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28話:英雄にはなれないけれどたった一人誰かのための勇者になら誰にでもなれそうな気がしてくるよね?

 青い空が黒く染まり、闇が世界を包み込んでいく。


『終末の刻来たれレり――我が元へ来タれ、還レ、我に、我に――』


 魔物達がどろりと溶けて、魔石に喰われて消えていく。


「この星に存在する魔石を持つ生命は全て魔神に繋がっている。何せ魔の神だ。魔石を得ると言う事はそれ即ち魔神の信奉者(アラガミに入信)にされてしまうと言う事なんだ。本人にその意思があろうとなかろうと、ね」

「それじゃあ、魔石を持つ魔王や獣人の皆さんも――」

「ああ、全部アレに喰われる。……本来なら、ね」


 空の闇の浸食が緩やかになっていく。どうやらあちらさんも力の集まり具合が悪い事に気が付いたらしい。


「――だけどこうなる事は()()()()想定済みだ。だからここに来る前に全部準備を整えて来た」


 それこそ、俺がこの世界中を駆け巡ってきた理由。


 俺はあの日――大魔王が死んだと知ったあの瞬間に旅を出る決心を付けた。これは元々大魔王と話をして決めていたことだ。


 この世界のすべての魔王と話をして殴り合って友達になってアラガミから抜けさせる。つまるところ改宗さえさせてしまえばその繋がりを断ち切れると考えたわけだ。


 納得させるまで時間がかかった奴もいたけれど、最終的に納得?してくれたから良しとしよう。


「……まーくん、納得って……何したんです?」

「分かってくれるまで叩き続けただけだよ?ビンタで」


 聖剣すら使わず、技すらも使わず、只のビンタで納得させてやった。うん、俺ってばとっても優しい!


『優しいさとは一体……』『最後泣いてたよね……』『そう言う所が我が主』


 おかしい、俺と共に旅をしてきた仲間たち(聖剣と聖鎧と鼓草)の反応が悪い。ただ真顔になってビンタし続けただけなのになぁ……。


『水無瀬、真人――。貴様が――貴様か!!』


 山ほどもある巨躯とは思えぬ素速さで爆風を巻き上げながら巨腕を俺に振り下ろす。風を纏って全力ダッシュで飛び回り、何とか躱す。只の振り下ろの衝撃波で辺り一面が更地になってしまっうって半端なさすぎるんですけれど!


「そうだ、魔神。俺が魔王達を全員改宗させたんだ。魔神ではなく俺の神さま――ヒルコ様に、ね」

『んははは!敬え!崇めよぉ!あ、うん、まだ力ないんでそんなに睨まないで欲しいかなー。ま、真人後頼むぞい!』


 俺の頭にしがみついるヒルコ様が何だか震える声でそう言っている。異世界に来てかなり、というか殆ど力を失ってしまっていたのだけれど、信仰を集めてこちらの神に新たになってもらえればと俺は考えたわけだ。作戦はある程度成功。すっごい薄い信仰なのでちょっぴりだけど、神としての力ほんの少し取り戻すことができたらしい。


「いたるところに祠を作って、御守(おまもり)を渡して、地道にコツコツと布教して来たわけさ。まぁ、本当に数日でよく頑張ったと思うよ俺!」


 涙無くして語れぬほどにとってもしんどかった!なにせ世界中凡ての国だ。ついでにと強そうな魔物にもケンカ売ってたら時間がかなりシビア過ぎて泣きそうだったのはここだけの話。本当によく頑張ったよ、俺!


『無駄ナ足掻きを。魔王達を我ガ呪縛かラ解き放ったとテ、いずれ世界は我に喰わレる――運命』


 空から大量で巨大な魔力の塊が高速で降り注ぎ、サクラちゃんと共にグルングルンと躱して避けて斬り弾く!一つ一つが必殺。当たれば死ぬ!……そういえば俺、大魔王城と一緒に大魔王の間もぶっ壊れたんだけど死んだらどうなるんだ?前の復活ポイントなんてある訳ないし……。ぜ、全力で死なないように頑張ろう!あれ?普通だな!


 と、思った瞬間に四トントラック程もある魔力の塊が目の前にあった。あ、やば、死――


 だが、その魔力の塊は焱が弾けて吹き飛んで消えてしまった。


『真人、油断し過ぎ』『そうだぞ、孫の顔も見せぬうちに消えてもらってたまるモノか!」


 紅の焱が瞬いて、爆炎龍の姿へと至ったフレアとフレイア様が大きな翼を広げて次々にラオグラフィアの放った魔力の塊を撃ち落としていく。


『そうですよ、死んでもいいだなんて思わないでください』『お茶会もまだしていませんしね?』


 シルヴィアとさんが爆風を巻き起こし、振り下ろさんとされたラオグラフィアの巨大な腕を弾き飛ばし、ラオグラフィアが初めてたたらを踏んでこちらを睨みつける。流石はうちの嫁さんと四大精霊!


『小癪な――!』


 放たれていた魔力の塊が実像を持ち、見たことも無い羽の生えた漆黒の化け物へと変じて牙を剥く。


 流石は神、只の魔力の塊から新しい命を作り出しやがった!?


 だがその化け物たちは幾重にも解き放たれた魔力砲により吹き飛ばされて行ってしまった。


「お待たせしました!サテラさんより伝言です!第二作戦へ移行!魔神討滅戦開始とのことです!」

「君が真人君ね!後でたっぷりお話聞かせてもらうんだから!」


 ビオラちゃんと話に聞いていた茜さん……ビオラちゃんのお母さんが光るローブを纏って空を縦横無尽に駆け巡り、他の魔法少女(勇者)と魔王達と共に化け物たちを討ち滅ぼしていく。


 ニッコリとほほ笑んだ茜さんが俺にはちょっぴり怖かった。義母さんとOHANASIか……い、いったい何を言われるんだろうか。


「最早――予言の刻は――過ぎ去りました。選び取り――切り開いた未来です。行きましょう。私たちの明日へ――!」

「んふふー!オレッちの足が成るっす!」


 モフモフの狐耳と尻尾を揺らし、空を蹴って伊代ちゃんが鉄扇で化け物たちの首を切り裂き、公くんはあ炎を纏ってお気に入りの無限流/無手/輪で次々と化け物の頭蓋を砕いて回っている。はたから見ればほほえましい光景に見えなくも無いけれど、あちら側からすれば溜まったモノではないだろう。本当に輪しか打たないなぁ……また今度別の技も教えてあげないとね!


『矮小ナる者達ヨ――すべテは無駄、無駄だ。お前タちハ須らく――我に還ルのだ!』


 咆哮と共にオグラフィアが世界中の魔物達から集積したであろう魔力を一点に集中し始める。見ただけでわかる。アレはどう考えても喰らえば死ぬどころでは無く、魂ごと次元から消失してしまうクラスの威力だろう。受けるのは不可能。躱すことは――俺を含めて皆、できそうにない。


「大丈夫です、ま、まーくん、は私が護ります。私はまーくんの勇者ですから!」


 声を震わせながらサクラちゃんが聖剣を手に俺たち最前線に躍り出る。ああもう、なんてけなげで可愛いんうちの嫁さんは!大好き!カワイイ!


「でも、大丈夫。ここまでは想定内さ」


 キラリ、と空が瞬き巨大な五つの鋼鉄の機械が俺の周りに堕ちてきた。


『――真人さん。お待たせしました。ご注文のユニットです。お受け取りください』

「グットタイミングだよ、サテラさん!」


 そう、これは俺が事前にサテラさんに発注をかけていたユニット。その名も集積型魔術増幅装置、ILOVE嫁さんズユニットである!


「そのネーミングはちょっと恥ずかしいと思います!」

「俺の嫁さんへの愛が詰まった逸品だからいいの!」


 それはすなわちこの世界への愛だ。だから――


「来いよ魔神。全部受け止めてやる」

『あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』


 声にもならない叫びと共に放たれた膨大で莫大な魔力の放射を五つのユニットを花の如く展開させて受け止める。



――巫術/第壱の秘術/八咫鏡-降天伍華(こうてんいつか)/神威(かむい)!!!



「おお、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


『ファーストユニット焔火、大破。セット――ファースト・オーダー!』



 サテラさんの声が耳にセットしておいた木札から鳴り響く。



『セカンドユニット烈風、大破。セット――セカンド・オーダー!』



 眼前のユニットが次々と砕け散り莫大な魔力が眼前に迫って来る。



「がああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


『サードユニット水毬、大破。セット――サード・オーダー!』



 だが、まだ終わっていない。終わらせて、なるものか!!!



『フォースユニット玄能、大破、セット――フォース・オーダー!』



 俺は、俺たちは明日を切り開くためにここに集ったのだから――!



『フィフスユニット、大破。セット――ラスト・オーダー!真人様、いつでも!』



 先ほど受け止めた強大な力。それは全て俺の背に、巨大な五つの巨大な勾玉――巫術/第参の秘術/八尺瓊勾玉-奉天伍華(ほうてんいつか)へ至った。


『征くぞ真人――!』


 ヒルコ様の掛け声と共に背中に展開していた八尺瓊勾玉-奉天伍華を超高速にて回転させながら眼前に迫る魔力砲へと向ける。まだ、まだ受け止める――!


「――我、神の(しるべ)を知る者なり!」


 光が溢れ、大気が震える。すぅと、息を吸うごとに力が己の身に注がれていくのを感じる。


「――(はて)見えぬ世界を識る者こそが、神!」


 それは母が遺してくれた祝詞。俺が、俺と共に来てくれた神ともしも相対することになった時に使うはずだった神殺し。



「成ればこそ、我は神を宿し――今ここに世界を照らす光とならん!!!」



 煌々と溢れ出た光が、力が、ラオグラフィアの魔力砲を凡てかき消し、ついぞラオグラフィアを弾き飛ばす。


『ガぁああああああああああああああああ!?』


 驚きの咆哮と共にラオグラフィアはその巨躯を爆音と爆風と共に地面に叩きつけたのだ。





「 勇   者   降   臨   ! ! ! ! 」





 ――集いし思い、願いが俺をここに至らせた。


 疑神(神でないナニカ)ではない。俺は、今ここに勇者として再臨したのだった。……でも羽衣付きの白と赤の小忌衣(おみごろも)って微妙に動きづらい気がするけど何でこの姿に、と思ったら俺に宿ったヒルコ様がニヨニヨしていた。あんたかい!!


 鼓草を振りき眼前に構える。すでにその姿は竜刃としての姿へと至っていた。


「さぁ、行くぞ魔神――ラオグラフィア!ここからが!!!」


『ボクたちの!』『(オレ)たちの!!』私たちの!!!」「みんなの!!!」「この世界の!!!」



「「「「「「ステージだああああああああ!!!」」」」」」




今日も今日とてとってもっとっても遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

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