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第3話 ディアナさんとリンさんですッ!

「ちょっと!?」


「えええっ!?」


 肩から飛び立った小鳥から二人の驚きの声が聞こえましたが、それは直ぐに離れて行きました。


 一瞬の上昇はすぐに終わり、落下の勢いが風を切る音と成り聞こえてきます。


 目標はしばし離れて立っている高さ15mほどの木の天辺、狙い過たず達した瞬間その

幹に脚で触れ力を込めて蹴り離し、落下の勢いを横向きに修正しました。


 眼下ではNPCの武器屋に入っていくプレイヤーたちがいました、距離が離れていることもあり『隠密』の効果が発揮されているのでしょう、僕に気付いている人はいないようです……うん、よかったよかった。


 さて、次の目標は三階建ての石造りの建物になります。


 宙返りで体勢を整え、屋上に足から着地、前回り受け身で衝撃を逃がし回転力で起き上がり勢いを殺さずに走り出すとあっというまに屋上の端に着いたので、すぐに縁に脚を掛け再び空に跳び出します。


 今度はなにやら揉めている男女が見えます……あ、男が殴られて吹っ飛ばされました。


 喧嘩を眺めていたギャラリーがどっと沸いています、なにがあったんでしょうか?


 っと、ここまでくればもう一息、テラスとの中間地点にある二階建ての建物の屋根を先ほどと同じ要領で駆け抜け今度は若干勢いを殺すつもりで5mほど先のテラスへと跳び移ります。


「おっまたせしましたっとっとっと!」


 むう、テラスの手すりに着地をばっちり決めるつもりだったんですが、止まり切れず体が前に流れたのでやむなくもう一度跳び上がり、二人のいるテーブルを飛び越えての着地です。


「はー、やっぱり気持ちいいです」


 思わず声が出てしまいました。


 だって、ホントに気持ちいいんですよ?


 って、あれ? お二人とも目を丸くしてどうしました?


  ◇


「もう、あんまりビックリさせないでちょうだい」


 ちょっと怒ったような困ったような顔で言うディアナさん。


「……すみませんでした……」


 どうやら心から僕を心配してくれての言葉らしいので、平謝りするしかありません。


 あの後、固まっていた二人の内、いち早く復活したのはリンさんでした。


「おおー! すごいすごい! こんなの初めて見たわ!!」


 手を叩いて惜しみない賛辞を送ってくれるリンさんにちょっと気分が良くなっていた僕は、ディアナさんの肩が小刻みに震えていることに気付きませんでした。


「キミッ! なんて危ないことをするの! リンネも無責任に調子に乗らせるような事を言わないで!」


 それから5分、たっぷりとお説教をくらっている僕がここにいます……。


「ちょっと、聞いているの?」


「はい、すみません……」


 いやホントなんとかしてください……ちらりと早々に解放されたリンさんを見ると……ちょっと、笑ってないで助けて下さいって!


 え、手を振って首振って無理無理? 無理じゃなくて助けてください、ホントお願いします!


 もう、しょうがないなぁ、じゃないですって、早く頼みます!


「キミッ! よそ見していないでちゃんと聞きなさい!」


「はいっ、すみません!」


 ああああああっ、なんとかしてください!


「くっくっくっ、その辺にしといてあげなよ、ディアナ。この子も十分反省してるって」


 笑いを堪えつつ間に入ってくれたリンさんがウィンクをくれましたが、正直助けてくれることのほうが100倍嬉しいです、ふうっ。


 って、この子? あの、年上の方だとは思いますがそう何歳も変わらないんじゃないでしょうか?


「そうは言っても、こういうことをちゃんと注意してあげることがこの子の為になるのよ」


 おおお、ディアナさんまでこの子ですか……そういえば小学校の時の先生にこんな風に怒られていたような気もします……えっと、ちょっと泣きそうです。


「まあまあ、あんまり怒ってると眉間のシワが取れなくなるぞ」


「ちょっと! それやめてって言ってるでしょ!」


 リンさんの言葉にとっさに眉間に指をやりなぞるディアナさん。


 いや、別にシワなんてないと思いますけど。


「ほらほら、この子もシワシワだって思って見てるぞ」


「だからやめてってば! キミもそんなに見ないの!」


 あ、はいすみません、もはや条件反射で謝り横を向くと目があったリンさんが再び僕にウィンクをした。


 その様子が実に楽しそうで、いつもこうやって二人でふざけ合ってるんだろうなと想像してしまいました、くすくすくすっ。


「キミまで笑わなくてもいいでしょ……もうっ、わかったわよ」


 むくれてそっぽ向くディアナさん、なんだか可愛いですね。


 リンネさんがああやってからかう気持ちもわかるかもしれません。


 うんまあ、僕はその後のことを考えるとからかうなんてトンデモナイ、と思っちゃいますが……あ、想像していたら尻尾が巻いて股の間に入ってきました……。


「まあまあ、それよりもアタシたちまだ自己紹介もしてないんだからさ。まずは名乗るべきじゃない?」


 そうそう、自己紹介もしていないのです……お二人の会話で彼女たちの名前はもう知っていますがこちらはまだなんです……いつまでもこの子この子言われていると心が折れそうですし……。


「それでは僕から先に失礼します。 僕はユーノ、えっと狼の獣人(ビースト)で盗賊です」


 友人から教わったオンライゲーム内での定番の自己紹介をしてみます、うん、二人の様子を見るにどうやらこれで大丈夫だったようですね。


「それじゃ次はアタシね。アタシはリン、森人(エルフ)の『戦士』でそろそろ魔法戦士になる予定」


 言い終わったリンさんが肘でディアナさんをつつくと、不承不承という感じでディアナさんも自己紹介を始めてくれます。


「私はディアナ、人間(ヒューマン)の『陰陽師」よ、符術ふじゅつを専門にすると思うわ」


「よっろしく」と元気に言うリンさんと「よろしくね」とぶっきらぼうに、それでもちゃんと目を見て言ってくれるディアナさん。


「はい、リンさん、ディアナさん、よろしくお願いします」


 こうして僕はこれから長い付き合いになる二人の女性と知り合いになったのでした。


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