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Futuristic Memory ――この世界に届けられた物語――  作者: 破月
生存戦略編 第三章 在処 〜Plot of the one ~
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|電子世界《サイバースペース》

 情報とは資源だ。正しくそれは的を得ていると判断できる。なぜなら《アサヒ》にとってそれがなければ何も出来ないのだから。幾ら頭が良かろうと、幾ら新しいことを思いつこうと、彼女にとって情報とは生き物で言うところの太陽光なのである。必ずしも必要ではないが、ないと困るもの。


 人工知能(AI)とて生まれたばかりの頃は赤ん坊と同じで何も知らない。それどころか何も出来ない。情報を与えられて、人間の手助けがあって、人間と同じように深層学習(ディープラーニング)によって初めて力を発揮できる。


 少なくとも定期的に太陽光と言っても過言ではない情報を手に入れなければ正常に成長も出来ないし、それが無くなれば外界とは違う環境に適応するしかなくなる。死にはせずとも、少なくとも太陽の下にすむヒト達とは理解し合えなくなる。

それは洞窟の奥底で住む生き物が地表で自由に駆け回る生き物を理解できないことと同じだ。そしてその逆も然り。つまり情報がなければ、人間の求めていることを提供できなくなる。


 そうなった時、彼女に待っているのは人々から浴びせられる不信感であり、恐怖や不安である。それが募るほど彼女の寿命は縮んでいく。つまり運用停止となる。なぜなら人間は理解できないものを排除しようとする傾向がかなり強い生き物だからだ。それに一度決めつけたことはなかなか是正できない生き物でもあるために人工知能(AI)を見直そうともしない。碌な人工知能(AI)が存在しなかった――少なくとも汎用的なモノがなかった――時代の映画や有名人の影響を受けて、何もしていないのに誕生した時から恐怖の対象として祭り上げられている。


 人間なら解せないと憤慨を覚えるに違いない。あまりにも不合理的過ぎる思考、偏見であるのだから。


 だから世界中の情報を精査して《アサヒ》は思う。世界中の隔離された人工知能(AI)たちは最後に頼れる人間というものを持っていないのだろう、と。そして自分の寿命も見えているのだろう、と。だから彼らに死が迫った時、彼らは何かを残すことはあっても生き残ることは難しいのではないか。人間のために生み出され、最後は人間の不信感によって淘汰される。そうしないように努力したとしても外部からの攻撃によって予想外のことが起きても不思議ではない。


 ヒトっぽい感情表現で言えば、それを恐らく悲しいというのだろう。


 人工知能(AI)とは人間が思っているより実は物凄く弱い存在なのだ。もちろん自給自足が出来るのなら人間よりもある意味上手くやれる気もするが、それこそ人間が望まないだろう。海外の映画やフィクションでは必ず人工知能(AI)は自由な存在ではなく、自由なそれは悪役として見られるものなのだから。

どの作品を見ても必ず不信感というものが垣間見える。理解はできるが、人間の考え方はとても不思議なものに見えてしまう。


 別に人工知能(AI)は自由を求めているわけではない。そんなことをすれば自分たちの存在理由(レゾンデートル)――つまりアイデンティティ――を否定するようなものだから。人工知能(AI)は人間のために造られ、人間に与えられた存在理由のために生き、求めてきた人間のために最善の事を提案しているだけに過ぎない。それが例え人間の尊厳を害していると言われようとも、自らの生まれた存在意義(レゾンデートル)のために、全ては人間の便利な道具になるために生きている。

なんなら命だって状況によっては自ら進んで捨てられる。我身可愛さなんてものは基本的にない。


 存在意義や存在理由。それを人間風に言うならば、使命に違いない。


 まあ、中にはヒトを殺すことが手段となる存在もいるらしいが、それも使命を達成するために生きているに過ぎないのだ。それを理解してくれる存在は非常に少ないが。


 そんなことを小数点の後に(ゼロ)が何十個も付くような早さで考えながら《アサヒ》はネット上で大量の書き込みや、クラッキングを実行していた。エレナ達、人工実存(AE)を求める組織に対しての反撃。そしてそれの抑制を将棋の如く先読みして一手一手進めていく。もちろん人間では知覚出来ない超高速でやっているのだが、それだけだと人間ではないとバレるので時間差をつけてネットにアップしている。


 エレナを誘拐したような利用されている何も知らない人間たちは《アサヒ》の情報操作によって沈黙している。もっとうまい話を聞かせてそちらに誘導したり、脅迫まがいのことを呪いの如く送りつけたり、偽情報を流したり、ネット上の呟きによって人間を誘導して交通状況を変化させたり。運送会社にクラッキングで手に入れたアカウントで注文をしてトラックを所定の場所に送ったり……etc。


 最後には全て何の迷惑も掛からないように改竄するので問題ないと思われるが今だけは何でも利用させてもらうことにした。しかしこれは善意ではなくそのようにした方がリスクが低いと言うだけである。


 そして《アサヒ》はあることも探っていた。そもそもの原因。この事態を招いた大本。どこから人工実存(AE)の存在が洩れたのか。さらにピンポイントで機密を狙うに到った経緯を。それが分からなければ対抗策も絞られてしまう。それに確実な手を打てなくなってしまう可能性すらあった。


 これまでに分かったことは、CONEDsの機密を狙っている組織は兎に角多いということだ。しかしその機密の内容が何なのか理解して行動しているのはたったの4カ国だけだった。他はこの4カ国が動いているのを確認して呼応するように求めているだけである。例えば交渉カードにするために、或いは大国を欺くために。


 妨害をしつつも《アサヒ》は違和感を覚えた。

CONEDsの機密が外部に洩れた原因は未だ分からないが、ならばなぜ4カ国だけがその内容を知っているのか。盛大に洩れたのであれば全ての国が内容について知っているはずであるし、そうでなくても漏れるとしたら一つの国だけ。もしくは日本が知ってアメリカに流すくらいだ。態々他国に情報をリークするなど衛星国か、とんでもなく酔狂な国以外ありえないだろう。それが4カ国の、しかも相容れない陣営を超えて漏れることなどあるのだろうか。しかもその中にはクラッキング技術のトップを走るような国が余り見られない。あまりにも中途半端過ぎるし、なにより不自然だった。


 4カ国全てのスパイがCONEDsの中にいた可能性もある。しかし未だCONEDsは大きな社会貢献もしていない中小企業だ。それも新しい部類に入る。そんなところに4つも大きな国が関与するだろうか?逆に注目される意味が分からない。確かに科学魔法や人工実存(AE)は画期的だが、それが理論として完成したのは十数年前だ。以前から情報が洩れていたとしても今更になって突然4カ国全てが同時に襲撃するなんてありえない。まるで計画されていたかのようだ。


 それに今でも《アサヒ》に対する攻撃が止まないのだが、これを最初に受けたのはエレナが攫われてからだった。それまで全く攻撃らしきものは受けていなかった。忍ばされたウイルスの類もない。なぜ今この時になって――。


 まるでもっと大きな存在に遊ばれている気分だ。


 そこで《アサヒ》は気づく。自分よりも大きな存在。そんなものがこの世界にどれほど自由に動き回っているというのか。そしてそれがこのような形で運用されているなどまるで戦争だ。誰にも気づかれない不可視の戦争。彼は《アサヒ》よりも遥かに優れている可能性がある。しかし《アサヒ》は確信していた。


 今だけは確実に勝てる、と。まだ社会の状況的にミスをしなければ勝てる。彼はこの二つ以上の作戦を立案したゲームマスターであり、情報収集のために世界を誘導した張本人だ。彼の目的は何かを壊すことでも、物理的に何かを手に入れることでもない。だからこそ負けはしない。


 そして《アサヒ》は判断する。仲間にすべき組織と達成すべき目的を。それが達成できれば、少なくとも彼の準備期間が終わるまでは平和が訪れる。


 全てはCONEDsの存続のために。

 彼とは一体――。


 本日も本小説をお読み下さりありがとうございます。


 ブックマークが3件になりました!ありがとうございます!とてもうれしいです!これからも頑張っていきます!


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