10月1日
今日はオーストリアで世界初の郵便はがきが発行された日。
また日本の自治体改編が盛んにおこなわれている日。
普通にお月見である。
開催場所はやっぱりいつものラーメン屋。
商店街でピックアップされていた日本酒を持って、雪女と暖簾をくぐったさきのその場所はコーヒーの香りで満ち溢れていた。
ラーメン屋に入ったのに喫茶店かと思いはしたが、銀髪ロリババアの女将さんはちゃんとラーメンの麺を茹でていた。
「こんばんは」
「おにー来たよー」
彼女の声に返事をしたのはロリババアではなくて桃色の髪の鬼。
「おっ雪女久しぶりじゃん」
「おお、桃ちゃんおっすおっす。夏祭りここでバイトしてたでしょ」
「ちょっと逆らえなくてね」
なんやかんやと話を続ける雪と桃を横目にして、女将さんに声を掛けた。
「おお氷上、丁度ラーメン出来たぞ」
指し出されたのは真っ黒いラーメン。
とやっまのイカ墨ラーメンと違う点は匂いだろう。
すっごく珈琲の匂いがする。
ここを喫茶店のように惑わしている原因はこれだろう。
「氷上、一口頂戴」
そう右隣の席に来た雪女から言われたので、女将さんから小皿を貰い取り分けた。
彼女が吐息を吹きかければ大体の物はすぐ冷めるだろう。
「うげにっがもういらない」
そう言った雪女は小皿の残りの麺を、丼に戻した。
改めて口にしようとした時、左側から箸が伸びてきて麺を掴んだ。桃色の鬼である。
「まずい」
そう言った彼女はロリババアにしょうゆのラーメンを頼んでいた。
今日は醬油ラーメンと抹茶アイスが半額なのだそうだ。
カウンターの前に掲げられている木札がそのことを指示していた。
右隣の雪女は山盛りの抹茶アイスに舌鼓を打っている。
いいな一口欲しい。
じゃあこれは?
「どうだ氷上不味いだろ」
業務を終了させカウンターを挟んで目の前に来たロリババアの顔は、あからさまにしてやったりと言った顔になっている。
「何なんですこれは?」
「商店街の方針でな、その日のイベントを取り入れねばならぬ」
彼女は続けて「挑戦しなくても収支が傾くなら、出来る限りのイベントを取り入れて黒字に近づけた赤字は価値がある。そうとここの人間たちはうたっておる」
だからいつも活気にあふれているのかこの商店街は。
「だから今日は日本酒と珈琲、醤油と緑茶が安い」
お月見はどうした。
「ちゃんと団子はつくっておるぞ?」
そうじゃないんだけれどまあいいや。
ちゃんと食事を済ました後、ラーメン屋の2階でお月見を楽しんだ。




