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Futuristic Memory ――この世界に届けられた物語――  作者: 破月
里面的世界編 第四章 破壊神 〜She can never forgive them〜
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『管理者』と緊急会議2

 新潟での騒ぎが世の中で――主にネット上で――物議を醸す中、その真相を完全に予想出来得るであろう数少ない人間である『管理者』たちはCONEDs第一ビル、会議室にて緊急集合していた。彼らにとっても今回のことは予想の埒外のことであり、今後の対策や原因究明のために意見交換をすることになったのである。


 直接会うのは防諜対策の一環と言っても過言ではない。ネット越しの会議など《アサヒ》を超える自由なる存在が確かめられた以上放送局のカメラの前で会議をするようなものだ。


 しかしいつもよりどこか暗い雰囲気が彼らの間には漂っている。それもそのはず。彼らもニュースを見てあれの原因が科学魔法にあると確信を持っているからだ。もし世間に科学魔法の存在が知られれば何が起きるか分からない。ヒトが死んでもおかしくない危険な現象が起きた以上、会社の、ひいては『管理者』の未来が危うくなる。


「集まったな。では、始めるぞ」


 桑原は全員の顔を一瞥して話し出した。


「先ほど《アサヒ》から確認が取れた。エヴェリンが管理者権限【プロトタイプ】を使用したらしい。間違いないそうだ」


「なんだと!?ありえない!」


 神崎が声を荒げて立ち上がった。そして他の『管理者』も似たような反応で、かなり動揺しているのが伺える。それもそのはず。【プロタイプ】はCONEDsの機密。『管理者』以外が使えるわけがないのである。機密自体は奪われたが、解読できるのは世界で彼らだけ。機密情報が入力された結晶も特殊な機器を用いない限りただの異質な材質でできた宝石の類でしかない。


 だから【プロトタイプ】を使われた事実は機密を解読できるほどの情報が広まったということを示唆しているなんてこともあり得る。正直な所、そんな未来など誰も考えたくなかった。


 因みに【プロトタイプ】は元々科学魔法を開発した際に、初めて意識の具現化に成功したプログラムであった。しかしそのイメージを見境なしに具現化することによる危険性と、制御の難しさから放棄されていたという背景がある。


 それに全ての思考を具現化すると細かな操作が不可能になるので科学魔法の発展には邪魔でしかなかったという側面もあり、『管理者』の認識としては使えないプログラムでしかなかった。しかしこれが後に管理者権限の魔法を生み出すのに良いデータを残していたというのは皮肉なもので、今では【プロトタイプ】の名称で呼ばれている。


 閑話休題。


「まあまあ、落ち着きたまえ神崎くん。冷静に、冷静に」


 感情的になりかけた神埼に対して千藤が宥めるように声を掛ける。そうすれば神崎もそれに気づき、いくらか冷静になったようだった。


「すみません。続けて下さい」


「結構結構」


 前にもこんなやり取りがあったことを『管理者』たちは思い出しながら、それでも話を進めるべく桑原に注目する。そうすれば彼女は語り出した。


「まずはこれの問題が何かを摺り合せたい。私としてはCONEDsの機密の一部である【プロトタイプ】をエヴェリンが所持していたことこそが問題だと思っているが、それはどうか?」


 確認を取るように一人一人桑原は目を合わせていく。特に異議はないようだ。ならば、このことについて掘り下げていくべきであろう。


 まず今の問題は、なぜエヴェリンが機密を持っていたかということ。機密の漏洩は確かに問題だ。だがそれだけにこの問題は留まらない。なぜならば科学魔法を生み出す上でヒントとなりうるプログラムこそが【プロトタイプ】だったからだ。もしこれが解析され、この情報を拡散されるだけで誰でも魔法使いになれてしまう。使い方によっては敵を壊滅させる戦略自爆兵器に転用されかねない。魔法が存在するという可能性だけでも知られれば危うい。


 桑原はとりあえず情報の共有ということで何が起きたのかをここにいる全員にざっくり説明することにした。


「【プロトタイプ】は午前0:36頃に突如として起動。半径20mから50mほどに壊滅的な影響を残している。周囲の建物は文字通り崩壊。今現場は封鎖されている状態にある。国も、警察も、軍も、そして海外のあらゆる勢力が目を向けているが、《アサヒ》のおかげでどうにかごまかせているようだ。因みにエヴェリン自体は睡眠薬で眠らされ、【プロトタイプ】は強制的に停止。今はソフィアが押さえつけているために危険性はほとんどない。詳しくはこれを見てくれ」


 桑原がマナリウムで創り出した、宙に浮いている画面を全員に飛ばした。知らないヒトからしたらホログラムにも見えただろう。そこには今回の事件の詳細なレポートが書かれている。《アサヒ》が作成したものだ。


 しばしの間、会議室に沈黙が降りる。まずはその《アサヒ》が制作した資料の吟味から始まって、それから議論を始めるのがいつもの彼らのスタイル。正確な情報を持っているか否かはこれから方針を決める上で最重要となる。


 しかしこの時ばかりは『管理者』全員が重々しい表情をしていた。仮にこれが原因でCONEDsが危うくなれば彼らは居場所を失ってしまう。会社だけではない。この社会全体からだ。未知で危険な科学魔法を持つというだけでどんな目で見られることか、想像に難くない。


 暫くして。


「なぜエヴェリンが【プロトタイプ】を使えたんだろうね?機密の内容は解読できていなかったはずだが……」


「嘘を吐いていた可能性も考えられなくもないです。そのところはどうです?桑原さん」


 千藤と白井の言葉を受けて桑原は自分の考えを返した。


「嘘は吐いていないだろう。あの組織が機密を解読できていたのなら交渉に来ることもなく利用して当然の状況だった。全員が使えれば戦力向上及び生存率向上を狙える。《アサヒ》曰く人材不足の組織であるからそのように使うのが妥当だ。それに新潟での対処の仕方を見る限り不慣れ過ぎる。場当たり的な行動ばかりだ。つまり、エヴェリン自身が隠していたかどうかを考えなければ、コンコルディアは機密の内容を知り得なかった」


「なぁるぅほぉどぉ」


 佐倉が間延びした声で感心したように桑原の言葉に頷いていた。


「ん?待て。それだとつまり――」


 そこで神崎が何かに気がついたかのように動揺した表情を浮かべている。それに他の『管理者』たちも注目し、中には彼の言わんとすることに同じく気づいて目を丸くする者が現れる。ただ例外として桑原だけがその言葉を待っていたかのように、とても落ち着いていた。


 そして神崎は今気づいたことを口にする。


「――浜崎さんが、与えた?」


 エヴェリンが単独でCONEDsの機密を持ち出して解読できるわけがない。科学魔法はこの世界の技術に対して隔絶した技術体系で成り立っている。その技術が成り立つ前提をも科学的側面から考えれば児戯に過ぎないと言われるほどで、受け入れられる科学者はこの世界に於いて確認できるだけでも10人もいない。


 そんな技術をエヴェリンが手にする手段は可能性を潰していけばたった一つ。浜崎前代表が生前に彼女にそれを与えたということのみである。


「与えた、か……」


 全員がその声に振り向く。どこか含みのある言葉を溢したのは今までずっと黙っていた五十嵐だった。彼女は天井を睨み、眉を顰めている。


「何か引っかかるのかね?」


 千藤が不思議そうに訊ねると五十嵐はどこか悩ましそうに言った。


「なあ、本当に与えたんか?おかしくないか?」


「おかしい?」


「そうや。そんな危なっかしいもんを、自分の娘に与えると思うか?あの浜崎さんやで?」


 その言葉に『管理者』たちはとんでもない可能性に思い当たってしまう。思わず固まってしまうくらいには衝撃的だった。


 まず彼らの印象として浜崎前代表とは、人の心の機微を敏感に感じ、それを理論として体系化することに時間を費やすような変人だった。また、それと同時に家族に対する愛情はとても深く、そこに人間も人工実存(AE)もない。家族のためなら命を捨てるような人だった。


 しかし今、その前提となる印象が彼らの思考のフレームを狭めてしまっていた。何が言いたいのかと言うと過去に浜崎前代表が取った行動にある。ある日、彼は強盗に遭遇した。そして彼に敵と見做された強盗がどうなったか。


 容赦なく撃退され、後一歩で死ぬくらいの致命傷を負ったのである。


 その一度敵と認定した相手に容赦しないという彼の考えから導かれる、『管理者』をして恐ろしく思ってしまう可能性。合理的なことではない。感情的な何かを考えてしまった。


「まさか、エヴェリンちゃんを殺すために潜ませていたとでも言うんです?」


 恐る恐るといった風に白井が確認の言葉を放つと、彼女の期待に反して五十嵐はゆっくりと頷いた。そこは否定してほしかったと思う面々。


「その可能性もあるっちゅう話しや。証拠はあらへん。それでも浜崎さんは変人やけど、その中でもかなり狂ってたで。それは6年前の出来事で垣間見えていたことや。正直な所、アレ以来少し浜崎さんが怖くなったで……」


「それはそうだが……」


 千藤や神崎、白井が信じたくないという表情を浮かべる。流石にその浜崎前代表の好印象を崩壊させてしまうような可能性を受け入れられなかったのだろう。彼はこの会社を生み出した先駆者であり、自分たちに好きに生きていける居場所をくれた存在。中には感謝までしている者もいる。


 そんな彼が愛していたはずの家族を手に掛けようとしたと聞いて、簡単には納得できなかった。それも心の具現化というエヴェリンの性格からして最も残酷な方法で。


「落ち着け。冷静にならなければ何も見えないぞ?結論を出すには早すぎる」


 対して桑原は冷静だった。一応彼女はこのCONEDsのリーダー。彼女の影響力はCONEDsを取り巻く環境の中に於いてかなり強い。それもこの場に於いては精神的にも影響力を持っていた。彼女が動揺し慌ててしまえば『管理者』全員が冷静でいられなくなる。それは会社にとっても、彼らの研究に於いても不利益でしかない。だから桑原はそれを避けるために感情を捨て、論理的な思考に全エネルギーを費やしていた。


「他にも可能性はある。【プロトタイプ】の改良版を密かに作り、子どもたちを守るために与えたがそのプログラムに不備があった可能性。我々に碌でもないことを信じ込ませるために第三者がエヴェリンに細工を施したという可能性。もしくはエヴェリンが持っていた科学魔法自体が彼女の感情によって暴走という形を取ってしまった可能性。色々な可能性が考えられる」


「第三者?どういうことだ?」


 神埼の疑問に、桑原は自らの失言に気づいて口を閉ざした。思わず可能性を列挙してこの場では言ってはいけないことを言ってしまったのである。


 第三者の可能性。それは則ち【プロトタイプ】を忍び込ませることのできる存在がやった可能性ということであり、そこには『管理者』全員が含まれる。むしろそれ以外は今現在どこにもいない。これをそのまま話せば下手すると『管理者』の間に不和を生んでしまう恐れがあった。こんな時に彼らを疑心暗鬼に陥らせるわけにはいかない。

もしかするとそれが仮想の敵の望みであることだってあり得る。


 だから、ごまかすしかなかった。


「科学魔法を使えて我々とは違った考えを持つものならたくさんいるということだ。浜崎さんの娘たちとかな。少なからず彼女たちは科学魔法の原理を知っているだろうし、特にソフィアなんかはその財力と知識欲求によって科学魔法の再現ができないわけでもない。ま、ほとんど無理だろうがな」


「なるほど。確かにその可能性がありましたね。盲点でした。ですが、私もそれはほとんどないと考えていいと思います」


 全部本当にデタラメである。しかし0%でもなかった。ソフィアには悪役になって貰ったが、桑原とそう変わらない論理的思考能力を持ち、桑原よりも柔軟な思考ができるソフィアならば時間を掛ければ再現可能な域に行く可能性はある。だが、『管理者』が分担したのと違って一人でやらなければならないことを踏まえれば何十年もの歳月を必要とするに違いない。それならば今ある科学魔法を使った方が合理的だ。


「話を戻そう」


 桑原は推測しか話さない会議は無意味と判断、もしくはこれ以上自らの失言について言及されないように話題を変えることにする。


「さて、これからの話だが、私としてはあらゆる可能性を考慮し、会社の防諜能力の強化を図り、全ての人工実存(AE)の検査、及び《アサヒ》の性能向上を行うべきだと思うが、他に意見はあるか?」


 そこで白井が手を上げる。


「そうですね。科学魔法の性能も向上すべきでは?少なくとも科学魔法では絶対の優位には立っておきたいです」


「俺も賛成だ。それとコンコルディアの力も使ってもしもの時に動いて貰おう」


「なら、ウチは白井さんとマナリウムの改良をやるで。予算は桑原さん。頼めるか?」


「心配するな。今の所金には余裕がある。存分にやってくれ」


 その後も会議は続いた。様々な意見交換が行われ、それらについてやるべきことの優先順位を話し合い、それぞれが自分ができることを最大限努力することが決められた。大きく目立ったことはしない。社会の目を惹き付けないために普段と変わらぬ生活を送る。対外的なことのほとんどは《アサヒ》に任せることも確認された。


 そうして会議も終盤になってきたところで一つ全員に知らせるべき事案を語ることを桑原は決めた。今まではこれによって会議が進まないことも懸念し、最後まで敢えて言わなかったことである。


「最後に、全員に知っておいてほしいことがある」


「なんですか?また改まって」


 全員が注目する中、桑原はそれを言葉にする。


「これから話すことは私的な発言であると思ってくれ。だが、事実として浜崎さんがフィオナに殺されたことが分かった。私はフィオナを危険な存在と断定している。見つけ次第封印、もしくは機能停止に追い込むつもりでいる。それだけは承知してくれ」


「それは――」


 『管理者』たちは色々な意味で困惑した。まず浜崎前代表を殺したのがその娘であるフィオナであることも驚くべきことではあった。しかし桑原の決意そのものも彼らにとっては恐ろしいものに思えて仕方ない。桑原が言っていることは、つまり最悪殺すと言っているのだ。


  一般的な人間ならば作り物の存在がどうなろうとそのことに感情的になる者はほとんどいない。ただの物だからだ。だが、『管理者』にとっては人工実存(AE)たちは人間と変わることのない存在。そして人工実存(AE)の一人であるフィオナをその手で殺すと断言した。


 確かに合理的だった。浜崎前代表が殺された以上、他の『管理者』には危害を加えて来ないなんて言えるわけがない。見つけ次第無力化すべきだ。それでも『管理者』たちはどこか桑原に対して寒気を覚えざるを得ない。いくら合理的には理解していても感情がそれを拒絶してしまうから。しかし桑原がそう言うからには何かしら危険が迫っていると考えるしかなく、『管理者』全員が覚悟せねばならない。

 対策を練る『管理者』たち――。


 本日も本小説をお読みくださりありがとうございます。


 実は正直な所、関西弁分かりません。完全に勢いと乗りで聞いたことのある表現に変換するように考えているので正しくないかもしれません。本当にこればかりはすみません。おかしいところは教えていただけると助かります。


 感想、評価、質問、お待ちしております!ブックマークもぜひ!ではまたお会いしましょう!またまた〜。

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