21話:ごみをごみ箱に華麗にシュートして外すととても悲しい気持ちになるよね?
ふふふ、ばっちりしっかりしゃっきりと登場シーンが決まったぜ!
「は、ははは!勇者?勇者だと?貴様がか?亜人の味方をするお前がか!」
「んんん?今名乗ったじゃあないか?お耳が聞こえないのかな?それともお馬鹿さんなのかな?頭の中詰まってますかー?あ、カラカラ音が鳴りそうだ!鳴子かな?」
「ふざっ!お前、俺たちが誰かわかって言ってやがるのか!」
知らないというか、勇者歴一月もないし、人の国なんて入ったことすらない俺が知る訳がないなじゃい!と言ってもわからない馬鹿ばっかり。ここは知らぬ存ぜぬだ!知らないよ!ばーかばーか!
「知らずに言っているのなら教えてやろう。俺たちはぎゅん!?」
思わず木札を投げちゃったんだぜ!うん、ごめんね?狙ってって言ってるのかと思ったんだよ!だってセリフが長いよ!これはどう考えてもツッコミというか攻撃待ちだったよね!俺悪くない!
「この、お前!よくもおおおお!」
ガチャンとヒョロイあんちゃんが構えたるはバルカンだ!なんだか懐かしいな!
「少年、ちょっとだけそこのお姉さん護れるかい?」
「こ、攻撃を防ぐくらいならいける、と思う」
「オーケー十分!それじゃ、ちょっと片付けて来る」
腰から木剣を取り出す。木剣と言っても硬度で言えば鋼鉄と既に変わらない。魔力を練りに練って練り上げて作り上げたあの桜の魔木でできた剣だ。
「そんな武器で、重火器にかてるかあああ!」
バルバルと斉射される弾丸を風に乗りながら交わしていく。うん、いくら重火器がすごくっても使ってるやつが馬鹿なら当たらないんだよ!ほらよく言うじゃない!当たらなければどうという事はないって!あ、こんちゃーす?
「な、なんであたらにぎゃれあ!?」
おでこから木札を生やしたあんちゃんを放置して呆然としている顎髭にも木札をなげる。お、当たった!
「こ、この化け物め!」
なんでかおびえた様子でユウシャ共が武器を構えだす。うん、ひとこと言おう。
「うん、遅いなって?」
風のごとく瞬く間に五人を切り伏せる。お、まだいるよ!多いな!
「この、死ねえええ!」
魔法使いがいたのか空には巨大な火の塊がそこにあった。
いやいや、それをやると君たちの味方まで巻き込むんだよ?馬鹿じゃないかな?馬鹿なのか!
うんうん、ダメだよ。馬鹿に鋏を持たせるなっていうじゃない!火を持たせるなんて言語道断だよ!そういう訳で消火しまーす!扇を振るって、はいパックンちょ?
「な、何だアノ蛇は!?」
「お、俺のブラストストームを喰った!?」
あらかじめそばを流れる川に投げてきた木札を扇を振って起動させたんだよ!うんうん、高火力に冷たい水だと水蒸気爆発を起こしちゃうから熱量は空へと逃がす。逃して冷えた空気は雨になって降り注いでくる。燃えてた家の火も消せて一石二鳥のうまうまさんだ!……雨だけじゃ消せないから普通に水の塊を落とし消火してるけどね!
「――さて、次はどうするのかなユウシャ諸君。弱い者いじめしかできないクズができることは泣き叫びながら逃げ惑うか鉄の剣ですらない木剣で切り伏せられるのがお似合いだよ?」
マントを翻し、煽るようにゆっくりと歩いて見せる。ふふふ、この木剣は前に作った木剣の改良版。つまりは魔王も倒せる木剣なのはここだけの話だ!聖剣を使えばユウシャな人たちを一瞬で一掃できそうだけど、使わない。使ってなんてやらない。
こんなやつらに聖剣なんて使うのはもったいない。シルヴとの戦いが穢れるから絶対に使ってなんてやらない。
正直木剣でももったいないくらいだ。拳だけでぶん殴っていこうかな?できるかな?できそうだ!
「お、落ち着け!所詮はあいつ一人だ!まだ俺らの方が圧倒的に有利!質量で押し込め!」
「「「お、おお!」」」
とかなんとか考えていたら一致団結し始めたよ!ほ、本当に遅いな!最初からやろうよ!やってないからこっちは準備終わっちゃったんだよ。
巫術/奉納舞/森羅万象
モリっと盛り上がって森になる。うん、ユウシャって栄養たっぷりらしいからね!モグモグパックンぎゅるるんるんで一気に殲滅さんだよ!
「うわああ!木が!木がからだにげぺっ!?」
「な、なんで、いつの間に紺塗らば!」
「た、たしゅけれびゅ!?」
ユウシャたちが阿鼻叫喚の地獄絵図の様子で死に絶えていく。死ねばどうせセーブポイントで復活するのだから容赦などしない。生かさず殺さず養分にしないだけ温情さんなんだよ!
焼き尽くして燃やし尽くしてファイアー!な汚物は消毒さんをしてもいけどやったらせっかく消火したのが元の木阿弥だからね!
「こ、この、糞があああ!」
元気のいいユウシャが一人木の呪縛を逃れて黒く光る剣を振り上げる。当たれば即死かな?即死っぽい!だから当たってなんてやらない。蹴ってその剣を空へと弾いて蹴り下ろして額を砕く。ふらりとよろける一瞬に顎へ向かってストレート!お、決まったんだよ!
ぐらりと崩れ落ち、意識を落とした。あ、まだ死んで無い!運がいいね!川に捨てておくかな……。
「す、すごい……。あれだけいた勇者を……」
可愛い眼鏡をかけたちみっこが短剣を片手に唖然としている。
「いいや、あれは勇者じゃない。幽の者で幽者な亡者で死にきれない半端モノだよ。勇者ってのは君みたいなやつの事をいうんだ」
ぽんぽんと頭を撫でてあげる。勇気ある者。目の前の傷つく誰かを見捨てず護りし者。それが勇者だ。
英雄なんて柄じゃなくても勇者にならだれにでもなれる。
なれるけどならない奴らばかりだからこの世界のユウシャは碌でもない奴らばかりなんだよ!
くっころ勇者三人娘とかこの子くらいちゃんと勇者やってる異世界幽者はあんまりいなさそうだ!何せ向こうの人の国が推奨しちゃってるからね!人の国の王も魔王もろくでもない奴はどちらもろくでもないんだよ!俺は勇者できてるかな?まぁ、俺はサクラちゃんの勇者になれたらそれでいいんだけどね!