第4話 はじめてのフレンドッ!
『職種』を『技能』と書き間違えている場所が多数ありましたので修正しました。
お二人と名乗り合ってしばらく、僕は二人のテーブルにご一緒させてもらっています。
お勧めのハーブティはとても香り良くて、その複雑な香りは現実の喫茶店では再現不可能に思えるものでした。
ゆっくりとお茶とケーキを楽しんでいる目の前にいる女性二人は、近づいてみると素晴らしい美しい人達でした。
ゲーム内のキャラクターは皆、自動補正で美男美女方面に変更されてはおり、そういう意味ではひと目で目を引くほどの美形ではないのですが、振る舞いや雰囲気、姿勢などのそういった目に見えないものが二人を際だたせています。
ディアナさんは絹糸のような紫がかった黒髪を長く伸ばして、藤色の着物を着ています。
着物なのに太ももまでのスリットが入っているあたり、ゲームの衣装って感じです。
黒い瞳で切れ長の眼差しはやさしく、美人の女教師って感じの女性です。
リンさんはゆるやかなカーブを描くプラチナブロンドの髪を肩の当たりで切りそろえており、赤い皮鎧を着ています。
赤い皮鎧は上質な金属鎧が買えるようになるまでの繋ぎだそうです。
碧眼でアーモンド形の目は悪戯っぽい笑みを浮かべていて、男っぽいさっぱりとした言動がなおさら怪しい美しさを際立たせています。
話によると、なんでもお二人はβテスターらしいです。
βテストというのはゲームの不具合などを確認する為に開発終盤のゲームを一般の人たちを募集して数千人数万人という規模で試しに遊んでもらうことを言い、βテスターはそのお試し人の方々のことを言う、とやはりβテスターをしていた現実での友人に教えてもらっていました。
つまり今日開始したばかりのこのガーディアンズで、お二人はレベルこそ1レベルからの開始ですが、プレイヤーとしてはベテランなわけです。
せっかくなのでガーディアンズの色々なことをお聞きしたのですが、二人とも嫌な顔一つせずに話しを聞かせてくれました。
帝都周辺にはどんなエリアがあるのかという質問の答えなどは興味深く、なんだか色々楽しそうな場所があるみたいです。
またβテスト中は最大レベルが30だったこと、その時はディアナさんの職種が『黒魔法使い』でリンさんが『侍』だったことなども当時の体験を交えて楽しく話してくれました。
ちなみに僕の職種である『盗賊』はβテストでは同系統の技能『忍者』におされ不人気だったので、正式オープンに合わせて能力が上昇したらしいです。
「さっきの身のこなしも、もしかして新しい盗賊固有特技なの?」
「さっきのというと、あそこから此処まで来た奴ですか?」
先ほど登っていた木を指さすとリンさんが頷きました。
「そうそう、βテスト中に忍者の奴らも似たような動きをしてたけどユーノはまだ1レベルなんでしょ? それであんなことが出来るなんて聞いたことないわ」
「そうね、私もそれは不思議だわ。あんなことが出来そうな特技はもっと高レベルにならないと覚えないはずよ?」
ほら、と指さした先では忍者らしいキャラクターが二階から飛び降りて着地失敗、尻もちをついていました。
どうやらゲーム世界で現実では出来ないことをしようという人は多いらしく、建物から建物に跳び移るなどして遊んでいる人たちを僕も何人か見かけていました。
考えてみると確かに彼らの動きはぎこちなかったように思えます。
「んー、そう言われても……普通に良さそうなのを選んだだけですよ?」
「そうすると……」
眉間にシワを寄せて何事か考えながら聞いてくるディアナさん。
さきほどから何回か見ているのでおそらくは癖なんでしょう、そしてその癖をリンさんにからかわれているんですね、うんうん。
「それでどんなキャラクター構成なのさ?」
「えっと……」
重ねてリンさんに問われ、僕は登録しておいた指で三角形を描くアクションでステータスウィンドウを呼びだしました。
そこには僕のキャラクターである『ユーノ』のレベルとHPとMP、『種族:獣人』『職種:盗賊』と続き、中ほどに『才能:~』『特技:~』と取得した才能と特技が書かれています。
隠すようなことでもありませんし、僕は説明書や発売前の特集本で読んだ情報を思い出しながらそれを読み上げていきました。
◇
ガーディアンズのキャラクターは『種族』と『職種』を選び『才能』と『特技』を取得することで作成します。
まず『種族』は4種。
平均的な能力値を持ち、特徴がないことが特徴の『人間』。
容姿はいわゆる普通の人間です。
知力と敏捷に優れ筋力に劣り、風属性と水属性との相性が良く火属性との相性が悪い『森人』。
容姿は耳が木の葉のように尖っており、痩せ形の体型が多く美形も多いです。
筋力と器用に優れ敏捷に劣り、火属性と地属性との相性が良く風属性との相性が悪い『鉄人』。
容姿は平均身長が120~150cm程度と低めで、筋肉質ながっしりとした体型をしています。
男性はヒゲを生やしていますが女性はヒゲなしです。
猫、犬、鳥、蛇など様々なバリエーションがあり能力値や相性など様々ですが、総じて耐久力に優れ知力に劣る『獣人』。
容姿は耳と尻尾、背中に羽、下半身が蛇や魚などなど多種多様ですが基本的に人間型です。
そして『職種』は戦闘職3種、技能職3種、魔法職3種の合計9種。
戦闘職は主に武器を使った白兵戦や射撃攻撃を行う職種です。
あらゆる武器を使いこなし防御力に優れ成長により様々な役割がこなせる『戦士』、攻撃力に優れ成長によりさらに攻撃に特化していく『侍』、投げや間接技などの特殊な攻撃方法を持ち回避力に優れる『拳士』。
技能職は索敵や追跡、罠や鍵などの取り扱いに長けており戦闘職に準じる攻撃能力をもつ職種です。
索敵や追跡、罠や鍵の取り扱いなどの基本能力に優れる『盗賊』、戦闘に優れ忍術という魔法のような特技が使える『忍者』、演奏や歌唱により魔導詩という特技が使える『吟遊詩人』。
魔法職はさまざまな魔法を使いこなし、さまざまな知識を持っている職種です。
多くの攻撃魔法に優れ解錠などの便利魔法も使う『黒魔法使い』、強力な回復魔法と援護魔法を使いある程度の白兵戦もこなせる『白魔法使い』、もっとも多種多様な魔法を使うが攻撃は黒魔法使いに回復は白魔法使いに及ばない『陰陽師』。
以上の種族と職種を選ぶことにより基本能力値が設定されます。
そして最後に『才能』と『特技』を選んでキャラクター作成は終了でした。
『才能』は特技などの効果を上昇させるもので、『種族才能』と『職種才能』があって種族、職種およびレベルで選べる種類が変わり、初期キャラクターが選べる才能は2個です。
僕の『才能』は『種族才能』から1つ、『狼の脚』効果は隠密・移動・跳躍。
更に『職種才能』から1つ、『狼』効果は物理攻撃力・軽業・隠密。
最後に『特技』はキャラクターの特定の行動をシステム的にサポートしてくれるもので、初期キャラクターは5個取得できます。
僕の『特技』は、双刃での攻撃をサポートする『双刃』、バック転や側転などでの回避行動が可能になり落下ダメージを減少する『軽業』、移動力を上昇させる『移動』、ジャンプ力を上昇させる『跳躍』、足音を消したり身を隠すことが出来る『隠密』、以上になります。
◇
<キャラクターファイル:ユーノ>
名前:ユーノ
種族:狼の獣人 弱点属性:銀
職種:盗賊 <Lv.1>
才能:狼の脚<狼の獣人>、狼<盗賊>
特技:双刃<Lv.1>、軽業<Lv.1>、移動力<Lv.1>、跳躍<Lv.1>、隠密<Lv.1>
◇
僕がキャラクター構成を伝えると、二人は楽しげに分析を始めました。
「回避の代わりに軽業を取っていたり、移動力の他に跳躍を持ってるのはちょっと面白いけどスピードタイプね」
「ええ、『狼の脚』は移動系才能で『狼』もスピード型戦士の才能だから……ふふっ、もしかして狼の獣人だから盗賊の才能を『狼』にしたのかしら?」
このゲーム、才能や特技などその種類は初期に選べるものだけでも100種類を軽く超えているので、僕は自分が取れるものしか覚えていないのですが……ディアナさんもリンさんも良く知ってますねえ。
盗賊の才能はほかにも危険感知に優れる『兎』やNPCからの情報収集や聞き耳に優れる『鼠』、毒物や隠し武器の扱いに優れる『蛇』や魅了という対異性用の変わった特技をもつ『猫』、他にも戦闘に特化した『刃』などなどいろいろあったのですが、動物の名前を冠した才能は一種しか選べなかったので、やはり『狼』を選ぶことにしたのでした。
名前って大事ですよね。
「あーはい、それもあります……一応雑誌とかで定番の構成も見たんですけど僕のやりたい感じではなかったので……あんまり強くはないですよね?」
ゲーマーの友人にはかなり酷評されたので良い評価は聞けないだろうと思っていたのですが、ディアナさんはくすりと笑って「そんなこと気にしちゃダメよ?」と僕の頭を撫でてくれました。
「強い弱いで言えば確かに大勢いる戦闘特化の構成よりは弱いと思うけど、その代わりさっきみたいに他の人には出来ないことが出来るじゃない」
「そうそう、ちょっと趣味に走った構成だけど、むしろそのほうが楽しいって……ユーノのキャラクター構成を聞いていると、なるほどコイツはさっきみたいのがやりたくてGOを始めたんだな、って思うもの」
リンさんはそう言って僕の首に腕を回し、髪をがしがしとかき回しました。
うーん、相変わらず子供扱いなんですが……それがなんだか楽しくなってきました。
「それに~、やっぱり今の特技とかじゃ誰でもがアレを出来るとは思えないし、さっきのはユーノのプレイヤースキルでしょ? すごいじゃない!」
「そうね、私も同意見よ。 GOは戦いだけを楽しむゲームじゃないもの、効率がどうこう、強キャラじゃなきゃ意味がないとかなんとか、そんなこと言う人もいるだろうけど気にすることないわ」
言葉の端々から二人はかなりこのゲームに詳しい上級者なんだと判るんですが、それを偉ぶらない余裕と優しさがあり、一緒にこのゲームを楽しみたいという純粋な気持ちが伝わってきます。
良い人たちと知り合えたなぁとしみじみ思います。
「はい、ありがとうございます! ……なんというかガーディアンズを初めてほんとに良かったって思います」
ふと気付くと付け根が痛くなるほど尻尾を振っています、ほんとにこの尻尾は気持ちに忠実ですね。
「それはアタシも同感ね、この5感に訴えてくるリアリティ! 美味しいものも食べ放題!」
「リンはずっとそれを言ってるわね……まあ私も気持はわかるけど、私は何と言ってもビジュアル関係とかだけじゃなくゲームバランスなんかにも気を配っている運営の体制が良いと思うわ」
「あ、そういうのもあるんですけど、それよりも僕は……」
何? とこちらを見るディアナさんとリンさん。
人付き合いが苦手な僕は、ゲームの中でもあまり初対面の人と友好的に話したいとは思っていませんでした。
だから数少ない友人がガーディアンズのβテスターをしているんだと聞いて、一緒にやろうと誘ってくれた時にも、彼のβテスト時の仲間と一緒になることを厭い、結局別行動することにしたんです。
だけど、偶然知り合った彼女たちとの会話はとても楽しくて、今回きりにしたくは無かったから、それを伝えたいと思いました。
現実でもあまりこういうことを言った覚えはないんですが、でもここで言わなければ二度と会えない可能性だってあるんです、だから……。
「あの、ディアナさんとリンさんに出会えたから、だからこのゲームをやって良かったなって……思うんです。 なんか……始めて会ってこんなに楽しかったことってないから……お嫌でなければこれからも……一緒に遊んでもらえませんか?」
つっかえつっかえ、それでもなんとか意を決して言った僕の言葉を聞いて、ディアナさんもリンさんも驚いたような顔をしていました。
もしかしたらお二人からしたら、たまたま初心者と知り合ったのでちょっと話していただけで、こんなことを言われると迷惑だったんでしょうか?
そう考えると、なんだかそれが正解な気がしてきてとても恥ずかしくなった僕は「ごめんなさい!」と言って席を離れようと立ち上がりました。
「あ、待って!」
「行っちゃダメよ!」
と、その僕の両腕をディアナさんとリンさんが素早い動きで捕まえました。
そして「あ? え?」と混乱する僕に笑顔でこう言ってくれました。
「ありがとう、アタシもユーノに会えて良かったよ。これからもよろしくな」
「ありがとう、ユーノくん。 私ともこれから一緒に遊びましょうね」
その笑顔がとても眩しくて、言葉が嬉しくて、僕はさっきとはまた違った恥ずかしさで真っ赤になってしまいました。
その後、用事でどうしても出なければならないディアナさんとリンさんがログアウトするまで1時間以上僕達は話を続け、フレンド登録をして別れたのでした。




