戦闘
※注意:残酷な描写があります。苦手な方はご注意下さい。また、私はどの団体、組織を正当化する意志はありません。
コンコルディア。それは非合法な手段も、卑怯な手も使う武装組織である。極論を言えばテロリスト集団と言っても過言ではない。まあ、非戦闘員、つまり一般人を攻撃しないので世に言うテロリストではなくマフィアの方が近いかもしれないが。
しかしテロリストと聞いて多くの人は人を殺しまくる気狂いの危ない集団と認識するだろう。実際そんな一面もあるが、彼らテロリストには目的というものが存在する。中には宗教観、民族観が異なるせいで荒唐無稽に思えてしまうものもあるが、よくよく見てみれば抑圧された自分と仲間の開放を目的にしていたりする組織だってあるのだ。さらに個人単位で見れば、彼らもまた同じ境遇に立ち、この社会では得られぬ共通するものを求めて参加する。
そして成功者は革命家と呼ばれ、敗者に待つのは逆賊のレッテルと様々な意味での死。
明確な目的を掲げる彼らが武力に頼るのは武力以外の手段がこの世界に全く通じなかったからだ。もし交渉の余地が存在するのなら彼らだって命は懸けたくはない。彼らは私達と同じ人間であり、猟奇的殺人者などではない。もちろんそんな人間が合流する可能性は捨てきれないのも事実ではある。それでも彼らは彼らの信じるもののために命を賭して闘うのである。
世界に拒絶される事柄を認めさせるために。
そもそもの問題、ナンセンスな正悪で言えば、そんな集団を生み出す世界が最も悪なのかもしれない。事実として私欲にまみれ、他人のことなどそこらの石よりもどうでもよく見ている国際情勢が彼らを生み出すと言っても過言ではないだろう。そして態々その思想を利用するために力を与え組織した彼らのことを、この世界を廻す人間たち、つまり利用者は悪と呼ぶ。
そしてコンコルディアも彼らから見て世界の悪が存在したために組織された。メンバーのほとんどがこの日本で生まれ、生活してきている。しかしこの国が、究極的には大切な人たちの生活が脅かされていることを知り、その中でも力を求めた者たちがエヴェリンの下に団結したのである。
もちろんコンコルディアにも後ろ盾が存在するが、その後ろ盾のために実はかなり特殊な組織となっている。しかしそれはまた別の話。
コンコルディアのメンバーたちが求めるものはただ一つ。大切なヒトたちの平和だ。それは家族であり、恋人であり、友人であり、恩のある教師であったり、大切な仲間たちであったり……。とにかくそんな何者にも変え難いヒトたちを守るために敵を排除しようとしている。
最初こそ横浜周辺でしか活動しなかった組織だったが、エヴェリンの努力の末に全国規模の組織形態となっている。それ故に全国各地の都道府県ごとに支部が置かれ、そのそれぞれをエヴェリンは特定の信頼できるヒトに委任していた。普段は支部ごとに動いていて、支部同士の交流は月に一回の支部長会談しかない。ましてや作戦の合同実施なんて今までめったになかった。
しかしもしここにエヴェリンが来なければ事態は彼らの望まぬ方向にシフトしていったに違いない。
『こちら作戦指揮車。A班、B班、C班は潜入せよ。D班、E班、F班も支援に入れ』
「…了解」
軟骨に振動を伝えて辺りには音を漏らさないイヤホンから作戦指揮車にいるヴィルの指示が響く。
目に映るコンタクトレンズのディスプレイを見やれば新潟西港の直ぐ側に存在する広大な土地の地図が記されている。そこには普通の一軒家が3軒も入りそうなほど大きな常温倉庫が3つも並んでおり、A〜C班はそれぞれ別の倉庫に向かっていた。そしてエヴェリンがいるA班も一番手前の倉庫に進入を試みる。
ディスプレイを再確認してみれば、新潟支部後方支援部隊のD〜F班もしっかり脱出経路の守りについているようだった。
「……」
暗闇に紛れる迷彩柄の戦闘服を身に着けたエヴェリンはハンドサインで音を立てずに後ろを追随する班の部下5人に指示を出し、小銃を構えながら暗闇の中で不気味に佇む倉庫に潜入する。人気もなく、だだっ広い敷地は本当に静かだ。聞こえるものと言えば、アスファルトを割って伸びる雑草の擦れる音と虫の音、そして遠くの喧騒しかない。
何もしなければ自分の心臓の音が聞こえてきそうだ。
そしてエヴェリンは後方、上方など前方以外の彼女が認識できないあらゆる方向は全て部下に任せながら慎重に歩を進ませる。
情報通り倉庫の中身は国際海上コンテナから卸された合成樹脂製の箱で一杯だ。整然と正面の入り口から奥までびっしりと棚が置かれ、その全てが箱で埋まっている。誰もいないかのように中には非常灯以外の光はなく、静寂に満ちていた。侵入者を補足するセンサー類は事前に無力化しているが、こうやって忍び込めるのもセキュリティが雑だからだろう。簡単に入り込めてしまっているのだから。
それらが示すことはここにはそこまで守るべきものがないという可能性。もしくは誰にも侵入されないと高をくくっているという可能性の2つ。だが、それはコンコルディアにとっては最重要目標であった。
「クリア」
今のところ簡単に制圧できている。しかしここにははっきり言って日本人からすれば冗談だと疑う物が普通にある。油断は出来ない。それにこれが罠なら常に監視されているはずだ。ネズミをネズミ取りの檻に閉じ込めんばかりに。
無意識に緊張の汗が垂れるのを感じた。息の音も、消しているはずの足音も、服が擦れる音も、全てが大きく聞こえる。少しでも大きな音を立てたら何かが起きるかもしれないと不安に駆られてしまう。
そんな張り詰めた緊張感をエヴェリンは味わざるを得なかった。
……。
そのまま少しずつ奥へ奥へと進み、内部をさらに制圧していく。しかし結局何も起きず、部下たちからも問題がない旨をコンタクトレンズを介して報告を受けた。さらにヴィルの報告によれば他の倉庫も同じ状況らしい。
そしてここに来た本来の目的である物資の破壊のために爆発物を設置していく。流石にここは日本であるため爆薬を手に入れるにはそれなりの密輸ルートを必要とした。そしてそのノウハウも。
まあ、そこはヴィルがどうにかしてくれた。
実はコンコルディアの武器弾薬はだいたい横流し品や密輸品だ。しかしそれは前政権が施行した法律のせいで大変入手が難しい。というのもその法律によってヤクザの動きがほとんど封じられて、ヤクザが使っていたルートもほぼ全てが潰されてしまったからである。
まあ、今の政権とは少し肩を組んでまだ戦えているのだが、それはまた別の話。
因みにここにある物資の中身は銃器やロケット弾、火薬などの原材料なのだが、これを知っている日本人は非常に少ない。仮にこれを3Dプリンターに放り込めばどんな兵器でも生み出せてしまう。しかも法律に引っかからない原材料であるから少し工夫するだけで水際取締に引っかからない。もっと言えば原材料を作るための原材料をここに置いていたりする。如何にとんでもない密輸品かがわかるだろう。
全てを掻い潜ってこの国の背を突如として刺す手段として、日本全国にこのような倉庫が存在している。いつでも国内から敵軍が湧くようなそんな仕組みが。
それが今の日本の現状なのだ。
そこで不意に通信が入る。
『C班。接敵!劣勢のため、F班は支援のために脱出路を確保せよ』
『了解!』
『A班、B班はそのまま……待て、敵はA班、B班にも向かっている!戦闘準備!接敵まで残り10秒!』
「…総員、戦闘準備」
コンタクトレンズに映る作戦画面に接近しつつある敵の位置が表示される。その方向は倉庫の正面口。つまり彼女らの正面だった。だからエヴェリンたちは合成樹脂の箱の影に隠れ、敵が来る方向に旧式の小銃を構える。旧式と言ってもついこの間までこの国が正式採用していたものだが。
「…三点射」
エヴェリンの言葉と共に倉庫の大きな正面口の傍らの人間用の扉から人影が乱暴に飛び込んできた。
「…撃て」
火薬が弾ける軽快な音が引き金を引く度に連続して響き、倉庫内を反響していく。三点射撃――別名バースト射撃。文字通り一度引き金を引いた時に3発だけ放たれる射撃である。これで放たれた弾丸はすぐさま飛び込んできた人影に吸い込まれるようにして命中していった。敵の数は15。そのうち10人を三点射撃の利点である照準が射撃の間ブレないという特性と、一発よりも攻撃力が高いという特性のために的確に敵を葬っていく。この射撃によって無駄弾はほとんど無い。
しかし相手は防弾チョッキを身に着けているからか、そう簡単には頽れる者がいない。精々バランスを崩して怯む程度だ。それに5人が倉庫内に進入成功して広範囲から弾丸を飛ばしてきた。
エヴェリンも応戦するように射撃しては身を隠し、隙を見て反撃する。それをただ繰り返した。それでいて相手に少しの隙も与えない。
弾倉が空になれば弾倉高速再装填で射撃を続ける。それによって弾倉の交換に割かれる時間を少しでも相手に与えないように努める。
銃弾が合成樹脂の箱に当たり、硝煙の臭いの中に樹脂が焦げる臭いも入り交じる空間の中、エヴェリンは冷静にこの状況を考えて、頭の上に疑問符を浮かべていた。
おかしい。
絶対に、何かがおかしい。
もしこれが待ち受けていた罠だとしたらあまりにも滑稽過ぎる。敵が出入りする倉庫の出口は精々人間一人が通り抜けられる程度。決して物資の搬入口などではない。そんなところに15人も馬鹿正直に突っ込んできた?ただ的にされるだけではないか。こちらに攻撃を加えるにも侵入するにも必ず狭い出入口を通らなければならない。つまりこちらが一点集中で十字砲火の攻撃ができてしまい、敵は濃密な弾幕にやられるだけだろう。
別の侵入口からも来る可能性を考えたが、一向にそんな気配はない。
あの防弾装備もある程度撃たれても大丈夫な作りらしいが、それでも見た所ダメージが確実に入っている。少なくとも殴打されたくらいの衝撃が奔っているはずだ。
一体、何を考えているの?
合成樹脂の箱にはいくつもの穴が開くが、箱の中身が詰まっているからか貫通してくることはない。それでも背中に伝わってくる衝撃を感じながら、エヴェリンは嫌な予感を隠せずにはいられなかった。
どれくらい経っただろうか。15人もいた敵は少しずつ減っていき、ついにこちらの人数より少なくなったところで敗走していった。その際、何やら大陸の言葉で叫んでいたが、何を言っているのかは分からなかった。
しかし汚い言葉を毒づいていることだけは雰囲気で理解できた。
「…止め」
射撃中止を命令してエヴェリンは一息吐いた。端末で部下たちの健康状態を確認しても特に怪我はなかったらしい。
とりあえず、良かった。
やはり実戦というものは精神的な緊張が非常に高かったようで、部下たちも安堵したり、勝利を確信してガッツポーズを決めたりと少々気が抜けていた。
エヴェリンも軽く息を吐いて肩の力を抜いているが、まだ終わっていない。戦闘態勢は維持したままだ。
「浮かれるなっ!生きてるやつがいたらどうする!?」
浮かれていた部下たちにサヤが怒声を上げる。もし倒れた敵の中に一人でも生存者がいた場合、思わぬ反撃を受ける可能性があるのだ。それで死ぬ可能性だってある。だから自分たちのためにも敵の生存確認は必須だった。
「す、すみません……っ」
「謝るよりも生存確認だ!」
「はい!」
そしてエヴェリンたちは生存確認をしていく。暗くて判りづらいが、脈を測って確実に死んでいることを確認していった。
「わあっ!!?」
突如部下の一人が悲鳴を上げた。咄嗟に全員が見るとなんと倒れていた敵が上体を起こし、手にしたナイフで切りつけようとしていたのだ。その突然の出来事に襲われたその部下は何も出来ない。
しかしそのナイフは彼を傷つけることは出来なかった。エヴェリンが素早く敵に向けて冷静に引き金を引いたためである。ナイフを持ったその人間は銃撃を受け、全身から力が抜けるようにして頽れた。
もう、動かない。
「…大丈夫?」
「は、はい……。ありがとう、ございました…………」
彼に近寄ってみれば殺されかけたその部下の瞳は恐怖に染まっていた。目の前で死兵となった人間を見たのだ。その憎悪と怨嗟の篭った眼差しを直視して平常でいられるはずがない。
即ちそういう目をした者は地獄の亡者と変わりない。
あとでカウンセリングが必要だろう。
「…まだやれる?」
「だ、大丈夫です」
「…無理はしないように」
そうして全員の死亡確認を済ませたあたりで再び無線が響く。
『また敵が現れた。ん?なんだ?スピードが尋常じゃない!数は1!A班に直進してる!総員撤退!D、E、F班は全力で撤退の支援に回れ!』
「…総員撤退」
爆弾はどうにか全ての場所に設置できている。後は逃げるだけだ。
しかし――。
「来ますっ!」
サヤが叫んだその瞬間、一つの人影が物凄い勢いで倉庫の中に突入してきた。それに小銃を構える面々だったが、それよりも早く相手が射撃を開始した。
「ぐっ!」
「がっ!?」
部下が二人撃たれ倒れ伏す。彼らを助けようとする部下を援護すべく、エヴェリンとサヤは反撃を開始した。しかし飛び込んできた人影は人間ではあり得ない跳躍を見せ、棚の上を駆けて迫ってくる。もしくは棚の間の通路を駆けて来る。それだけで射撃する面積が広くなり、弾幕も薄くならざるを得ない。もちろん応戦し続けるが、奴は合成樹脂の箱と棚を盾にして巧みに距離を詰めてくる。
そして部下たちを完全に無視して、エヴェリンに迫ってきた。10mはあった距離を一瞬の内に詰められてしまった。
視界の端でサヤがその人影の銃撃を受けてふらつくのが見える。
「…ッ!」
エヴェリンはすぐさま状況を判断して零距離近接戦闘に入る。誰かにかまっていられる余裕など皆無だった。しかし気づいた時には既に敵はエヴェリンの懐に入り込んでいる。
そして目の前には赫く光る冷たい目があった。
目の前に現れたそれは――。
本日も本小説をお読み下さりありがとうございます。
さて、今回の解説。今回のことは私が勝手に妄想したことを多分に含んでいます。ですので、情報源は特にないと思って下さい。すみません。ですが、テロリストという存在が大々的に知られるようになったのってごく最近ですよね(ここ数十年)。で、しかも彼らが使う武器はほとんどどっかの大きな国が使っていた中古品。しかしそれを購入するにしても一般人が買えるかというと資金面でも入手ルートにしても難しそうですよね。そんな大金を持ってたらそもそもテロには参加しないし、入手ルートを持っているようなマフィアはわざわざ国を敵にはしたくないでしょうし。以上のことからテロリストって、色んな国が組織させた裏の軍隊なのかもしれないと思いました。今じゃ戦争したくても出来ないご時世ですので、自分たちとは関わりのない人間に戦わせている可能性が捨てきれませんよね。中東とか。まあ、軍隊と言っても利用されているだけでしょうけど。
考え過ぎかな?真に受けないで下さい。全く情報源がありません。
因みに倉庫の中身については勝手な妄想です。でも、もしああいう選択を彼らが視野に入れているのならそんなふうに備蓄していそう。これも考え過ぎかな?まあ、それはもっと先のお話なので、伏線?みたいな感じかな?たぶん。そう言えば、火薬とかも法律で引っかかりますが、その原材料の更にその原材料なら問題なく輸入できるんでしょうかね?よく知りませんが。
あと、戦闘シーンって初めて書きましたが、これで良いのだろうか?合理的に考えてこんな戦闘は普通はありえないですよね。無意味すぎます。わざわざこんな戦闘をしているということは、まあ、そういうことかな?
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