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第五章 1話: 『吉良殿、絶対切腹しないで仕返ししてやる!』

【第五章】1話(五月・皐月)

タイトル:亀井の引っ越しホコリハッキングと、ユンビタAの半覚醒水攻め


1.小タイトル:公儀決定の引っ越しハッキングと、吉保公の裏インフラ

「なははは! 見たか小人、公儀も粋な計らいをするものよのう!」

能の興行からホクホク顔で帰還した吉良上野介は、お気に入りの「赤穂の塩細工(中身は偽物)」を愛おしそうに撫でながら、高笑いを響かせておりました。

その傍らで、吉良家のリアル金庫番である小県小人のおがた こびとのすけは、ソロバンをパチパチとセコセコ叩きながら首をすくめます。

「はぁ、お隣の亀井茲親様が、上野介様から直々に行儀見習い(ビジネスマナー)を学ぶために引っ越して来られるとは、まこと名誉な公儀決定にございます。……が、小人、小人、長雨の湿気対策や物資の滞りで、吉良家の今月の予算バジェットはすでに火の車にございますれば……」

「喧しいわ! 泥臭い田舎大名がワシの足元にひれ伏すのじゃ、これ以上の快感セキュリティがあろうか!」

上野介は極上のマウントに泥酔しておりましたが、この完璧すぎる大義名分を裏でビルドしたのが浅野内匠頭殿であるとは、夢にも思っていませんでした。

その頃、大老格・柳沢吉保公の屋敷の暗い一室では。

吉保公の最高財務責任者(金庫番)である小栗金満路おぐり かねみちが、一枚の書状を手にガタガタと震えておりました。書状には、彼が長年積み重ねてきた莫大な公金着服の裏帳簿データが、一言の狂いもなくハッキング(記載)されていたのです。

追伸には、流麗な文字で『このデータを吉保公に流されたくなければ、亀井邸の引っ越しを公儀命令として吉良の真横へ差配されたし。ソソソのソ』とだけ。

「おのれ、浅野家……我が財布のバックエンドを完全に握りおったか……」

小栗金満路は涙目を浮かべ、吉保公へ「奪い取った柳沢マネー」を進物として還流させつつ、公儀のハンコをソソソと偽造して、浅野側のスパイとして動くしかございませんでした。

2.小タイトル:来ない玄蕃の恐怖と、茨の道をカニ歩く一学

そんな巨大な裏インフラのハッキングなど露ほども知らぬ吉良邸では、防衛隊長・清水一学が不眠症の限界を迎えておりました。上野介が数日の予定で屋敷を空けた瞬間から、彼のノイローゼは加速していたのです。

「清水殿……今宵あたり、あの『蕎麦割烹・げんば』の時速百キロ仕込み槍爆走が、新手のアタックを仕掛けてくる予感がするぞ……」

宿直部屋で、極度の近眼である豪文字盲之助が虫眼鏡で夜空を覗き込み、一学も耳をピクピクとさせて一晩中、身構えていました。

しかし、夜風がヒュ〜と吹くだけで、今や幕府夜食御用商人となった俵星玄蕃の大八車は、一歩も走ってまいりません。不規則ランダムに出前ルートを変える玄蕃の焦らしハッキングに、一学は頭を抱えます。

「……来ない。なぜだ!? 奴ら、今度はどんな新手のアタックを仕掛けてくる気だ……!?」

来ないことが最大の精神アタックとなり、一学は一睡もできぬまま翌朝を迎えたのです。

フラフラの頭で一学が門前に出ると、そこには手書きのバグ地図を持った、やる気ゼロの「旗振り担当」の小者が立っておりました。あっちを向いて鼻をほじりながら、ぞんざいに赤旗をパタパタ……。

「……ん? えっ? ここかよ! おい、よく見るとここ、我が吉良邸の正門の目の前じゃねえか!! 通行止めとは何事だッ!」

一学が目を血走らせてキレ散らかすも、旗振り男は冷ややかに答えます。

「あー、無理っす。公儀決定の亀井様のご指示なんで。文句があるなら公儀に言ってください。お侍様方は、あっちの特設迂回ルートをソソソと歩いてください」

男が指差した先には、大人一人がカニ歩きでやっと通れるほどの、トゲの抜かれた「安全な茨の生垣ルート」が設置されておりました。吉良の武士たちは立派な大小の刀を胸にギュッと抱え、腰を落として「カニ歩き」で進むしかない情けないインフラです。

「おのれ、舐めるなッ! 叩き斬って――」と一学が刀を抜きかけた、その瞬間。

茨の影から、ズシン、ズシンと地響きを立てて、黒い土木半纏を羽織った巨漢土木部員が姿を現しました。まさにラグビーのオールブラックスのごとき大肉体。無言のまま一学の目の前に仁王立ちし、上空からドス黒い質量プレッシャー(威圧インフラ)をかけます。

(な、なんだこの大男は……! 人間か!?)

見上げるほどの巨躯を前にした瞬間、一学の全身に凄まじい戦慄が走りました。

ガチガチと両の膝が震えて完全に足がすくみ、背筋には巨大なムカデがゾワゾワと這い上がるような、おぞましい恐怖が駆け抜けます。丸腰の作業員を斬ればそれこそお家騒動、しかし肉体的なスペックでも完全に圧殺されている――一学の言葉がヒュッと喉の奥へ引っ込みました。

「う、ううう……ッ」

一学は悔しさと恐怖で、目にみるみる涙を溜め(涙目)、一言も発せぬまま(無言)、コソコソと刀から手を離すしかございませんでした。

3.小タイトル:サボり隠密の羊羹ハッキングと、大河原棟梁の一瞬の騒音

そこへ、工事人名簿を片手に、お馴染みの「ソソソの班長」がやってまいりました。

公式には吉良邸の警備助っ人ですが、その実、柳沢吉保公の密命を受けた「公儀お掃除御庭番(最高機密ハッカー)」。工事に紛れて謀反の陰口がないか検閲にきたのです。

そこへ、亀井家のスマートな家老がソソソと現れ、二人が直接対峙いたしました。

班長は名簿の「大河原 騒吉」や「水田 氾濫のはんらんのすけ」という異な名前を見逃さず、笑顔の裏から公儀のプレッシャーをかけます。

「亀井の家老殿、この名簿……どうも妙なバックエンドの匂いがいたしますねぇ、ソソソのソ。吉保公への不敬な企みではございませんでしょうな?」

しかし、亀井の家老もさるもの。班長の甘味セキュリティホールを100%ハッキング済みでした。

「おや、公儀の助っ人殿。そんなことより、これなるは吉保公の金庫番であらせられる小栗金満路殿を通じて拝領した、最上級の『黒蜜練り羊羹』にございます。お茶と一緒にいかがです?」

吉保公のルートを匂わされ、なおかつ見事な羊羹を目の前に出された班長は、一瞬でシステムがバグを起こしました。パクリと一口食べた瞬間、濃厚な甘みが脳内インフラを直撃いたします。

「おほぉ! 吉保公の御威光のごとき甘み、ソソソのソ! ……うむ、この名簿、異常なしでございます!」

そればかりか、毎日の警備に「だんだんバカバカしくてサボり心」が芽生えていた班長は、そのまま新築現場の縁台へソソソと腰掛け、大河原棟梁や例のオールブラックス級の巨漢部員たちの輪の中に混ざり込んでしまいました。

そこへ、裏で浅野側に完全に脅されている柳沢家の金庫番・小栗金満路までもが、のそのそと合流いたします。

一応は「新築工事の進捗状況を調査し、吉保公へ報告するため」という大真面目な公務を建前に現場へ赴いたのですが、それらはすべてお上の目を誤魔化すためのハッキング。本当の目的は、浅野土木部との極秘の裏ネゴシエーション(サボり)でございました。小栗金満路は建前の書類を懐に仕舞い込むと、班長の横へソソソと腰掛け、一緒にお茶を飲み始める始末。

「いやぁ、サボって飲むお茶は最高ですなぁ」「へへ、金満路さん、建前の調査お疲れ様です。げんばの天ぷら蕎麦でも手繰ってくださいよ」「おほぉ! ありがたい、ソソソのソ」

最高権力者の裏切り金庫番と公儀の隠密が、浅野土木部の面々と一緒になって楽しそうにお茶を飲んでいる。その目の前を、絶望に震える清水一学が、トゲのない茨の道で「カニ歩き」しながら通りかかりました。

「は、班長殿……! 小栗殿まで……! 職務を忘れて何をしておられるのかッ!」とキレる寸前の一学に、班長はお茶をズズーッとすすりながら、

「あー、清水殿。これも周辺の環境調査サボりでございますよ。異常なし、異常なし。お侍様もカニ歩きなんてしてないで、一杯いかがです?」とユルい対応。

その一瞬の隙を突き、大河原騒吉棟梁らが、しつこくない程度に**「トントン、バサァ!」**と一瞬の音と激しいホコリを立てて境界線測量を敢行いたしました。

「げほっ、何奴ッ!?」

一学がホコリに咽せて振り返ったときには、大河原棟梁たちは、吉良邸の床下に泥水を流し込むための「排水口ハッキング」の細工をソソソと完了させていたのです。

巨漢部員の胸板を見上げ、背筋のムカデを思い出した一学は、あまりの理不尽さと孤立無援さに、もう一言も言葉が出ず(無言)、視界を涙で潤ませ(涙目)、カニのようにもぞもぞと茨の奥へ退散していくのでございました。

夜は「来ない玄蕃への恐怖」で眠らせず、昼は「サボり隠密と最高権力者の裏切り金庫番の仲良しお茶会」を見せつけられてプライドを粉砕される吉良邸。

しかし、季節は容赦なく、次なる多胡外記の「お清めおべっか」と、一学殿に授けられし恐怖の「ユンビタA」の覚醒劇へと、ソソソと向かっていくのでございます。

(第2話へ続く)

【今宵の一句】

通行の バグ地図見ては ここかよと(一学殿が茨をカニ歩きする意味でねぇ)

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