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Futuristic Memory ――この世界に届けられた物語――  作者: 破月
生存戦略編 第三章 在処 〜Plot of the one ~
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追跡

 強制捜査の一環としてCONEDs第二ビル内に警察官たちは突入していた。事前に打ち合わせた通り、主要な人物を押さえ、爆発事故の原因を徹底的に探し出す気でいる。第一ビルでは有力者達全員の身柄を確保し、これから一人ずつ尋問が開始される手筈となっている。そして第二ビルでもここを直接運営している人たちに指定する資料を提供するように迫っていた。


 ここにいるのはごく普通の、自らの仕事に誇りを抱く警察官だけである。正義を信じ、職務を全うする優秀な人間たちだ。≪アサヒ≫が言うような諜報機関の手先は全くいない。しかしこれは彼女が間違っていたわけではない。直接に影響を受けているのはもっと上の役人だけで、彼らは例えば金を貰ってつじつまが合うように部下に命令を出し、CONEDsの機密を持ち出そうとしていた。


 持ち出した機密は普通ならコピーを取れば問題なく、そうでなくとも証拠品として押収し、情報を引き出すことも可能だ。つまり、合法的な手段で手に入れられる。それが例え外部に技術がない科学魔法のものだとしても複製品かその情報さえあれば時間が少々かかっても解読できるかもしれない。

それでも出来ない時は……まあ、いろいろだ。世の中信じられないことであっても、映画のような話でもこの世界では度々起きている。


 可哀想なことに今この場に置いて末端の警察官は自分が誰の手の上で踊らされているかも知らず、国家を超えた野望に良いように利用されているだけだった。


 そしてそんな真面目な彼らの様子を伺っていものがいた。監視カメラ越しに彼らの行動を分析し続け、さりげなく彼らの細部まで見えるように監視カメラの向きを調整している。それは誰であろう≪アサヒ≫だ。彼女はハヤト達が脱出するところを警察に邪魔されないようにビル内のシステムや清掃ロボット、或いは従業員を動かしてある場所に行かないように誘導している。もちろん外に待機する警察も同様に。


「これを見ると確かに駐車場だったってわかるな」


 今ハヤト達がいるのは第一ビルの裏側に当たる路地だ。とは言っても繁華街として活況を呈している場所でもある。陽が傾いてきたから皆外出していて少し騒がしい。影になる所でもあるから体感温度はここに来た時より数度下がって感じられた。


 どうしてこんなところにハヤト達がいるのか。それはこの第一ビルの構造にある。実はこのビルにかつてあった駐車場の出入口が裏手に存在したのだ。そして現在ではマナリウムで塞がれ、地上部に出る出入口があった場所には二台まで止まれる小さな広場がある。そこで≪アサヒ≫がマナリウムを変形させて地下から地上に至る道を一時的に形成したのである。

(ちな)みに丁度良く一台あった車が陰になって外から怪しむ人は皆無だった。


「ねえねえ。結局ハルカ達はどこに行けば良いの?」


 ハルカがそうソフィアに尋ねた。そこには緊張というものが一切なく、まるでこれからお使いにでも行くような雰囲気だった。


「≪アサヒ≫が言うにはここなんですけど……これ本当なんですか?」


『はい。確かです。監視カメラをクラッキングしてそれらしきものも確認しました』


「でも……これはさすがに……」


 ソフィアが疑問に思っていること。それは盗まれたCONEDsの機密の現在位置だ。彼女の端末に送られてきた地図によるとなんと横浜港にあるらしい。それも丁度船に積み込まれている最中だという。

機密が盗まれたと思われるのは父の命日。つまり先週だ。ならばなぜそんなに時間が掛かって未だにそんなところにあるのか甚だ分からない。


「本国に持ち帰る前に調べていた?ううん。それじゃ他の組織に奪われるリスクが高くなる。なら、奴らに不足の事態でもあった?」


「でも不思議だよね。なんで態々船で行くんだろ?飛行機の方がずっと早いじゃん?」


 エレナも地図を覗き込んで首を傾げる。確かに彼女の言う通り飛行機の方が船と比べるもなく速い。鈍足の船で行く理由はないはずだ。


「ねえ、早く行こうよ!急いでるんでしょ!?」


 少し思案に(ふけ)っていたらハルカに叱られてしまった。というより早く出かけたくて仕方がないといった感じだ。

きっと、つまらない室内に閉じ込められて早く思いっきり身体を伸ばしたいのだろう。


「そうだな。じゃあ、行こう」


「《アサヒ》。タクシーは呼んでいますよね?」


『もちろんです』


 駐車場から出るとタイミングを図っていたかのように目の前にタクシーが止まった。やはり無人で運転席には誰もいない。

それに全員乗り込むとゆっくりと静かにそれは走り出した。


「空飛びたいですね」


 暫く走行して唐突にソフィアがそんなことを独り言のように呟いた。突然何を言っているのかさっぱり分からず、しかし気になって問い返してみる。


「なんでだ?」


「いやぁ、だって地上とは違って直線で目的地に行けるじゃないですか。いっそのこと今からでもタクシーを飛ばしましょうかね?」


「事故になるだろっ」


「またソフィア姉さんが変なこと言ってる……」


「というかほとんど毎日じゃん」


 呆れるエレナとハルカの言葉からソフィアはちょっと普通とは違う考えを口走ることがあるらしい。というかさっきの発言はちょっと無理がある気がする。そんなことをすれば確実に事故が起きるし、絶対世界的なニュースになる。

しかしそれを理解していてそういう可能性を想像することを楽しんでいるのだろう。


 楽しそうに歪められたソフィアの口元を見ていると、彼女の頭の中にある光景がどんなものなのか想像するのも怖くなってしまった。きっと彼女の頭の中では恐ろしいシミュレーションもあって、その光景を見ているに違いない。少し理解できないと思いつつも、しかし、見覚えがある気がした。


 ええっと、確か……。

 ああ。

 そうだ。


「父さんみたいだ」


 父もたまに意味不明なことを呟くことがあったのを思い出した。何だったか。電子レンジで砂鉄を溶かしてみたいだの、車のマニュアル運転で運転中にクラッチを壊してみたいだの、本当に意味不明のことを言っていた気がする。そしてどこかソフィアには同じような雰囲気が感じられた。その度に理解できなかったが、親子だから似ているのかもしれない。

血は関係がないところなのだろう。


 タクシーは少しずつ東進していく。そんな中、不意にハルカが疑問を呈した。


「横浜港って入れるんだっけ?強行突破するの?」


 言われて気づく。確かに出来るのだろうか?海外を巡るならそれなりに検査も多いのではなかろうか?ほとんど縁がないし、父の薀蓄でも言ってなかった気がするから分からない。


「しませんよ。そんなことしたら犯罪じゃないですか」


 そう反論するソフィアに思わずハヤトたちはジト目を送ってしまった。犯罪になりそうなことを今までやっておいてそんなまともなことを言われても説得力がない。

街中で銃を撃ったり、アメリカ国防省にクラッキングしたりしているくせに、なぜそんな正論を述べることができるのだろう?


「なんですか、その目は?」


「別に良いんだけど、お前の判断基準が分からなくて」


「そうですか?リスクを極力回避させているだけですけど?」


 そうは思えない。ハヤトたちはそう思いつつ詮索するのを止めた。きっと面倒くさい基準があるのだろうし、今はそれどころではないのだから。


「で?話し戻すけど、ハルカたちはどこに行けばいいの?」


 再びハルカが問えば直ぐにソフィアが答えた。


「機密が乗るのは地図の場所的に外遊の旅客船です。ですから普通に乗り込めば良いんじゃないですか?その方が手っ取り早いですし」


「そんな適当な……」


「というか乗れるの?」


 そこで《アサヒ》が情報をすぐさま拾ってきてそれを報告してきた。


『今からチケットを買おうとするとどうしても目的の船には乗れませんね』


「じゃあ、どうするんだよ」


 しかしソフィアは楽しそうな笑みを浮かべ、宙に指で放物線を描いた。


「そんなの飛び込めば良い話じゃないですか」


 ……。


「さっき、強行突破は犯罪だって……」


「ええ。強行突破したら警察沙汰ですね。でも気づかれない犯罪は犯罪の内に入らないんですよ」


「ソフィア姉さん……」


 やっぱりよく分からない。ソフィアの基準はバレなければ良いというもののようにも思われるが、そのどれもリスクが大き過ぎる。一体何を持って平気だと思っているのか。


 それに彼女はあまり周りの反応を気にしない質のようだ。さっきからハルカは呆れつつ外を眺め続けるだけだし、エレナに関してはもう呆れを通り越して心配するような表情になっている。ハヤトだって彼女の考えについていけず少し困惑気味だというのに勝手にどんどん話が進んでいる気がしてならない。


「ならどうやってバレずに入るつもりなんだ?」


「花火を至近に打ち上げれば、皆そっちに注目するんじゃないですか?」


「「「……」」」


「冗談です。それは向こうに着いてから考えましょう」


 本当に冗談であってほしいと願うハヤトたちだった。

 間に合うか――?


 本日も本小説をお読み下さりありがとうございます。


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