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14話:秋のお彼岸の後って季節的にも冷えてくる時期だからか何とも言えない心寂しさを感じるよね?

 長い長い螺旋階段を下りに下って降りていくと、見慣れた地底湖にたどり着いた。

 目的地に会談で行くはずが、その更に下に送り込まれてしまった感じだ。まったくもって不親切な設計過ぎないかな!



 前入った裏口は流石に閉じられていて入ろうと龍刀・鼓草を振るってみたけれど、残念ながら完全に岩で閉ざされてしまっていた。



 仕方がないのでそのまま道なりに奥に進んでいくことにする。ここの作りは神域と同じで、きちんとした道に沿って行かなければ元の場所に戻されるという理不尽なモノに成り代わっているようだ。



 そして漏れなく魔物達も沸いてくれている。――これまた闇の泥を纏って。



 ここを守護しているのは大魔王四天王が一人、冥府の番人クリュメノス・エルステインその人だ。

 アコナイトさんのお兄さんであり、重度の引きこもりを併発している筋骨隆々なオタクなお方である。


 以前戦った(じゃれあった)時は圧勝することができたけれど、それは向こうも重々承知の上。四天王が同じ轍を踏むとは思えない。特に今、彼の上司は魔神。泥に汚染されてしまった彼がどんな手段を取って来るか正直予想もつかない。うーん、ヴォルガイアに湧いて出た邪龍たちの群れとかは勘弁して欲しいなぁ。あいつら数が多いだけじゃなくて無駄に硬かったしね!尤、今は聖剣もあるし鼓草もある。木刀だけで頑張っていたあの頃とは違うのだよ!あの頃とは!


 狭い通路を埋め尽くさんばかりに溢れ出す魔物達をまとめて無限流/刃/嵐で斬り飛ばし、魔石を拾えるだけ拾いつつ奥へ奥へと進んでいく。中の道は迷宮となっており、時折その構造を変える事もしているとのことで前来た時と同じと言う事が無いらしい。いつも通りなら俺でも迷いそうだけれど、今回は聖鎧さんが着いている。


『最奥へ吹き抜ける風の道は掴んである。主は我の導くままに進めば良い』


 自動マッピングを行いつつ、更にはナビゲーションまでしてくれるなんてチート過ぎないかな!この子もっと早く欲しかったよ!主に最初のシルヴィアとの戦い辺りに!まぁ、もう今更な話なんだけどね。


「やはり、獣魔王を破って来たか。――……勇者、真人」


 以前着ていた可愛らしい萌え萌えなTシャツではなく、黒い鎧と兜を身に纏ったクリュメノスさんとその横にはおどろおどろしい顔を丸ごと覆う黒いマスクを取り付けられたアコナイトさんが泥の溢れ出す最奥の間に並んで立っていた。どうやら、待たせてしまったかな?


「待たせたというほどでもない。むしろ想定よりも早いくらいだ。どうにか獣魔王で止まってくれぬものかと思っていたのだが……世の中ままならんものだ」


 そう言うとクリュメノスさんが闇の泥から巨大な鎌――ハルバードを生み出し、その手に収めた。


「何せ巫子である君は俺の天敵と言っていい。その力を振るわれるだけで俺の肌は焼け解け、なすすべなく敗れ(冥界へ)去るのみだろう。――だが、俺としても大魔王四天王が一人と言う矜持(きょうじ)がある」


 ハルバードを天へ掲げると、周囲の闇の泥がブクブクと泡立ち出し、その内から次々とナニカが姿を現す。


「彼らはこの世界で死した強者(つわもの)たちだ。無論、転移者もその中に含まれている。――見知った顔もいるだろう?」

「……――ああ、本当に趣味が悪い」


 俺の声が怒りに震えるのも無理は無いだろう。


 目の前に姿を現したその()()()は――紛れもない俺の師匠だったのだから。


「は、はは、ふざけるなよ。俺に師匠をもう一度死なせろというのか?」

「その通りだ。殺さなければ貴様は死ぬ。何度でも死ぬ。分かっているだろう?迷う暇はないぞ水無瀬真人。最早猶予は無い。お前はその覚悟を示さねばならぬ」


 総勢十五人ほどであろうか?泥により肉を得たその強者たちは各々に武器を構える。師匠が持つのは刀――見覚えがあるあの形は紛れも無い、師匠の愛刀であった鬼灯丸だ。


「――構えろ、真人。こうしてまた相まみえたのだ。お前がどの程度成長したのか見せてみろ」


 ぼそり、と呟くように師匠の口が動く。


 なるほど。その姿かたちをなぞったモノではない。コレは紛れもない、師匠の全盛期の姿だ。この泥人形には紛れもなく、師匠の魂が入れられている。


「本当に――どうしてこうなってしまったんでしょうね、師匠」


 もう一度こうして言葉を交わすことのないと思っていた彼に俺は問いかける。


「俺とお前が選び取ってきた結果って奴だ。何を後悔する必要がある。何を戸惑う必要がある。俺が俺の道を突き進んだように、お前もお前の道を突き進め。――その目。もう見つけたのだろう?真人、お前自身が見つけた道を」


 ああそうだ、見つけた。


 愛すべき人たちを。愛すべき世界を。守りたいと、愛したいと思うモノを。


「二度目の人生、なんです」


 聖剣では無く、鼓草を構える。聖剣では語れない。俺の選んだ道を。俺の通っていた物語を。


「だから、もう二度と後悔なんてしないって決めたんです」

「は、いい目をする。お前と出逢った日を思い出すな」


 カラカラとあの日の――俺が師匠の腕を切り落としたあの時のように師匠は、笑う。


「あの時の俺じゃあお前の剣は受けられなかった。だが、今ならできる。さぁ征くぞ真人」

「はい、よろしくお願いします――!」


 それは遂げることのできなかった師匠との、見合い稽古。これはその続き。


 俺は今度こそ師匠に俺の成長した姿を見せてやるのだ。

今日も今日とてとってもとっても遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

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