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17話:神社で多種多様な御守が売られているけれど同じものを沢山買ったらもご利益が更にアップするモノなのかとても気になるところだよね?

 ここはクリュメノスの居住地であるのと同時に俺たちの世界への扉が開かれている場所でもある。


 尤も、俺たち勇者が通ることは叶わず、その境目に落っこちてしまうという罠っぷりである。本当に酷いよね!……現在その扉には闇の泥がヌメヌメと張り着いてはいるけれど、その奥へは進めていないようだ。結界でも貼られているのか、はたまたあちらの世界に拒絶されているのかまでは俺にはわからない。うん、どうなってるんだろうねアレ!


 さて、ここから以前見た神殿……大魔王城に戻る最短ルートへ向かうには裏道に入るのが一番早い筈なのだけれど、やはりというか魔術的な鍵が掛けられていた。


 これあれだよ、扉を開こうと吹っ飛ばしたら連鎖的に中が通れなくなる奴じゃないのかな?目の前のトラップさえ潜り抜ければ楽勝!なんて考えはエジプトの未開のピラミッドに放り込まれたときに亡くなったんだ。本当にね!安心したところに更に罠があるからね!迷宮の設計者ってみんな性格悪くないかな!


「……それを設計したのは私ですけど」

「いえ、アコナイトさんはイイヒトデスヨ?」


 いつの間にか目を覚ましたアコナイトさんにジト目で見られていた。ふふ、そんな目で見ないでください。はい、ありがとうございます!


「まったく、私を護るために兄さんは無茶をし過ぎなんです」


 はぁ、とため息を付いてアコナイトさんは気絶したクリュメノスを膝に乗せてなでなでしてる。ぐぬぬ、何だか羨ましい。俺もサクラちゃんにしてもらいたい……。けれどもそこまでたどり着く道のりはまだまだまだまだ、遠い。うん、一歩ずつ頑張らないとね?


「入り口の鍵はこちらをお使いください。恐らく、私たちが魔神の呪縛から解放されたことはもう彼らに知れ渡っているはず。恐らくはもうすぐここに闇の泥が押し寄せるかと思われます。ですので、お早め」


 見たくないものに蓋をするように、とアコナイトさんがため息を付く。それはすなわち、アコナイトさんとクリュメノスさんがまた無理やりに再び彼らの元に下らされると言う事になる。



――けれどもそれでは流石に助けた意味がない。



「ほい、それじゃあお返しにコレ貰ってもらえるかな?」

「これは……御守、ですか?」

「そう、俺の神様のね。運気上昇、金運アップに商売繁盛、豊作、豊漁守護、家内安全に今は恋愛成就も勉強中らしいから。これ持ってお祈りすれば、運がいい方向に向いてくれると思うよ?」


 渡した御守はアコナイトさんとクリュメノスの分の二つ。これがあれば多少はあの闇の泥避けに使える筈である。何せうちの神様が直接パワーを注いでたやつだしね!


「……なるほど、これはまたよく考えられていますね」

「まぁね。たかが御守、されど御守ってね。俺の元来た道を戻ればライおっさんがいると思うから、上手い事合流して城から脱出して欲しいかな」


 ぽんぽんとアコナイトさんの頭を撫でて。アコナイトさんに貰った鍵で扉を開く。……うん、開くのと同時に奥の方から機械音がガコンガコン聞こえたぞ!やっぱりちゃんと鍵で開けないとヤバイ奴だったよ……流石は大魔王城地下迷宮だね!


「真人さん、最早オウカ様は魔神と一体化してしまっています。いくら聖剣を使ったとしても……」

「知ってるさ。もう、サクラちゃんを()()()()()()()


 これは最早確定事項。


 魔王勇者(グラトニウス)がミックスジュース状態だとするならば、今のサクラちゃんの状態は焼きあがったパンのようなモノだ。混ざり合ってぐちゃぐちゃになっているものを戻すのも無理無茶だったけれど、今度は発酵熟成に焼成まで終わってしまっている。これを混ぜる前の元の小麦と卵、牛乳に分けて戻せというのは不可能を通り越して頭がおかしいと病院に連れて行かれるレベルだろう。


「いえ、その前にミックスジュースを分離して元に戻すのも大概だと思うのですが?」

「んー……そのくらいは頑張れば?」


 アコナイトさんが呆れたような顔でナイナイと手を振っている。いや、人間やろうと思えばできるモノなんですよ!たぶん!


 つまるところ、その頭がおかしいレベルの事は神であっても無理で無茶な事であるとうちの神様が言っていた。それでも俺はサクラちゃんを救える可能性をゼロだとは考えていない。


「……真人さんの中に諦めるという言葉は無いんですね」

「ああ、無いさ。だってサクラちゃんが待ってくれているんだ。俺はサクラちゃんとみんなとまた一緒に暮らせる日々を取り戻す。その為に俺はここまで来たんだから」


 確定された予知は変えることはできない。そんなことは百も承知の上だ。



 けど、()()()()()俺は諦めない。



 確定された予知であってもそれが確定された()()では無いのだから。うん、似たようなこと何回か言ってる気がするなこれ!


「頑張って来てください。……この上には後二人、アリステラ様と魔神が召喚した男が待っているはずです」

「二人同時か……面倒くさいけれどやるしかないか」


 アリステラさんは兎も角として、その召喚された男は恐らく奴――ジャヴァウォックだろう。というか、このタイミングでアイツが出てこないわけが無いよね!

 ジャヴァウォックと直接にやりあったのは修羅の国でのあの一度きり。魔法学園のプラトニアスの時も聖都の魔王勇者誕生時も奴が暗躍していたに違いないのだから。


「アリステラ様の実力は技術だけで言えば大魔王様に匹敵します。恐らく四天王最強と言っても過言ではないでしょう」

「前にサクラちゃんから自慢話で聞いたから知ってるさ。何せサクラちゃんのお姉さんだからね」


 サクラちゃんはお姉さんであるアリステラさんの自慢話になると止まらないところが割とあった。


 優しくて強くて努力家で、義父である大魔王を影で支え護っているものすごく立派な姉さんなのだ、と。それ出で甘いものや可愛いものが好きだったり、可愛いところが沢山あって格好良くてサクラちゃんの理想のデキル女性像なのだそうだ。確かに綺麗で格好いい人だよねーと言ったらなんだかすごい顔をされた。うん、チガウカラネ?別に好きになったとかじゃないからね?と何とかなだめたのも今となっては懐かしい思い出だ。


 しかし、闇の泥によって更に強化されたアリステラさんはもしかすると大魔王(グリム)クラスの化物になっていると思うと割と気が重い。そんなアリステラさんと一緒にジャヴァウォックまで来るとなると――ふふ、マジで怖いなぁ……。


「アコナイトさん。俺が来た道を通ってライおっさんと合流してね?ライおっさんが外に出ようって魔氷削りを頑張ってると思うから」


 多分この後この大魔王城の中がもっともっと危険が危ない事になるからね。速めの脱出をお勧めするよ!


「わかりました。兄さんを抱えていくとしましょう。……真人さん、お気をつけて」

「ん、ちょっと頑張って来るよ」


 ひらひらと手を振って、聖剣をしまって開いた入り口へと潜り込む。


 ……今度は登り階段か。くそう、絶対にこれ嫌がらせだよ!このダンジョン作った製作者絶対に――あ、うん、とっても綺麗で可愛くて聡明な方でしたね!はい、すみませんでした!!


 俺は振り返る事無く全力脱兎(ダッシュ)でその階段を駆け上がって行ったのだった。

今日も今日とて遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

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