第9話 ブルボア討伐ッ!
お気に入り登録してくださった方が100人を超えました。
ほんっとうに、ありがとうございます~。
……と言いつつ、今回は短いです、ごめんなさい~。
ボスモンスターは数種類存在しますが、今回攻略する『ブル・ボア』は『レベル10・エリアボス』に分類されます。
通常のモンスターのレベルが同レベルのPC1人と同じ強さであることを表しているのに対して、ボスモンスターのレベルは同レベルのPC6人で結成した『パーティー』と同じ強さであることを表していると言われています。
これはボスモンスターが単純にPC6人分の強さだと言っているわけではありません。
『パーティー』というのはPCが2~6人集まって作るチームを指します。
その内訳は『前衛役(防御)、前衛役(攻撃)、回復役、魔法攻撃援護役』などと役割分担されており、互いに連携することで単純にPC数人が集まる以上の力を発揮します。
バランスの取れた6人パーティーは、倍の人数である同レベルの戦士12人に勝てると言われるほどです。
実際にはある程度以上のレベルにならないとそこまでの差は出ないそうですが、それほどパーティーの戦力は個人に比べて高く、それと同等とされるボスモンスターも強いということです。
さて、ボスモンスターというのがどれほど強いのかを教えてもらい、その上で14レベルが2人いるとはいえたった3人で行う今回の作戦は……囮作戦になります。
囮は誰でしょう? はい、僕です!
というわけで、現在絶賛囮中だったりします!
「うわわわわ~~~~~~~~っ!」
首都ユティの周囲に広がる大草原のど真ん中、土砂と土煙を巻き上げて爆走するのは体高3m、全長3mの巨大な猪『ブル・ボア』です。
赤茶色の体毛は針のように堅く、潰れた鼻づらはハンマーのように強固で、2m近い長さの2本の平べったい牙でブルドーザーのように地面を掘り返しながら突き進む狂暴なモンスターなんです。
しかもその巨体ながら脅威の脚力を持っており、ほぼ全力で走っている僕の後ろほんの2~3mを付かず離れずついきています。
全力で走れればもう少し余裕を持てそうでもあるんですが、草原といってもこの周辺は地形の起伏が大きく時折現れる灌木を避ける必要もあるのでデッドヒートを繰り広げることになってしまっています……まさに生死を賭けた鬼ごっこ状態なわけですね。
起伏に足を取られないように進むルートを選別し、それでも避けきれない窪みを跳び越え、足止めになるかと上を転がるようにして大岩を乗り越え、灌木のわずかな隙間に飛び込んで潜り抜けるもののその先が茨の壁になっていたので側転で勢いを付け後方宙返りで跳び越えて僕は進みます。
起伏など気にもせずに僕の背中を追い、窪みなど無いかのように一歩で越え、大岩を体当たりで粉砕し、灌木も茨も関係なく直進するのがブル・ボアです。
「ちょっ、ずる過ぎませんか~~~~~!?」
うん、もしかしてちょっと安請け合いしすぎましたか? などと心が折れそうになったとき、やっと目的地が見えてきました。
そこは直径20m、高さ5mほどの円型の巨石で、上には二人の人影……笑顔でディアナさんとリンさんが手を振っています。
よしっ、あと一息です!
残り50m、もはや余裕もなく全力疾走でグングンと岩へ向かいながらも、後ろからブル・ボアの発する爆音のような足音が聞こえることを確認、スピードを緩めることなく巨石にジャンプしつつ『アクションワード』を叫び、特技を発動します。
「六花よっ、我を導きたまえっ!」
その瞬間、僕の周囲を六角形に六つの羽を持つ白い雪の結晶が舞い散り、壁のように切り立った巨石の側面に着地した靴底と岩肌が凍結、一体化して固定されます。
巨石の側面には足掛かりになりそうな場所がありませんが、僕はそのまま巨石を垂直に駆けあがって行き、その壁面に白い結晶の足跡を残しました。
そして頂上の縁を足掛かりにサマーソルトの要領で後方に跳び上がった時、ブル・ボアが巨石に激突、轟音と地響きが当たりに響きわたります!
「ナイスッ!」
「ここからが勝負よっ!」
跳び上がった空から、巨石の反対側の上で待機していたディアナさんとリンさんが歓声を上げているのが見えました。
よしっ、やりました! ブル・ボアは巨石を粉砕しつつ中央部まで達したところで衝撃に耐えきれず気絶、ズシンっ!! と音を立ててひっくり返りました。
目がグルグルと渦巻き、その頭の上に星が回る気絶エフェクトが見て取れます。
すかさずディアナさんから攻撃力増強の魔法をもらったリンさんが、巨石から飛び降りる勢いのままに両手で持った長剣をブル・ボアの牙へと振り下ろし、一撃で2本を両断しました。
そこからは着地した僕を加え、なんと30秒も続いた気絶タイムの間にブルボアの体力をレッドゾーンまで減らすことに成功しました。
気絶から回復したブルボアですが、最大の武器である牙を失っていることもありその動きは生彩を欠いていました。
僕は常に動き回りながら一撃離脱で攻撃を加えます。
ディアナさんは援護と回復に比重を置きながらも余裕があれば攻撃魔法でダメージを積み重ねました。
リンさんは装備した盾でブル・ボアを完全に抑え込み、なおかつ隙を見ては片手に持ち直した長剣での攻撃を与えました。
戦闘開始からおよそ2分、僕らは『レベル10エリアボス ブル・ボア』の討伐に見事成功したのでした。
わーい、やりました~!




