29話:最終決戦で最終形態で戦うのも初期形態で戦うのもどちらもロマンが溢れすぎて男の子的に堪らないよね?
あたりかまず鳴り響く爆音を後にして高高速にて飛来する魔力弾を鼓草にて切って割いて払って食わせる。
『くさいきもいゲロまずい』
ぺぺ、となにか唾を飛ばすような鼓草の声が聞こえるけれど、ちゃんと貯めるモノはため込んでくれている。アークルに戻ったらまたきちんとお手入れしてあげるとしよう。隅々とこまごまとしたところまで丁寧にね!
魔石の反応のない途轍もなく気味の悪い化け物は空を、大地を我がモノ顔で駆け巡り、辺り構わず生きとし生けるものに食らいついている。あいつらにとって人も、魔物も、モノも石ころですら食べ物のようだ。地面喰ってるし!地面!
『アレは魔神の一部全てなのでしょう。故に頭が無く、顔すらも無い。ただ、喰らい尽くすと言う命令のみで動いているように見えます』
「なるほど、ジョーカーのダークローチ見たいな奴ね!」
『真人様、それでわかるのは極々限られた一部の方々だけだと思われます』
それでわかるサテラさんは流石だと思うけれど、そこは突っ込まないでおくことにする。
大魔王城の瓦礫の中で氷漬けにされていたプラント化していた人たちをサクラちゃんと一緒に切り裂いて元の姿へと戻していく。今更ながらにこのプラントが作られた目的が魔神の糧を大地から溢れるエネルギーを際限なく吸い上げ加工する正しく工場的な役割を果たしていたのだと気づかされる。ああもう、何でこんなもの開発してくれたかなあの教授さんは!
ふと、見覚えのある巨大化した蜘蛛の姿をしたプラントを見つける。
「ごめん、遅くなった――」
鼓草を煌めかせ、一閃にて彼女を斬る。
――無限流/人技/奥義終局/百櫻繚乱
幾度となく撃ち放ち、ようやっと最適化した型を覚えたおかげで最早反動も無い。その為に幾度となく聖鎧と聖剣を振るったのだ。もう目をつぶってもできるね!!
拾っておいた大樹の桜の枝で生み出した分身で助けた人たちを背負ってダッシュで後方へと連れて行く。放置しておいたらあの化け物たちに喰われかねないから必要な労力なのである。と言いつつ知り合いだしみんな助けたいのが本音なところ。なんだかんだでこの城のみんなには沢山お世話になったからね!
『仮呼称デザイアと命名。真人様、世界各地にてデザイアの出現を確認いたしました。どうやらこの地の地脈を通して世界へと飛ばしたと思われます』
「益々もって時間がヤバいか。サクラちゃん、そっちは?」
「はい、皆さん元に戻せました。で、ですが、変な感じがします。まさかまーくんの使ってる技を私が使うだなんて……」
むむむ、とデザイアを軽く斬り飛ばしながらサクラちゃんが微妙な顔をしている。
聖鎧のシステムの中にラーニング機能が存在する。今までの勇者たちの経験を自らにダウンロードし、使う事ができるのだ。俺の場合は必要ないというか、むしろ邪魔になるからその機能は使わずに技を洗練最適化させることを目的として使わせてもらった。ええ、おかげさまでいい訓練になりましたとも!
そして、サクラちゃんにはそのラーニング機能で俺の技――無限流/人技/奥義終局/百櫻繚乱を使えるように体が動くようになっている。だからこんな微妙な顔をしているのだ。
「まーくんが一生懸命努力して努力して覚えた技たちを私がこうして使うだなんておこがましいにも程がある気がするのだけれど……」
「使えるものは使ってしまえばいいんだよ。サクラちゃんだって、元々使っていた剣術があったと思うんだけど――」
「アレはレイピアだから動きが全然違うの!」
背中を合わせてデザイアたちを切り裂い一緒に空を駆け抜けてデザイアの大群を切り開く――!
無限流/刃/奥義ノ伍/素戔嗚-天嵐破軍!!
二人で同時に数えるのも億劫になるほどの量を切り裂いて空を蹴って雲を突き抜ける。
『無駄な足掻キを――!勇者!勇者真人!!!』
デザイアたちを巻き込みながら放たれた先ほどと同等クラスの魔力砲を魔王城跡に降りた時にサクッと作っておいた桜の大樹の木剣たちを拳を乗せて連撃にて撃ち放つ――!
――巫術/第弐の秘術/叢雲の剣-破天伍華-神威/狂咲!!
先ほど喰らっておいた魔力も乗っけて全力にて応戦する。魔力砲とはその名の如く多量の魔力を収束し、一点にて放出する技である。
魔神の放つ超火力の魔力砲に巻き込まれれば最後。超々加速させられた魔力によって粒子分解され魂すら残らずにこの世から姿を消してしまう。つまるところ勇者であっても喰らえば消滅して死ぬと言う威力という訳だ。だが、そんなモノかき消してしまえば関係が無い。
俺の放った叢雲の剣たちは螺旋を描いて砲撃の魔力を掻き散らし、ついぞその刃で魔神の肩を吹き飛ばし――
『無駄、ダ』
まるで無かったことのように魔神の肉体は再生したのだった。……なるほどこれはひどい。
『超速再生――ううん違います。次元震を観測――まさか、別時空から無事な自分の肉体へ移し替えているとでもいうの……!?』
「まさかも何もその通りさ」
大魔王に聞いてはいたけれど実際に戦ってみて分かる。こんなの殺しきれるわけが無い。
だが、グリムは殺せずとも魔石を奪い取り肉体を封じることをやってのけたのだ。魔神の油断もあったのかもしれないけれど!
『あの頃は私も若かった……ああいや、今も若くないわけではないがな』
「母様年寄臭い」
魔法少女な姿になったフレアを頭にのせた爆炎龍モードのフレイア様がものすごくショックを受けた顔をしている。うん、駄目だぞフレア。フレイア様はとってもお綺麗なお方なんだからな!
『以前グリムがアレを倒した時は今の大きさの半分以下の規模であった。恐らくグリムの魂と魔王オウカの魔石を喰らった以外にも封じられながらも力を蓄えておったのだろうな』
それこそがアラガミの暗躍の目的だったのだろう。というか、あいつらどうなったのかな?こういう時にこそ襲い掛かってきそうだけれど……。
『そんなモノ既に喰われたに決まっているだろう。その残骸の一部がこいつらだ』
言ってフレイア様がデザイアたちを焱にて焼き払う。ううん、気持ちいくらいに燃えて行くなぁ!
「新天地に向かう箱舟は邪神のお腹の中でした、か。笑い話にもなりゃしないな、こりゃ」
いいように使われて、使い終わったらまとめて食べられてしまうだなんて何てエコロジーな集団だったのだろうか。なんというか、不憫な……。
「それで、母様。アレ倒す方法は?」
『無い。幾億回と削って隙ができた時にようやっとグリムが魔石を奪ったのだ。同じ手は二度も通じぬさ』
「母様、ダメダメ……」
『ぐふぅ……』
天をも焼き尽くすというヴォルガイアドラゴンのフレイア様が泣きそうな顔になっている。知っていたけど本当に娘には弱いらしい。
「そんなことは百も承知。ああ、分かっている。それでもアレを倒しきる。その為に俺たちはここにいるんだからね。サテラさん、そっちの準備は?」
『完了しております。それではサードフェイズへ移行します』
あたり一帯にビービーという警告音が鳴り響き、地鳴りと共に後方にあったはずの移動型巨大基地がその姿を前線に出現させる。
『全乗組員は所定位置へ移動してください。繰り返します。全乗組員は所定位置へ移動してください。只今より、巨大移動基地ルクス・サンクチュアリウムの最終合体シークエンスを開始いたします』
アナウンスと共に、ビットが辺りに放たれて俺の提供した巫術/奉納舞/五芒結界のデータをもとに生み出された多重結界システムが起動する。
『行きますわよ皆さん!』
『今こそ私たちの訓練の成果を見せるときでーす!』
『お~がんばろ~……にゃ?』
『うー!がんばろー!』
『ほら、くるみ!コクピットで暴れないの!』
『サテラさん、準備……できました!格納いつでも!』
今聞こえた声はバアルの子供たち……ベルとアーリアちゃん、それにペシテちゃんにすももちゃんの声だろう……って、あれ?莉愛さんにくるみちゃんまで乗ってる!なんで!?
結界内に残っていたビルほどもある巨大デザイアを消し飛ばしたカオスブラッティアーがルクス・サンクチュアリウムの上部へ飛び移り、開いた格納庫らしき扉に変形した姿のまま入って行く。隣の格納庫には見覚えのあるグランブラスティアの姿。どうやら今回は動力としてこの二体も使われるらしい。
『グランブラスティア、カオスブラッティアー共に接続格納……完了――!空中戦艦グランシップ・ブレイブティアーズ・ネクスト――コンタクト!各セクション、チェック体制維持!』
雲を割き現れたのは海を奔るために開発されたはずのグランシップ・ティアーズさんだった!ああうん、サテラさん最初からこのために開発してたのね!さらに改造されてるし!!くそう、無駄に格好いい……!
『究極・合体――!』
ルクス・サンクチュアリウム基地が地鳴りを上げて立ち上がり、その姿をゆっくりとロボットの形へと変形させてく。空中でその姿を可変させたグランシップ・ブレイブ・ティアーズ・ネクストが頭部へとドッキングを果たし、その姿を完全なるものへ変形させる。
『今こそ神を討ち滅ぼす刻!……ですわ!』
『破壊を超えて創造へと至る!でーす!』
『にゃ、ここに新たなる力を得て――』
『古より!新たな姿にて復活を果たす!』
『神を――ぶっ飛ばせぇ!!』
『『『『『『完成――!ゴッド・ルクスティアーズ・エクステンド!!』』』』』
全長三キロは優にあるその巨体は正しくゴッドと名付けるにふさわしい迫力と言えるだろう。というか
俺も乗りたい……!サクラちゃんも俺の横でプルプルしてる。うん、好きだもんね合体ロボ。俺だって、大好きだよ、こん畜生!!!
今日も今日とてとっても遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ