わす方々がお見えですわ」


母親の言葉に男性陣の視線が向けられると、


「さようでございますね。あの方々でしたら初の王女様をお支えできますわ」


意味ありげに微笑む兄嫁に、


「田舎から出てきたばかりの自分に、詳しく教えていただけせんか?」


情報が誰よりも疎い事を盾に取り尋ねると


「あら。まだ届いておりませんの?」


兄嫁のとても意味ありげな口調に頷くと母親と視線を合わせた後、


「発表はされておりませんが、兄殿下の婚約者様と元側近候補の婚約者だった令嬢達の名が囁かれてりますわ」


家族しか居ない空間で声を顰め告げる内容に眉を顰めれば、


「兄殿下の婚約者様はソフィア殿下が慕い次期社交界の花として君臨されると言わしめたお方」


微笑む兄嫁の言葉を引き継ぐ様に


「元側近候補者の婚約者はいずれも才能に長けた方々」


ソフィア様と深い繋がりがお有りなのよ。


兄嫁とは逆に小さく微笑む母親の言葉に、


「だが、いくら才女であられる方々でも側近が全員が令嬢では問題があるのではないか?」


父親の言葉に兄と自分も同意する様に頷く。


今まで前例が無い分、どんな反応が返ってくのかが分からない。


いや、我が国が下に見られる対応をされるだろう。


そうなれはこの国は今の平穏をなくす事にもなる。


あってはならないことだ。


それに、子を成して血を残して貰わなければならない。


妊娠中の公務はどうすると言うのだ。


体調がすぐれないからとキャンセルすることなどできない。


眉間に皺を寄せ考えに没頭していれば、


「ええ。王配殿下の存在が大きくなって来るでしょうね」


自分達の考えなどお見通しだと言わんばかりの母親の言葉に顔を上げれば、


「今回は祝賀が目的ですが、ソフィア様の婚約者も探す意味も含まれた集まりですもの」


婚約者を作らない宣言をした噂には聞いていたが、多感期な年頃に与え兄殿下の事があったといえ、恋愛はしていないにしても目星の男性ぐらいはつけているのだろうと思っていたが、


そうであろうと思っては居たものの改めて聞くと


「学生時に婚約者を決めなかったのは本当だったのですね」


感心しながら呟くと、


「周りの高位貴族のご淑女もご子息も、ソフィア様のご意見に賛同し、どなたも婚約をしておりませんわ」


すかさず教えてくれた母親の言葉に


「待って下さい、ソフィア殿下のデビュタントのお相手は、一体どなたがお相手をされたのです?」


まさが高位貴族の御子息が持ち周りでされたと言うことか?


間髪入れずの言葉に、母親はため息を落とし、


「いくら興味が無いからと無関心すぎではなくて」


呆れの色を濃く出した表情と声に、グッと握り拳を作り瞬間に生まれた感情を抑えると


「ソフィア様と近いしい歳のご令嬢方は、まだデビュタントをされておりませんのよ」


救いの手を指しのべる様に兄嫁の言葉に驚きを隠せないでいると、


「まぁ。自分の子をソフィア殿下の婚約者にと思う、ご子息のを持つ親はいくら遅くても待つよな」


兄の弱々しい助けの言葉に、納得し頷く。


確かに高位貴族の殆どの家は兄殿下の件でソフィア殿下との関係を繋ぐ事が難しい今、侯爵家はこの好機は逃したく無いはず。


だが、大きく動けば王家から危険人物と判断させる。


どの家もこの祝賀パーティーは好機な訳だが、幸い我が侯爵家で未婚者は自分のみ。


ソフィア様とは10歳年上


兄夫婦の子供はまだ片手の歳の兄弟だ。


周りからの牽制など無く平和に終わるだろう。久しぶりに学友達に会えるのは楽しみだ。


軽い気持ちで当日を迎え、一代騎士爵から男爵家と呼ばれ伯爵家に続き侯爵家の名を呼ばれ我が家は真ん中辺りで呼ばれ入場した。


その後、残りの侯爵家に公爵家と呼ばれ、王弟殿下であられる辺境伯家が呼ばれ、ようやく来賓全員の入場が終わると、


「国王様。王妃様のご入場です」


我々と入り口は違い、向かって正面の高い位置からの登場に最上級の礼を持って迎え、


「皆、我が子の為に良く集まってくれた。礼を言う」


国王様の挨拶後、


「ソフィア殿下の入場です」


声高らかに入場を告げら我々と同じ扉から入場するソフィア殿下の横には従兄弟である辺境伯の次期当主であるお方。


扉が開きお二人の姿が見えた時に騒めきが起こったものの、一斉に礼を取り迎える。


程良い速さで歩いたお二人が動きを止め、


「国王様、王妃様。わたくしの為に祝いの席を設けていただき御礼申し上げます」


ソフィア殿下の感謝を告げる挨拶に、


「祝いに駆けつけたくれた皆に、恥じぬようその身を国の為に捧げるが良い」


形式通りに国王様からの返事が返ると、


「皆、顔を上げよ」


ようやく礼の姿勢から解き放たれ体を起こすと、


「今宵を持って、嫡子であるソフィアは王位継承し次期国王へとなる。初の王女に当たり諸外国との関係を鑑みて、辺境伯は次世代も継続とする」


国王の一言にどこからともなく、様々な意味合いの安堵の声が漏れる中、


「皆、今宵は祝いだ。存分に楽しんで行くとよい」


国王の一言で音楽が流れると、ソフィア様に本日のお相手である次期辺境伯が膝をつき手を差し出しダンスの申し込みをし、これを笑顔で受け、お2人はダンスホールの中央へ移動し、


まずは1曲


2人だけで踊り、次の曲は国王様と王妃様がホールの中央に立たれると、高位貴族のご夫婦がその場に入りワルツを踊り、


3曲目になり、ようやく侯爵家から下の家が踊り出す。


ある程度ダンスを踊った後はそれぞれが好きな場所でお喋りや情報交換に勤しむ中、学友から声をかけられ、互いの情報交換を行う中、


「元来の祝賀パーティーと形式を変えてきたんだな」


何気なくこぼした言葉に、


「しきたりを変える事で、新しい風を入れ込むと見せたいんだろうな」


なんせ、兄は失敗して、残りは甘やかした妹しか居ないわけだし。


揶揄しながらの言葉に、関係の無い年齢であれば愉快な出来事だっただろう。


婚約破棄の1件からまだ時間も空いておらず、高位貴族がこぞって女性に落ち失敗をした事に下位貴族は面白くて仕方ない。


顔を顰めていれば、


「相変わらず真面目だなぁ」


呆れ半分からかい半分の言葉に、近くを通った使用人からワインを貰い気分転換に1口飲み、周りに視線を向ければ、


国王様に王妃様とソフィア様が高位貴族から挨拶を受けており、両親と兄夫婦が列に並んだのを見つけ、学友に一言告げ両親の元へ行けば、


「ご学友も大切ですが、ダンスに誘うご令嬢は居ないの?」


母親の親心がたっぷり篭った言葉に


「この様な行き遅れがお声がけしては令嬢にご迷惑ですよ」


にこやかに返事を返し話題を終わらせた。


毎度同じやり取りに内心呆れつつも、そろそろ諦めて欲しいと思い兄夫婦へ違う話題を振ると、仕方ないとと言わんばかりに乗ってくれた事へ感謝し、王家への挨拶の順番を待つ。


それぞれ御子息の居る家が少し長く時間を取っているのか、いつもより進みが遅く感じるも、


多分いつも通りの対話時間なんだろうな。


ここで差が出ればただでさせ下位に面白おかしく噂されて、言葉には出さないが見下している人物だっている中、より平等性を厳しく取っているはず。


体感は感情によって見誤りやすくなる。


そのせいだろう。


心の中でため息とソフィア殿下の立場の不憫さに同情していれば、あっと言う間に我が家の順番になり


「本日はお忙しい中、来ていただきありがとうございます」


ソフィア殿下のお言葉に


「勿体無いお言葉。本日はおめでとうございます」


全員で礼をし、祝いを示すと


「ありがとうございます」


嬉しそうに微笑むソフィア様にいささか幼さを感じると、


「御子息が、領地から来てくださったとお聞きしました。お忙しい中、ありがとうございます」


ソフィア殿下と視線が合ったものの、自分に声をかけていただけるとは思っておらず、


「お言葉をいただき身に余る光栄です。私も家臣なればいつ何時でも王家の為に馳せ参じる所存でございます」


形式通りに返事を返してゆく。


その言葉がきっかけにソフィア殿下が中心に2、3言葉を交わし退出の礼をし王家の方々から離れ、


「さて、僕達は踊ってくるけれどお前はどうする?」


兄の言葉に、


「学友を見つけましたので挨拶に行くつもりです」


「久しぶりだろう、こちらは気にせずゆっくりしてきなさい。クラブに行くなら言付けだけはするように」


父親の言葉に短く返事を返し、学友達の座談に入るべく声をかける。


皆、結婚をしており子を成している。


それでも、顔を見れば学生の時のように気心が知れ心が解れてゆく。


情勢にそれぞれの領の事。


座談を交わし、用意された部屋でカードゲームなどを楽しんでゆく。


「そういえば、ソフィア殿下の婚約候補者すら決まっていないらしいな」


手元のカードから視線を外さず告げた共の声に


「兄殿下の事があって慎重になっているのは分かるが」


濁しながらも言いたい事は分かると頷くが


「それが、近々、王家主催で子息と令嬢集めパーティーを開くと噂が出ている」


声を顰め告げられた言葉に全員が視線を向けると


「ソフィア様の我儘で婚約していない者達への詫びを込めてらしい」


程の良い婚約者選定だろう。


呟かれた言葉になるほどなと納得し、


「候補者から外れれば、令嬢達と婚約できるもんな」


「下位は男爵令嬢の件もあるので影を顰めて早々に婚約してるし、王家に気を使い公表はしていないが婚約のような物をしている家もあると言うし」


「アレだろ?秘めたる恋事の様でより両人の仲を深めているらしいな」


アルコールも程々に飲んでいるから皆、少し口が軽くなりながらも


「仲が深まるなら良い事じゃないか」


自分も軽く言葉を挟むと


「そういうお前は、どうなんだよ」


タイミングと言葉を間違えたのか触れたくない話を振られ口を開くも先に


「良い加減、自分の幸せも考えろよ」


「そうだぞ。お兄さんの所は子供も生まれ跡取りも生まれてるじゃ無いか。もう良いだろう」


思っていた事を違う言葉に思いわず驚いていると


「領地運営は貴族の務めだが、本来爵位を継ぐ者がやる仕事だ。お前は違うだろ?」


兄が王都で役人として働き、次男である自分が自領の運営を行っている。


確かに世間一般とは違う我が家に友達も応援してくれていたが、兄が結婚し子供ができた時点から気にかけくれていた。


ありがたいと思う。


だが、


「自領の運営以外の仕事のみで流行に興味のない俺が、今更王都で過ごせるとは思えないんだ」


心配りの礼の後に何度も何十回も言い続けてきた言葉を告げれば、


「自領の運営ができているなら、ある程度の職はこなせるさ」


「流行りは、従者やメイドに仕立て屋で仕入れればいい。だからこっちに来ないか?」


「お前は真面目で優しく気立もいい。どの役所も喉から手が欲しい程の人材さ」


心配事など些細な事だと言う友達に


「考えてみるよ」


曖昧な返事を返すと学友達したないと小さく笑ながら次の話題に移ってくれた。


話題の話は兄殿下の婚約破棄に巻き込まれた令嬢達で、よくよく話を聞けば兄嫁や母が満足げに頷くことがよく分かる程の才女で、


「ソフィア様の代は、かの令嬢達に支えられて行くだろうな」


「王宮仕事はやりにくくなるかも知れない」


「親の世代は反対をしたらしいがオリビア様が自分の体験談で黙らせたらしい」


自領まで届かなかった噂に母親と兄嫁が機嫌がよく、兄と父親が言葉を濁した意味がようやく分かった。


これを機に女性の勉学が認められ、職に女性雇用が増えるのではと期待しての事。


1代では難しいだろうがこれが入口となればいいな。


困惑する学友達とは反対に、仕事ができれは性別関係無く雇っている自分とはズレがあるの様で


「仕事ができるなら性別は関係ないさ」


自分の考えを言葉にすると、


「学園での上位の成績と内申点などで選抜されている王宮職なら女性でも雇用はありか?」


「たが、いくら事務職といえども体力が必要な事もあるし」


「確かに。でも流行を作っているのは王家や上位貴族に社交界の華と言われる女性だ」


ありなのではないか?


自分の言葉から一気に旗色を変えた学友に驚きつつも


「だが、風紀が」


変化を受け入れ難いのだろうと思える言葉に


「確かに、良い事もあれば悪い事もある。それは男も女も色々問題はあるだろうな」


それにやってみなければ分からない事もある。


それぞれの考えに理解を示し、話を終わらせれば、外で飲み直す流れとなりそれぞれの使用人に伝言を頼み1台の馬車に乗り込み街へ出た。


男性貴族や商売人達が集まる紳士クラブでも同じ様な話で盛り上がっており、部屋を借り学生時代の話で盛り上がり楽しい夜を終え、王都に居る間に会う約束を交わし、それぞれの屋敷へ帰っていった。


数日過ごもその間に取引をしている方々の晩餐に呼ばれたり、新たな商売先を見つけ商談をしたりと忙しく過ごす中、父親に呼ばれ書斎に行くと、雰囲気は重く、真剣な表情の兄も居り


「何か問題が起こりましたか?」


深刻な事が起こったのだろと気持ちを引き締め尋ねると、1通の手紙が差し出された。


一目で上質と分かるくすみの無い白色の封筒に、裏を見れば王家の蜜蝋が施されており、困惑しながら父親に視線を送ると、読むように促されるので手紙を取り出し読んでゆく。


「王妃様主催のお茶会ですか?」


自分のみの招待状に、父親は重い息を吐き


「ソフィア様の結婚相手を探すお茶会だ。必ず参加するように」


行きたくなくても、行きます。としか返事を返せないが、


「お待ちください。ソフィア殿下とは10も歳が離れているのですよ?」


招待の意味が理解ができないと告げると


「私もそう思う。が、行くしか無いだろう」


重々しい父親の言葉と


「数合わせだと思う。行って挨拶を終え時期を見て帰ってくるといい」


兄の言葉に、ため息を落とし


「解りました」


これも家臣の務めと割り切り、慌ただしく過ごせばあっという間にお茶会の日になり、


「失礼の無いようにね」


何か言いたげな母親の見送りに


「来ていただきありがとうございます」


何も気付かぬふりをし礼をのべ馬車へと乗り込んだ。


自分より年下が多い上に、ソフィア殿下との結婚となれば王家と繋がれる。


またと無い好機に各家や子息は意気込んでいるだろうと思うとため息を落とし、早々に無駄な争いから離脱する事を胸に秘め、


到着直後から突き刺さる軽蔑する視線を受けながら、年長の意地で貴族の微笑みを絶やさず挨拶の順番を待ち


「忙しい中、来てくれて嬉しく思うわ」


王妃様からお言葉を頂戴し、


「今日は楽しんで行ってくださいね」


ソフィア殿下からは実行するのは難しいお言葉に、紳士らしく微笑み


「ありがとうございます」


礼をのべ、失礼にあたらないように早々に離れた。


王宮の庭園で行われているお茶会は男性だけではなく女性もおり、


婚約者がいない者への配慮なのだと、誰もが解る状態だった。


ソフィア殿下と近しい年齢の男性は目的を持って参加している者が多く、自分の様に離れた歳の人、もしくは王家との関わりは程々と考える人物は邪魔にならない様に気を配り、隅に集まっており、


男女問わず仲間意識が芽生えるが表には出さない心得もできており、自己紹介の後たわいの無い話をして過ごす。


チラリと盛り上がりを見せている場所に視線を送れば、ソフィア様を囲み紳士達の自分を売り込みにの言葉に、淑女らしく微笑んで対応していた。


オリビア公爵令嬢仕込みのマナーに関心しつつ、折角の時間を無駄に過ごしてはと理になりそうな話や関係を深める事に決め話し込めば、


あっという間に終了の時間となり、蓋を開けてみれば実りある時間だった。


もう呼ばれる事はないだろうと思い、屋敷に帰って感想を聞いてくる両親と兄夫婦に仕事関係で良い縁が作れたと告げれば、


「歳の近しい令嬢がいたにも関わらず仕事の話だなんてなんて無粋な」


ため息混じりの母親の言葉に


「向こうは王妃宮での働きに楽しみを見出しているお方です。それこそ水を差す訳にはいきません」


苦笑いをし伝えると


「まぁ、何事もなく無事に終わったなら良かったじゃないか」


父親から助けの言葉が入りこの話題は終わりを告げた。


はずだった。


「え?招待状ですか?」


数日前と同じ言葉に、疲れた表情の父から差し出され手紙を読めば、


「オリビア公爵令嬢様からで、自領の雇用について話を聞きたいとの事です」


その事は良い。


いや、良くは無いが噂に出ている女性の雇用についてだろうし仕事の話だ。


だが、それを知らない各家はどう噂するかなんて想像に容易い。


できれば噂の的になりたく無いし、注目なんてされたくも無い。


格上の公爵令嬢からの招待に頷く以外の返事が許される訳はなく、指定された場所は王宮でなぜか兄と一緒に出勤する形で入り、


見学者という立場で案内人である騎士に王宮を説明されながら案内をして貰い、


うっかり足を踏み入れた庭園で、偶然、お茶をしていたオリビア公爵令嬢のお誘いを受け、


互いに自己紹介をし終え、お茶会が始まった。


「久しぶりの王都はいかがですか?」


自分がどこに居て、何をしているのかを把握している一言に、


「華やかで眩しく感じます」


自分の居場所はここでは無いのだと意味を込め伝えれば、淑女らしく微笑み流してくれ


「穏やかな雰囲気と共に、領民も気立が良く穏やかで働き者だと聞いておりますわ」


領主の人柄が領民にも伝わってるのでしょうね。


隠れた意味は無く、お褒めの言葉に嬉しく思い


「お褒めの言葉ありがとうございます」


素直に受け取り礼を伝えると、


「なんでも、性別関わらず役所では雇用をしていると聞き及んでおりますが」


「はい。働く意欲がある者は性別関係無く雇用しております」


ようやく会話が本題に入り、失礼ならない程度に言葉を選び


「王宮にもメイドは女性で、貴族の家を仕切るのも女性です」


働けない、足で纏になるなどある訳が無い。


無いのは学に知識と経験。


それさえしっかり整えば、誰だって働けるのだ。


自分の考えを伝えれると、オリビア公爵令嬢は


「素敵な考えですわ。とても参考になります」


淑女の微笑みのままで、感情は一切分からないが素直に受け取り、


「ご参考までに、どの様に教育をしたのかをお聞きしても?」


の言葉に隠す必要は何一つ無いので全てを話た。


気が付けば数時間過ぎており、メイドのそろそろと言う雰囲気に自分が熱弁していたことに気づき、令嬢を数時間も付き合わせてしまった事に申し訳なさも、


「とても有意義な時間でしたわ。ありがとうございます」


そう言いながらも、名残惜しそうなオリビア公爵令嬢の雰囲気に救われ、屋敷に戻った。


両親にも兄夫婦にもそのままを話し、後日呼び出された学友達にもそのままを伝えれば


「女性雇用は現実味を帯びてきたな」


学友達の言葉に


「悪い事では無いさ」


返事を返せば


「魔の巣窟だぞ」


声を顰め言葉に


「貴族なら当たり前で自分達も行っている常識だろう」


呆れなから伝えれば、


「まぁ、そうなんだがな」


眉間に皺を寄せ苦渋を表す友人に


「確かに気を使うが、上司に接する様に接すれば良いだけだ」


自分の体験談を語れば、


「あー、うん。そうだな」


「上司が2倍かぁ」


「できれば避けたい。が、人手は欲しい」


それぞれの苦悩を溢す姿に、申し訳ない事をした気になりそれぞれのグラスにワインを注ぎ、そっとつまみをの皿を差し出してやった。


確かに、使う者と使われる者では色々違うよな。


背中に影を背負う友人達を過ごした数日後に再びオリビア公爵令嬢からの招待状が届き、


「あら。何時ぞやの」


前回と同じ様に王宮に招待され、同じ立場と同じ道順で来れば


オリビア公爵令嬢様の言葉に、近づくしか無かった。


ただ違うのはその席にソフィア殿下がおり、


「お茶会以来ですね」


にこやかな微笑みと共に告げられた言葉に、膝を折り最上級の礼を取ると


「ソフィア殿下、以前、女性雇用の話を教えて下さった方なのですよ」


「まぁ、大変興味深い内容でしたわ。ぜひ続きを聞きたいと思っておりましたの」


どこまで演技なのか分からないが、とてもめんどくさい事になっている事は事実だが、しがない侯爵家のなんの権力も無い次男に反論できる訳は無く、


「お立ちになって。時間がありましたら、是非お話を聞きたいの」


時期女王様の言葉に従い立ち上がり用意された椅子に腰掛け、心の中で学友達に謝罪をし両お方からの言葉を待った。


事前に打ち合わせがあったのだろう。自分の事に家族構成に自領の事など自分が話さなくても御2人はご存じだった様で、両親へのこれまでの忠義に兄への王宮での働きと共にそれを支える兄嫁へのお褒めの言葉をいただき、


話を聞くだけにしては、お世辞が多い様な気がし背中に冷たい汗が流れる。


自領での女性雇用の話しと自分の考えを話すと、ソフィア様は様々感情を表情や声に出し、オリビア様は微笑みのまま、感情を読ませる事は無い態度に


これがあの生真面目と評された兄殿下を狂酔させた本物かぁ


悟られない様に心の奥底で考えていると、オリビア公爵令嬢の笑みが冷たく感じ即座に浮かんだ言葉を捨て、

誤魔化す様に紅茶に口を付けた。


ソフィア様の反応が全て本心だとすると女性雇用が本採用されそうな気配に、大変な事をしてしまったのではと慄き、


「自領は土地が小さいので実現できた事です」


逃げ道を作り、この話に距離を置こうとすると


「そういえば、ご趣味は仕事だと伺いましたが本当ですの?」


即座に空気を読んでくれたソフィア殿下の言葉に、即座に頷き


「ええ。苦労は多いですが、手を加えれば手を加えただけ成果が出るのが面白く」


話しやすい内容に、軽く返事を返すと


「ですが、すぐに出ない成果もありますよね?」


ソフィア殿下はこの話題を続けてくれるようで


「それが良いのです。即座に出ない結果も思い起こせば続けてきた頑張りだと分かると喜びが一層増します


つい力説をしてしまった事に気づき、紳士としてあるまじき失敗をしてしまった事に気付き、心の中で後悔するも、


「お仕事への真摯で大好きなのが解りますわ」


ソフィア様の楽しそうに笑う姿と


「本当に。領民達は幸せでございますわね」


深く頷いくオリビア公爵令嬢様の言葉に気にされていない事が分かり、懐の深さと淑女としての対応に感動と感謝の気持ちに


「ありがとうございます」


少し恥ずかしく思いながら礼を伝えると、時間だったようでメイドがソフィア殿下元へ近づき耳元で言葉を交わし


「もっとお話を聞きたい所ですが、席を立たせていただきますわ」


眉を下げ名残おしそうに告げるお言葉にオリビア公爵令嬢より少し先に立ち、


「わたくしめの仕事話でしたら、いつでもお話しさせていただきます」


胸に手を当て一礼をし伝えれば、


「ありがとう。そのお気持ち嬉しいわ」


幼子の様な嬉しさを全面に出した笑みに思わず見惚れるも


「それでは、わたくしも失礼させていただきますわ」


オリビア公爵令嬢の一言に我に返り、迎えにきた騎士に連れられ帰路に着いた。


仕事の話をして、嬉しそうに聞いてくれたのは初めてだな。


屋敷に到着後、父親に王宮での話を報告し驚いた表情にその気持ち分かると心の中で頷き、着替える為に自室に戻った所で、


フッと思い出す。


どの令嬢も最初は興味深く聞いてくれるが、途中から微笑んだままでつまらなそうな雰囲気だったが、ソフィア殿下もオリビア公爵令嬢も興味深く聞き、時に鋭い質問をしてきた。


話した意味を理解、もしくは興味がなければ質問など無いはず。


自領で働く女性達の様で親近感が湧き、


ソフィア殿下の時代は、初の女王として歴史に残すのも、それ程悪い時代では無いだろう。


働く意欲があると言うことは、現状を悪くせず維持、もしくは良くしてゆこう思わなければやる気は出ないはず。


噂話などの先入観で判断をしてしまっ事にもし分けなさを感じつつ、疲れた体をソファに身を任せた。


晩餐も取らず寝て翌日を迎えた事に、年齢への体力低下を実感し気分が滅入る中、再び父親の書斎に来るように呼ばれ、迎うと


手渡された手紙に、話を聞きたいと言って貰えたが昨日の今日とは早急だと思いつつ、準備をし前回と同様に兄と共に王宮に行き、騎士に連れられ歩いて行くも。


前回とは違う道順に心の中で首を傾げつつ、重厚な扉を開けられれば入る以外の選択は無く、表情には紳士の笑みを貼り付け、服の中では冷や汗が流れ、心の中は扉を潜らず引き返したくなる。


そんなこと許されるはずも無く、


「お忙しい中、お呼びし申し訳ありません」


部屋の真ん中にはソフィア殿下が嬉しそうに笑いながら立っており、


部屋の1歩入った瞬間に膝を折り礼を取り、嫌な予感が心を占める。


今までは庭園で誰の目にも触れる場所だったにも関わらず今回は室内。


いつも居るオリビア公爵令嬢が今日は姿が無かった。


いや、視界に入らなかっただけで、この部屋の何処かには居るかもしれない。


「お顔を上げてください」


ソフィア殿下の促され姿勢を戻しつつ、期待を込め部屋の隅から隅まで視線を動かし確認するも期待をしていたオリビア公爵令嬢はおらず、昨日のメイドが1人壁際に控えている。


「おかけください」


そうソファに促され対面で座り、メイドからティーセットが置かれ、紅茶の良い香りが広がる。


カップを持ち上げたソフィア殿下にならい同じ様にカップを持ち口を付ける。


芳醇な香りと少しの渋みが口の中を楽しませてくれるも、余韻に浸る余裕は無く、失礼にならない程度にソフィア様の行動に注視していると、


なぜか恥ずかしそうに微笑まれ、あまりの無垢さに心臓が跳ねた。


「いきなりこの様な事を言うのは、良く無いのでしょうが」


頬をほのかに染め、上目遣いで語るソフィア様に小さく頷き返事をすると


「わたくしの婚約者になっていただきたいのです」


緊張の為か震えた声で告げられた言葉は理解ができず


「こんにゃくしゃですか?」


反復で言葉を返してしまい、


「はい」


恥ずいのか消えそうな程に小さな声と共に俯いてしまったソフィア殿下を眺めていると、急に言葉の意味がわかり


「婚約者と言いますが、家は後ろ盾ができない侯爵家で自分は次男です」


ソフィア殿下の役に立たない立場なのだと伝えるも


「後ろ盾が欲しくて選んだのではありません。一緒にいて楽しくて、貴方なら王女となった時も出産なので仕事ができない時も託せる。そう思ったのです」


先程の恥ずかしく俯いた少女ではなく、上に立つ者としての言葉と雰囲気に、


「しかし、自分とソフィア殿下は10も歳が離れております」


圧倒されながらも、苦しい言い訳を口にする。


「問題はありません。わたくしは気にしておりません」


はっきりと返事が返され、どうするか迷う中、


「言われて、すぐにお返事は難しいですわよね」


申し訳ございませんでした。


座りながらも頭を下げるソフィア殿下に驚き、


「殿下程の方が下の者に頭を下げてはいけません」


慌て注意をするも、


「いいえ。この部屋は信頼ができる者しかおりません。お気になさらずに」


微笑みと共に返され、視界の端に居るメイドを伺うと微笑んだまま感情を読み取らせる事はなかった。


「返事はどちらでも構いません。後日、お心が落ち着きましたら返事をいただけませんか?」


微笑んだソフィア殿下に頷き、居心地の悪さと共に退出をすると行きと同じ騎士に先導され王宮から屋敷へと戻った。


勿論、父親に今日のことを報告すると寝耳に水だったらしく、驚きと焦りと戸惑に口を大きく開けたと思ったら、すぐさま一文字に閉じ、


「お前の気持ちは解る。が、もっと言いようがあったのではないか?」


苦渋しながら家長と領主の立場での言葉に、


「申し訳ございません」


この話は自分達の胸に収め、いただいた時間に心の踏ん切りをつけ答えを出さなければならなかった。


自室に戻り、ソファに座れば自分の行動と言葉に後悔ばかりが浮かぶ。


ソフィア殿下に頭を下げさせてしまった申し訳なさと罪悪感。


歳を言い訳にした情けなさ。


もっとスマートに返事を返せたのではないかと自分を責めるが、侯爵といえども順位は下から数えた方が早い。


そんな爵位の人間が急に上位の爵位の者が快く受け入れられる訳がない。


その上、同じ爵位の家が黙ってはいないだろう。


背もたれに体を預け腕で目を覆い、ため息を落とす。


このまま自領で生涯を終えるはずだったのに。なんて事だ。


思考の奥深くにいたようで気が付けば空から朝日が登っていた。


答えは1つしかない。


それ以外は無いのだが、アレコレと考えるとどうしても頷く事ができない。


ウダウダと考え、仕事を理由に1日1日答えを先延ばしにしていると、オリビア公爵令嬢が養子として家に入った親戚と婚儀を済ませたと聞こえ、


他の上位貴族の令嬢も次々と婚約や婚儀を済ませ、噂の話題を尽きない中、


「ようこそ。我が公爵家へ」


オリビア公爵令嬢からの密やかに呼び出され、向かえば数人の令嬢が揃っており、口端が引き攣るのを必死で隠し、


「ご招待いただきありがとうございます」


紳士として礼をすると、


「今日は立場関係無い場。お気になされず」


にっこりと微笑むオリビア公爵令嬢に形だけ頷き、用意された椅子に座りお茶会が始まった。


「ご結婚おめでとうございます」


まずはオリビア嬢に祝いの言葉をかけると、


「ありがとうございます」


淑女としての微笑みと礼を告げられ、周りにいた令嬢にも同様に祝いの言葉を告げると、


「ありがとうございます」


同じ様に礼を返してもらった。


そこからは、たわいの無い話の中にもソフィア殿下と自分の関係を仄めかす言葉があり、居心地悪くも退席する事は許されず、紳士らしく笑って微笑みやり過ごすも、


「そういえば、オリビア様の旦那様は年下だとお聞きしましたわ」


武に長けた令嬢の言葉に、


「ええ。7つ程離れておりますが、互いに良好な関係を築けておりますの」


「まぁ。羨ましい事」


語学が長けた令嬢の言葉に


「互いに支え合う約束をいたしました。まだまだ知らぬ事は多いですが、とても新鮮で楽しく関係を築いてますわ」


オリビア嬢は嬉しそうに頬を染め告げる言葉に耳が痛く、飲み込んだ紅茶の苦味と渋みが口の中に残った。


「わたくしは元婚約者の父親と婚約いたしましたの」


突然の告白に驚き顔を向けると、微笑まれ


「跡取りは彼以外に居ませんでしたので、わたくしから申し込みました」


語学の長けた令嬢の言葉に、信じられずに入れば


「彼の夫人は数年前にお亡くなっております。勿論、想い出の人に勝てませんが、わたくし彼を尊敬しお慕いております」


跡取りが必要でしょうと迫りましたの。


頬を染めながらも、中々強かな行動に動揺し慌て心を落ち着かれるために紅茶を飲んだが味はしなかった。


高位貴族の令嬢の婚儀の話に言葉を無くしている中、自分の視線を向けられている事に気づき、

気づかないふりをし、微笑んで誤魔化すも、


「ふふ。可愛らしいお方からのお願いを聞けない紳士はこの国におりませんものね」


オリビア様の先制に


「本当ですわね。これから咲く白バラを自分の物にしない者など居ませんわね」


武の長けた令嬢の言葉に


「誰もが欲しくて手を伸ばしているのに、手元に置かないだなんて勿体無い」


語学が長けた令嬢のため息を着きながら言葉と


「お家の事情もおありでしょうが」


言葉尻が消えてしまった侯爵令嬢の言葉に、背中の冷や汗が流れつつも微笑み返事を返せずに居ると、


「守ってくださいと言いません。お2人守り支えるのは私達の役目です」


「御身は我らがお守りいたします」


「領運営を拝見しましたが問題はございません。自信を持ってください」


「これから荊棘を歩む彼の方の願いを叶えていただけませんか」


令嬢達の言葉に言葉を返せず俯き、口籠ると


「ご家族が心配ですわね」


オリビア嬢の言葉に顔を上げると、


「いきなりの事、やっかみは必ずありますもの」


「爵位も上がります者ね」


「勿論、手を打ちます」


公爵令嬢の3人の後、


「お気持ちは解ります。我が家も協力を惜しみません」


自分と同じ爵位の令嬢の言葉に、そういえばこの令嬢も結婚を気に爵位が上がるはずだった家だ。


そう言って貰うと心が少し軽くなるも、漠然とした未来に不安が取り払われる事はない。


「地盤は固まりつつあります。後は貴方次第ですわ」


オリビア嬢の言葉に頷き、手土産をいただきお茶会はお開きになった。


自分の知らない所で外堀を埋められつつある事に、憤慨したい気持ちが心を締め、父親にお茶会での事を告げれば、重々しいため息の後、


「そこまで行われているのなら、どうにもならん。覚悟を決めろ」


自分に言い聞かせる様な言葉に、沸々としたものが湧き上がり気分転換にと夜の帷が落ちた頃に飲みに外に出た。


平凡で満足なんだ。


王配なんてそんな大役要らない。


上位の奴らでやってくれよ。


心の中で声にできない言葉を吐き出し、アルコールを煽る。


確かにソフィア殿下は可愛かった。


爵位などなければ、歳など関係なく即答したさ。


1軒目を飲み終え、2件目は庶民が愛用している店に入る。


自分にはこういう雰囲気が居心地が良く合っている。


豪快な食事の食べつつ酒を飲み、飲み終えると元気な女将がおかわりを持ってくる。


馴染みすぎて自分が貴族だと気づかないだろう。


時おり、見知らぬ人の話かけられ、飲みながら語らう。


何人目が分からないが武人のような体つきの男に声をかけられ、奢り、奢られ話が盛り上がり男の行き付けの酒屋へ行こうと夜の街を歩いていると、人気のない道に連れて行かれ、


身の危険を感じ身を強ばらせるが


「会ってほしい人がいる」


男の言葉と共に影から出てきた人物は見覚えがあり


でんか


口の中で言葉を転がすと


「もう、その立場の人間は居ないのだがな」


微笑み告げられた言葉に一気に酔いが覚め、膝をつき礼をとりかけると男に腕を取られ阻止された。


染みついた動きに苦笑された後、深々と頭を下げ


「貴方なら、白薔薇を託せる。よろしくお願いします」


告げられた言葉と周りを囲み頭を下げる人物達の顔ぶれに、ため息を落とし、


「貴方の大切な白薔薇を受け取ります」


ここまでされ、断る事はできず諦めの元言葉にすると、下げた頭を上げ嬉しそうに微笑み、


「思う所は色々あるだろうが、よろしく頼む」


王として気品が抜けておらず、御身はどこで過ごしているのかと問いたくなるも、王配になれば分かるかもしれないと口を紡ぎ、


「ここで我らに会った事は内密で頼む」


真剣な表情で告げられ、了解した事を頷きで返すと微笑まれ男を残し帰って行った。


「送ろう」


その言葉に頷きついてゆく。


無言のまま屋敷まで送られ、頷いたことで決心が決まり、翌朝早々に父親にその事を告げると


「そうか」


その一言のみ返事が返ってきた。


そこからソフィア殿下への対面する手紙を送ると数日後の指定をくれ、自分が持っている上等な服を着て身なりを整え、カフスにソフィア殿下の色の宝石をつけ、兄と共に王宮へ行く。


何が言いたげな兄の視線に返す事はせず、ソフィア殿下にどう返事を告げようかと頭を悩ましながら、

案内された部屋へ入れば、


1輪の白薔薇を差し出され、


「わたくしと結婚してください」


少女の中に大人の雰囲気を出すソフィア様の姿と突然の言葉に、思考が追いつかず立ち止まるも、

不安そうに震えるソフィア殿下に


「情け無く、判断が遅い俺ですが、よろしくお願いします」


震えながら差し出された白薔薇を受け取り胸のポケットに差し、ソフィア殿下の手を握り、片膝を付き


「返事を先延ばしにしてしまし、申し訳ありませんでした。お心しかと受け止め殿下を支えられる様に邁進してゆく所存です」


指輪はサイズが分からなかったので、自分の色のリボンを差し出したものの、髪は綺麗に結われておりリボンを結ぶ箇所は無く、


考えが足らなかった事と差し出した手前に引く事もできず、どうするべきかと迷うと


「手首に結んでいただけますか?」


そんな言葉と共に差し出された左手に、後が付かないように注意し結び終えると、


「ありがとうございます。嬉しいです」


言葉とおりに微笑んでくれ、安堵の息を吐いた。


そこからは怒涛の日々で、屋敷から王宮へと勉強の為に通い、それと同時に結婚式の調整も入りてんやわんやしていると、野外の言葉など耳にも届かず、


お披露目の夜会にて、オリビア嬢と歳いたの夫との初々しいやり取りが若い紳士とご婦人の心を掴み、


語学が長けた令嬢夫婦は夫の包容力で安定した夫婦感を見せ若い令嬢と紳士の心を掴んだ。


勿論、羨んだやっかみもあったが、常にソフィア殿下が居てくれ、時折目を合わせると嬉しそうに時に恥ずかしそうに微笑んでくれるので、


嬉しい気持ちと釣られ恥ずかしい気持ちで最後まで行き


「ソフィアに君でないと嫌だと泣かれた時はどうなるかと思ったが、良かった」


「我が儘娘ですので厳しくお願いね」


国王夫妻からの歓迎の言葉も貰い、


「苦労があるが、あの幸せそうな殿下を見ているとお前の婿にやって良かったと思うよ」


「とても羨ましいと、友達と話していたのよ。おめでとう」


王宮で働く兄の言葉に兄嫁の言葉


「長い間、領地の管理を任せて申し訳なかった」


「きちんと支えられる様になりなさいね」


自分の結婚を機に領へ戻ることにした父親と母親に頷き、夜会は無事に終わりを迎えた。


そこからは瞬きをしたら1日が終わるのではと勘違いする程に忙しく、


王配としての勉強にマナー


諸外国の情勢と我が国との関係性と人間関係


王宮に働かなければ分からなかった苦労に父親と兄への尊敬。


それを当たり前だと受け止めているソフィア殿下。


フラフラしながら自室に戻ると、ソフィア殿下が出迎えてくれ


「お疲れ様でした」


労いをくれ、時に幼子の様に抱きしめられる時もあり、


これでは歳上としての立場が何のではと、同じ事をソフィア殿下へし


「お疲れ様」


言葉で労い、抱き締め、時に頭を撫ぜ労わると恥ずかしそうに胸に顔を埋めてくれるの嬉しい。


時に2人でオリビア嬢に叱られ、呆れられる事もあるが、


「お義姉様は私達の事を思っての事ですので」


この言葉で、もしかしたらわざと叱られる事をしているのでは?


良く良く観察すれば、叱られた後の呆れながらも微笑む表情にソフィア殿下の行動に納得し、


迎えた結婚式では、ソフィア殿下の希望でなぜか裏道の1度馬車を止める事になった。


不思議に思いながらも幸せに笑い、空を見上げた事で宮に居る人物に思い当たり、


ここに彼らが居るのか。


釣られ上を向きかけたがぐっと堪え素知らぬふりをする。


街を馬車で走り、街民達から祝福を受け教会で誓いを立てた。


これから生きる限りソフィア殿下の横に立ち支え続ける。


「よろしければ、ソフィと呼んでください」


夫婦初めての夜に手を繋ぎながら恥ずかしそうに俯きながらの言葉に、


「では、俺もライと呼んでください」


指の間にお互いの指を通し握り合いつげる。


敬語は尊敬の証で恥した方が良いけれど、それはまたいつか。


そう額を合わせ、囁き合った。


その後、諸外国との緊密な関係を保ちつつ、ソフィが出産の為に政務ができない時は自分が表に立ち支え、

1年先に母となったオリビア嬢が早期復帰で政務に手伝ってくれ、


語学に長けた令嬢が乳母となり、息子と娘を育てるの手伝ってくれ、


末の娘が生まれ、歩き出し、喋り出す頃には


「嫁に出したくない」


あまりの愛おしさと可愛さに呟くと


「どこぞの誰かと同じことを言わないでください」


オリビア嬢の冷たい一言と、懐かしそうに微笑むソフィに誰の事か察してしまい、


「その気持ち、痛いほど良くわかる」


チラリと宮に向けて視線を送った。


早々に息子に王位を渡し、残った人生をソフィと街でデートなどをし楽しみ、娘が嫁に行く度にソフィに抱き締め慰められ、


息子達には呆れられたが、あれは羨ましいのだと息子達の嫁に告げ口をしてやった。


その後、立て続けに孫が生まれたので密かに良い仕事をしたと思っている。


幸せの時間は早く進み、


時折、どこかへ行くと瞼を腫らし帰ってくるソフィを何も言わず力一杯抱き締める。


もっと遅くても良いのにと思いながら動かなくなる体。


先逝く事が寂しくもあり、ポロポロ涙を流すソフィの頬に手を当て


「俺を好きになってくれてありがとう。愛してるよ」


しゃがれた声で初めて愛の言葉を告げ、泣きながら嬉しそうに笑い


「私もよ。ライ大好きよ。ずっと愛してるわ」


同じ様に頬を撫ぜてくれる感覚が心地良く


目を閉じ生涯を終えた。


大変お待たせいたしました。


先が見えない未来は起こらない不安や恐れが想像しやすい事を書きたかったのですが、

なんだが情けない性格になったきがしてなりません。


恋愛て書くのが難しですね。


次を書くとしたら主人公編ですが迷い中です。



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