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24話:花火大会は家族や友人と行くのが普通だけれど一人で行くのも寂しいけど中々に乙なモノだよね?

 迸る強大な魔力の一閃は巨大な氷の天井をいともたやすく吹き飛ばし、一撃で地上の大魔王城の床面まで抉れさせていた。あ、これ当たったら消し飛ぶ奴だ!


「躱すなんてひどいですね。まだ大魔王城の中にはあなたの知り合いもいるんじゃないんですか?」


 くすくすと柔和にほほ笑むラオグラフィアは黒いドレスを翻し一瞬で俺の首元にその刃を走らせる。咄嗟に反応し、聖剣にて斬り払うとその衝撃波で今度は壁が吹っ飛び地鳴りと共に、辺りが崩れ始める。ちょ、ちょっともろ過ぎないかな!


「あらあら、中々加減が難しいですね。思い切り振り回したいのですが、その前にお城が全部吹っ飛んでしまいそうです」

「いやいや、その前に自分の体ががれきに埋まるんじゃないのかな!?え、大丈夫なの?!」

「問題ありません。瓦礫程度でどうこうなるなら魔神なんて名乗っていません」


 思わず突っ込みを入れてしまっったけれど、それすらもラオグラフィアは楽し気に応えてくれた。ふふ、優しいね!優しさついでにサクラちゃんを返してくれたら嬉しいんだけど!


 幾重にも放たれた魔力の刃を躱して往なして無防備なそのどてっ腹に蹴りをぶちかます。


 無限流/無手/奥義ノ伍/焔虎(ドゥン)-阿羅漢!


 銃弾の速度をも軽く超えるその一撃にて天井へとラオグラフィアを蹴り上げる。けれど、かすり傷すら付いていない。ただ体が軽くて吹っ飛んだだけだ。なんて頑丈な……。


「もう無理です。サクラは私、私はサクラなのです。最早私にはサクラを返してあげることはできません。ええ、ですからあなたが私のモノになればいいのです。私と一つになりましょう、真人。そうすれば――」

「ああ、全力でお断りさせてもらう」


 それは俺の望む幸せではない。もちろん、サクラちゃんが望む幸せでもない。だから返してもらう。


――無限流/刃/奥義ノ壱/武御雷-布都御魂!!


 それは無限なる一へと収束させたその一刀。だが、ラオグラフィアの放出した莫大な魔力障壁に阻まれた。その衝撃波により天井を完全に破壊し、大魔王城の一階の一部がそのまま崩落する。それすらもどうやら意に介していないらしい。これも駄目――ッ!


「ラオグラフィア、お前自身が無理だと言っても俺は必ず取り戻す。俺はそのためにここにいるのだから」

「無駄だと言っています。大魔王の魔石も、サクラの魔石も須らく私になりました。私は――すべてが欲しい。貴方も、大魔王城も人々も、動物たちも、魔王達も、魔物達も、大地も、海も、空も、この世界のすべてにこの世界の外側にはじき出された神々も。ああ、その総てが欲しい。その総てを凡て食べ尽くして――やっと私は救われる。だから、真人。貴方も私のものになって(食べさせて)

「だから、お断りだと言っている!」


 究極の一でダメならと放つは、無限流/刃/奥義ノ弐/天之尾羽張-稜威雄走!魔力に霊力に気まで練りこんだ十閃を一重に束ねた技を更に極限にまで高めた技だ。


「おお、おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 全霊を込めて放ったその技は初めて魔神の魔力壁を切り裂き、その切っ先が届いた――かに見えた。


「無駄です」


 しかし、只の剣の一振りにて俺は弾き飛ばされ、地面にめり込んでいた。技量もあったモノではない。ただただ圧倒的な純粋な魔力。その魔力を刃にのせて奔らせたのだ。それだけで俺は死にかけているのだから笑えない。


「は、はは、まだ、まだだ」


 足りない。足りていない。聖剣もある、聖鎧もある。ただ俺の技量が、俺の魔力が、霊力が足りな

届いていない。俺だけでは届かない。


――それでも俺は立ち上がり聖剣を構える。


「何故無駄な足掻きだと分からないのです?あなたは馬鹿なのですか?」


 ため息を付いてあきれた様子でラオグラフィアが地面へと降り立つ。

 そんな事知っている。百も承知だ。俺は馬鹿で間抜けで惚れっぽくて、童貞のミジンコ野郎さ。


「うん、そこまでは言って無いですけどね?」

「言われる前に言っておけば言われないからね!ともあれ、俺は馬鹿で結構。諦めの悪さだけでここまでやって来たんだ。三つ子の魂百まで。俺は死んでも変わらない。変われない。俺は俺だからサクラちゃんの事を好きになったんだ。サクラちゃんが好きになってくれたんだ。だから、そんな俺がサクラちゃんを救えなければ……嘘だろう?」


 俺の言葉を聞いてラオグラフィアは肩を揺らして笑う。


「そこまで言うのであればこの一撃を耐えて見せてください。そうですね。名づけるならば――魔神の一撃」


 瞬間収束されたふざけるにも程があると言いたいくらいの途方もなく莫大魔力がラオグラフィアの持つ刃の切っ先から巨大な魔力砲となって解き放たれた。これを受け止めろと?は、冗談じゃない。全部美味しく頂いてやるよ。


 残しておいた木札を投げて、幾重にも幾重にも幾重にも第壱の秘術/八咫鏡を展開し受け止める。


「無駄な足掻きを!」

「無駄だとは言わせない!」


 一枚が砕け、二枚が砕け、三・四と立て続けに砕け散った。それでもまだ残っている。まだ――


「重ね、穿て」


 グンとウネリを伴って放出される魔力の量が更に倍々に追加される。そんなモノ、耐えられるわけが無い。


「だからそれを待っていた!行くぞ、鼓草――!」


 凡ての八咫鏡が砕け散り、眼前に昏い魔力の光が迫る。構えるは竜刀・鼓草。その性質は――魔力の吸収である。


「喰らい尽くせええええええええええ!!!」


 その途方もないほどの莫大で膨大な魔力を鼓草がその内へと喰らい、喰らって、刀身がその姿を変える。


 先ほどの八咫鏡が砕ける寸前に生み出した第参の秘術/八尺瓊勾玉たちを凡て己の脚力に注ぎ込み、肉体の限界を越えに超えた速度で鼓草を構えたままに地面を抉りながら眼前の魔力砲の真っ只中を突き進む。


―― 無 限 流 / 混 成 / 奥 義 ノ 零 / 鼓 草 - 冠 菊(かむろぎく) !!!


 光を突き抜け、見えたラオグラフィアの魔力障壁へその刀身を押し込めて、貯めに貯めた呆れるほどに膨大な魔力のすべてを倍返しでお返しして差し上げたのだった。

今日も今日とて遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

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