第11話 召喚獣とPKッ!
戦闘が絡むと短くなる……ような気がします。
3日目、もはや恒例になった眩暈に耐え、僕は帝城シルワの東に広がる森へとやってきました。
昨日の別れ際、リンさんの「夜食に牡丹鍋が食べた~い!」という我ま……ご意見により、今日の夜11時30分に集合することになった僕は、昼間のうちにリアルの友人と会い、早めの夕食を済ませてからログインすることにしました。
現在時刻は午後7時過ぎですが、今日はまだ大陸では『昼の日』なので空の天辺で太陽が輝いています。
しゃぎゃーしゃぎゃー
「う……ん、良い天気です」
甘いHPポーションの空ビンを手に、強い風に靡く髪を抑えて眼下に続く緑の海を眺めていると、ここがゲームの中だということを忘れてしまいそうです。
ぐるるるるるるるるるっ
馬鹿となんとかは高い所が好きと言いますが……もうそれでも良いかなぁってくらい気持ち良いですね……もっとも現状は難点もあるわけですが……。
くけけけけけけけー
「…………………………はぁ」
こけーこっこっこっこっこっ
ため息を吐き僕の立っている巨木の根元辺りに視線を向けると、先ほどから聞こえてくる騒音の元凶、4匹の獣たちが口ぐちに威嚇の叫び声を上げ、僕が降りてくるのを待っています。
体高1m50cmほどの小型恐竜『Lv14・ファイアーラプトル:P』、毛皮の代わりに葉っぱを纏った狼『Lv12・リーフウルフ:P』、猿面山羊体の魔法生物『Lv12・エイプキメラ:P』、麻痺毒を持つ体高1mもある鶏「Lv11・パララチキン:P」。
4匹とも僕よりもレベルが高いモンスターなので、襲われた時に一番近くにあった20mほど巨木に登って逃げたんですが……想定外なことがありました。
モンスターを注視するとレベルと名前がその頭上にポップアップするのですが、名前の後ろに『P』の文字が付いています。
これは『魔法職』が取得できる特技『召喚』で呼びだしたモンスターだということを表していまして、つまり僕を襲ってきたのはPCだということです。
『GO』ではPK、つまりPCがPCを倒すことは禁止されていません。
ただしPKをしても相手のアイテムやお金を奪うことは出来ず、得られるのは同レベルのモンスターを倒すのと同じ経験点のみです。
もちろんPKでの経験点取得にも色々と条件がありますので、実質的なウマミはほとんどないと言って良いでしょう。
なのにも関わらずPKをする人は初日から居て、なぜなのか疑問だったのですが……まさか僕が標的にされるとは思っていませんでした……今聞いても答えてはくれませんよね?
まあ、それはともかく。
樹上で待機しながら周囲の気配を探っていたところ、やや離れた所に隠れている何かがいるらしいことは分かっています。
……問題なのは何処に居るのか、何人居るのかが分からないことでして、少々困ってしまっているんですが……待ち伏せで一撃を受けてしまいましたし、リンさんも言っていましたが『感知』を取得しておくべきなのかもしれません。
どうやら下にいるモンスター達は木に登ることが出来ないようで、今のところは僕が降りてくるのを待ちうけているだけなのですが、こうして睨みあってそろそろ15分……僕は一か所にいることを強いられて少々イライラしてきました。
我ながらビックリするほど我慢が足りないような気もしますが、まあ仕方ありませんよね?
敵はモンスター4匹に最低でも魔法使いが1人、まあ現在のTOPプレイヤーのレベルを考えると一人一匹のはずですし、パーティーを組んでPKをしている可能性も考えれば1対10は覚悟しないといけないでしょうか?
……うん、どうやっても勝てないので逃げの一手で行きましょう!
そこまで考え、僕はふっと空中に一歩踏み出し自由落下を始めました。
◇
「動いたぞっ!」
足を下に真直ぐ落ちておよそ10m、南側から声がしました……なるほどアソコに1人は居るわけですね。
僕は幹を手で押すようにして真下へ進んでいた勢いを斜めへ変え太い枝に着地、大きくたわんだ枝が戻る力を利用して隣の木へと飛び移ります。
一時的に地面から5mほどまで近づいた為、いち早く動いたファイアーラプトルの吐き出す小火球が僕を狙いました。
なんとか身を捻って直撃は避けましたがHPを一割近く持っていかれました……ってエイプキメラが魔力弾を撃ってきそうです!?
くっ、着地点なのでこれは避けれません!
歯を噛みしめ魔力弾の衝撃に耐えますが、バランスが崩れ枝から落ちそうです……いや、まだまだですよっ!
咄嗟に手を伸ばし枝を掴むことに成功した僕は体を振って上に持ち上げ、跳びかかってきたリーフウルフとパララチキンを危うく避けて再び枝上に戻れました。
うわ、今のでHPが7割をきりました……これはやっぱり逃げるしかありません……が、その前にっ!
隣の木に移った僕は太い枝を選んで次々に木を跳び移りつつ周囲を探ります……いましたっ!
視界の一点、藪に向かって黒い矢印が表示されました。
その場所に『隠密』で隠れている何者かを、距離が近づいたことで見つけることが出来たわけです。
ふふふふふっ、獣人の鋭敏な知覚力を舐めてはいけませんよっ!
藪に僕が近づいていくと、ガサリッ、と藪が揺れました……動揺してます動揺してます、ふふふふふっ。
このペースでいけばあと3歩というところで、取り出しておいたツインブレードを戦闘起動させ、必殺技を発動させると、僕の体が青い光に包まれ藪に向かって突進を開始しました!
「タイフーンダンスッ!」
「うわぁっ!?」
空中からの突進回転切りで藪を両断すると手応えありっ、HITです!
暗色のローブを着てエーテル水晶の嵌った魔杖を持ちピエロのような仮面をかぶった男性PCが攻撃を受けた場所を光らせながら浮き上がりました。
しかしそれでも僕の体は止まることなく、空中5連続攻撃『タイーフーンダンス』を繰り出し続けます。
空中に浮いたままの男性PCに対して、僕も空中に留まったまま双刀を風車のように回転させて二撃目三撃目四撃目をHIT、最後に体ごと縦回転して上から下へと切り下げ、男性PCを地面に叩きつけます。
「がはぁっ!?」
地面に叩きつけられた男性PCは苦しそうに息を詰めています……そうそう、攻撃される時よりも落下の衝撃のが苦しいんですよね?
こちらに必死に駆け寄ってくるリーフウルフに向かって男性PCを蹴り飛ばし足止めをしながらも同情してあげますよ、ふふふふふっ。
とはいえ、いくら魔法職相手でも流石に倒しきることはできません。
まあ一矢は報いたことですし……召喚獣たちが近づいてきているのは勿論、他の隠れていた人たちも動き始めたようです、ここは当初の予定通り、三十六計逃げるに如かずってことで……。
「PKの皆さん、残念ですがさようなら~」
僕は全力で走り、その場を後にしたのでした。
やれやれ、なんとかなりました~。




