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第16話 潜入ッ、強襲ッ、作戦開始ッ!

 帝都から南に馬車で15分、鬱蒼とした森の中に打ち捨てられた砦跡がありました。どうやらそこが目的地のようで、スピードを落とした馬車から飛び降りて隠れていると、正門が開かれ馬車が招き入れられるのが確認できました。


 再び閉じられる前に砦の奥から明かりが漏れていましたし、砦の正面門の上にある見張り台にも二人ほど人影が見て取れます。どうやらここで間違いないようです。確信した僕はすでに帝都を出発している皆に場所を報告、到着を待つ事にしました。


 リアル友人でもあるカズマからのフレンドチャットが来たのは、一人暗闇に潜み皆がくるのを待っていた時でした。


「まあ、そういう訳でオレは行けそうにないわ」

「いやいや、第一声でそれではなんのことやらわかりません」


 カズマはなんというかまあマイペースな奴でして、完全に自分のルール、自分のペースで行動をするのですよね、ふう……せめて挨拶くらいしましょうよ。


「えー、分かるだろ?」

「まあ、クエストの誘いのことなのは理解できますが……カズマは言葉が足りなさすぎです」


 これから行う『レアクエスト:誘拐事件 第3話:邪神教団襲撃』は3パーティーが参加出来るのですが、僕のパーティーはディアナさんとリンさん、そしてタマさんの4人しかおらず2人分の枠が開いています。せっかく珍しいクエストなので時間が合えば一緒にどうかと連絡しておいたのですが、どうやら都合が悪いようですね。


「そうそう、なっかなか面白そうだから行きたかったんだけど、今ウチのギルドでいろいろ揉め事があってさ……ちょっと動けないんだよ」

「揉め事とは穏やかではありませんね」

「なんつーか音楽性の違い? そんな感じでさあ……メンドクサイけど一応サブマスだから放ってもおけないジャン? つーことで、また今度頼むよ」


 あちらで両手を合わせて拝んでいる様子が見て取れるようなカズマ。なんだかんだで面倒見の良い奴ですから、それを放ってこいとは言えません。


「残念ですが、そういうことなら仕方ありません」


 カズヤと『GO(ジオ)』で一緒に遊んだことがなかったので、丁度良い機会だと思ったのですが……そうですね……それなら逆に。


「そうですね、ならばもし僕に手伝えることがあるなら遠慮なく言ってください。僕がそちらに顔を出すのも悪くありません」


 正直に言ってやっぱり初対面の人とご一緒するのは苦手です。それなのにこんなことを言ったのは、ここ数日一緒になった方々が皆良い人ばかりだったからでしょうか。ディアナさんとリンさんに紹介された人たちと楽しめたように、カズヤの仲間ならきっと僕も仲良くなれるだろうと思ったからでした。


「へえ……ユーノは人見知りモードを卒業か?」

「そういうわけではありませんが……まあたまには……ね?」

「ふうん? そっかそっか、んじゃいざって時には頼むわ。アテにしてるぜ親友?」

「ええ、遠慮なく言ってください」


 そう言って互いにくすりと笑い、僕らはチャットを切りました。





「さて、それじゃあ皆……用意は良いわね?」


 夜空に輝く月の下、3パーティー全員が道から外れた藪の中で車座になってディアナさんの言葉に耳を傾けています。


ギルド『Tea Party』から青騎士さん、アリスさん、ラビさんに女侍さん、黒魔法使いさん、忍者さんの6名。ギルド『赤蜻蛉』からイサミさん、ジェイドさんに戦士さん、侍さん、盗賊さん、白魔法使いさんの6名。そして僕とリンさん、ディアナさん、タマさんのパーティーとなります。


「まず見張りの排除をユーノくんとラビちゃんお願いね?」


 ディアナさんの呼びかけに僕とラビちゃんが頷きます。実は見張りへの対処はラビちゃん頼みなんですよね。


「よろしくおねがいしますね、頼りにしています」

「……任せて」


 邪魔にならないように小声で声をかけると、僅かに微笑みVサインをしてくれました。僕の胸くらいまでしかない小柄な少女なのに気負いのないその様子を見ていると不思議に安心感があります、僕もしっかりしないといけませんね。


「解錠はジェイドが魔法でお願いね」

「リンの為になるのならば異論ありません」

「そこはせめて皆の為にしとけ!」


 ……ジェイドさんは相変わらずのようです、イサミさんも大変ですね。って、ジェイドさんにじっと見つめられてリンさんが無表情に……。


「敷地内に入ったらTea Partyは1階を、赤蜻蛉は2階を、私たちは地下を捜索。攫われた人たちを確保したパーティーは彼女たちの安全確保を、なお敵は発見次第攻撃して構いません。質問は?」

「問題ないよ」

「ああ、こっちもOKだぜ」


 それぞれの仲間とともに青騎士さんとイサムさんがディアナさんに了承の意を返します。それをうけて頷いたディアナさんの「では、作戦開始します」の合図でそれぞれが配置へと動く中、僕はラビちゃんと共に砦に向けて走り始めました。



 砦は1辺が30~30m程の壁に覆われた二階建ての建築物で、ずいぶん前に打ち捨てられたものなのか木造なので破損も見られます。しかし、ところどころ金属での補強がされていることもあり、まだまだ頑健さを保ってはいるようです。


 僕とラビさんは『隠密』を発動し、砦を囲む高さ5mほどの壁に張り付くようにして登っています。破損が多い木で出来た壁は手掛かりになるところも多く登ること自体はたいした労力ではありません。むしろ四方の壁の中央に置かれた見張り台から見られないように注意することの方が気を使います。


 壁の上部に手をかけ、二人で上を覗くと……壁の上は1mほどの細い通路状になっていました。床面はやはり古びた木製でところどころに穴もあいています、おそらく手入れなどほとんどしていないのでしょう。


「……ユーノ」

「はい」

 

 目を合わせ頷きあった僕らは壁の上部を乗り越えると音もたてずに床面に着地、張り付くように伏せて周囲を警戒します。……どうやら気付かれはしなかったようですね。もう一度頷きあうと正門上の見張り台へと向かいます。


 僕が地を這うように低い姿勢で走るのに対し、ラビちゃんはその身を黒い影に変化させ真直ぐに走っています。真横にいるからこそその姿がわずかながらも僕には判別できますが、ほんの数メートル離れるだけで月明かり程度ではそこに誰かがいることもわからないでしょう。


 ほんの数秒で見張り台に辿り着いた僕らは、止まることなく見張り台へと跳び込みます。


 見張り台は四方を壁で囲まれており出入りは下へ向かう階段でしか出来ないのですが、砦周囲の見張りをする為に当然外側に向かって大きな窓が口を開けています。僕達がそこから中へ入ると武装した二人の男が驚きに目を見開き、胸元に下げた警笛に手を伸ばしました。


「させません!」


 ひと足早く中に入った僕は双刃を抜き打ちざま必殺技(アタックアーツ)『トルネード』を発動、エーテル光で目立つので戦闘起動していない為に刃が短いので、いつもより深く踏み込み大きく横一線に振りきった刃で切り払われた二人は『仰け反り』の効果を受けて動きが止まりました。そして僕の稼いだわずかな時間の間にラビちゃんは忍法を使う為の呪文を唱え印を切り終わりました。


「……忍法、金縛りの術」


 ラビちゃんが顔の前で人差し指だけを立てて組んだ両手を前に突きだすと、今にも仰け反りから回復しようとしていた二人の男がその動きを止めました。


『忍法・金縛りの術』は忍者が取得できる特技『忍法』で使える必殺技(アタックアーツ)で、範囲内にいる自分よりレベルの低い敵を最大で30秒間動けなくすることができます。弱点として術発動中は自分も動けない、PC相手には成功率が著しく落ちる、などがあるのですが、複数の敵を巻き込めるので雑魚戦においてその利用価値は大きいものがあります。


さて、それじゃ時間もないことですし……。僕は動けない男二人の喉元に双刃の左右の刃をそれぞれ押し当てます。


「降伏……してくださいますね?」


 白く血の気の引いた顔の2人は僕の出した『捕虜コマンド』を素直に受け入れてくれました。よしよし、まずは第一関門突破です!


思いのほか短く……いやあ、まあ、これからが本番ですので。

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