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10話:希望の星とか呼ばれると緊張しちゃうから満天の星空の端の端に隠れさせて欲しいなって思ちゃうものだよね?

 風を追い越し、雲を抜て、一筋の流星となってその闇を切り開く。


――無限流/刃/奥義ノ伍/素戔嗚(スサノオ)-嵐天破軍(らんてんはぐん)!!


 超高速にて飛来して目の前に見えたその総てのプラントたちを丸っとまとめて一網打尽にざんざんばらりと切り伏せていく。その数は――指折り数えるのも面倒になるほど。いや、本当に多すぎだよ!


 通信で聞いていた通り大魔王城下すべての人達がプラント化してしまっていたらしい。この地に長らく住んでいたことで普通の人間でさえも魔石に対する親和性が高くなってしまっていたのだろう。なにせここは大魔王城下――魔神の封印された土地だ。そうならないわけが無い。


 地面に降り立ち、大きな龍もついでに薙いでそのままの勢いで街のプラントたちの位置を掌握――魔物は……うん、みんなに任せることにしよう!


 風に乗ったまま地面に足を付けることなくその刃を振るう。


 無限流/刃/御雷、御雷、御雷、御雷、御雷、御雷、御雷、御雷、御雷、御雷、御雷、御雷、御雷ぃ!!


 連続して鳴り響く雷の如く高速にてプラントたちの魔石を斬り裂き、斬り抜け、斬り飛ばし、曼荼羅の如く光の筋を描きながら人々をその呪縛から解き放つ。


 放つ技の一つ一つが無限流/奥義終局/人技/百櫻繚乱と同等クラスの“事象を切り裂き望むべく事象に斬り分かつ”という概念を持った一撃。トルゥース・()ジ・アンサー()曰く、折れの技を覚え導きだした結果(答え)ジ・アンサー(聖剣)に反映させれているとの事。流石は聖剣!俺の頑張りをすぐに覚えてくれちゃって!ちょと泣いちゃうぞぅ!


 とはいえ、便利なモノを使ってこその文明人。無いと逆にこんな数どうしようもないし仕方ないよねと開き直りは大切なのである。


 土煙を多量に巻き上げ、くるんくるんと回転しつつ勢いを殺してようやっと地面へと降り立つ。


 トルゥースで探知を広げ、再確認。……足を棒にして飛び回ったおかげか残りのプラント反応は分厚い氷に閉ざされた氷の中だけになっていた。あとの残りは超多量に残された魔物達。こいつら黒い泥を被っているせいかプラントがいなくなっても消えておらずぴんぴんしている。


「兄さん!おかえりなさいきーっく!」

「はは、妹よ!その一撃は普通に食らうと死ぬ奴だからやめて欲しいぞ!」


 息を切らして飛び蹴りをかましてきた真理の飛び蹴りを受け止める。衝撃波で土煙が舞う威力って相当だからね!


「兄さんなら大丈夫かなって思って」

「過度すぎる信頼度!まぁ、受け止められるけど」


 ひゅぅ、トルゥース・ジ・アンサーが無ければ危なかったぜ!


『無くても大丈夫だろうに』


 まったく、とため息を付きながら龍の姿のうちの奥さん(シルヴィアとフレア)たちが降りてきた。えっと、ただいま?


「ん、お帰り」

「はいはいお帰り。思ったより早かったけれど、首尾は?」


 人の姿に風と炎を舞い上げて戻ったフレアが俺に抱き着いてくる。


「上々かな。あとは結果を御覧じろってところさ。まぁ、これでどうにかなってくれれば御の字で。あとは俺らの頑張り次第さ」


 言って、氷の城に閉ざされた大魔王城を見上げる。


――中からはもう大魔王の……グリムの気配はもう、無い。


 代わりにサクラちゃんのようでそうでない()()がそこにいる感じがした。


 それこそが魔神。この世界を凡て喰らい尽くす、星の破壊者。


 斃さなければこの世界に最早未来は、無い。


「おかえりなさい真人さん」

「この間ぶりだね、義息子くん!」


 民家の屋根から飛び降りて来たのは魔法少女姿のビオラちゃんとそのお母さん――茜さんだった。お、お久しぶりです義母さん!って、ビオラちゃん変身してる!?


「はい、神様が私のチートを取っておいてくれたみたいでして……」

「愛しの真人くんの役に立ちたいからって後方にいたのに態々列車に乗ってはせ参じたって訳。幸せにしてやらないとぶっ飛ばすからね☆」


 ニッコリとほほ笑む茜さんの明るい笑顔がとっても怖い!怖いけれども、それだけビオラちゃんの事を愛していると言う事なのだろう。というか、俺だって同じくらい愛してる。サクラちゃんやフレア、シルヴィアに伊代ちゃんもだけれど、同じくらいに大好きで大切でもういなくてはならない存在なんだよ!……元の世界では最低最悪の五股男ですけどね!


「分かっているならよろしい。元の世界の基準何てこっちの世界で当てにする方が間違ってるしね」


 あははーと茜さんが軽く笑い飛ばしてくれた。本当にいい義母さんだ。


『真人様、先ほどは――お救いいただき、ありがとうございました』


 伊代ちゃんの声が通信用の木札から聞こえてくる。鈴の音が聞こえているのを鑑みるに、禊祓をこの間にも行っているのだろう。


『ううん、遅くなってごめんな。本当にならすぐにでも行って抱きしめてやりたいところだけれど――』

『はい――。分かっています。そのお言葉だけでも――伊代は嬉しく思います』


 ああもう本当にこの子はなんでかわいいかね!絶対に全部終わったら抱きしめる!


『楽しみにしております。――真人様、城を覆う氷が砕ければ、恐らく……』

『ああ、魔神が完全に復活する』


 サクラちゃんに宿った状態の魔神はまだ完全な状態ではない。この城の地下深くに封印されたその肉体にサクラちゃんを吸収して初めて、本来の魔神として復活を遂げることができる……らしい。まぁ、グリム(大魔王)が言っていたのだから間違いないだろう。


 だけど今はまだサクラちゃんは魔神に取り込まれてはいない。


 この氷の塊こそがその証明。


 だからこそ、砕け散る前にサクラちゃんの所へ行かなければならない。ならないのだけれど。


「ボクらではあの氷は壊せなかった」

「己の焱でも、母様でもダメだった」

「みんなで魔力砲ぶっぱでも、ね」「はい、駄目でした……」


 そう、どうやってもこの氷を砕くことができない。砕いたとしてもその瞬間に更なる泥があふれ出かねない訳だ。……けれども俺は。俺だけが行く手段を持っている。


「死に戻り……?」

「俺が死ねば大魔王城の中に飛べる。というか、もうこれしか方法が無い」


 死ぬのは死ぬほど嫌だけれど、サクラちゃんを救えないのは死ぬよりも嫌だ。だって、そんなの死んでも死にきれない。


「兄さん……」

「ごめんな、真理。ちょっと兄ちゃん大好きな人の所に行ってくる」


 泣きそうな顔の真理の頭をポンポンと撫でて聖鎧(トルゥース)を聖剣の鞘に戻す。


 本当なら俺の死ぬところなんて二度も見せたくは無かったんだけど。悲しいかな、もうそんなことを言っている余裕はない。


「ちゃんと戻ってこいよ」「待ってる」「行ってらっしゃいませ」『――信じています』


 嫁達の言葉を胸に俺は鼓草の刃を己の首に当て――ひと思いに切り裂いたのだった。

今日とてとっても遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

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