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8話:

「ちゅー!無限流(むげんりゅー)/無手(むて)!/(りん)!輪!りーん!あわわわわ……あ、り、りーん!」


 公くんが空高くから襲い掛かる鳥型魔物達の頭をくるんくるんくるくるるんと回りに回って回転しながらボールのように跳ね回り踏み砕いていく、アレは絶対目を回してる奴だ!


『フレア、お前が初めて眷属を作ったと聞いたが、なんぞ愉快な子だな』

『だけどいい子。だから眷属にした』


 お母様はそうか?というけれど、(オレ)は知っている。自分がただの小さな魔物でも大切な人を護ろうとがんばった真人みたいな奴だって。まぁその前にのんびりご飯食べて駄弁るのが楽しい奴だったからだというのはここだけの話だけれど。アークルに帰ったら城下町の食べ歩きの予定。真人も一緒に絶対に行く。そう、真人一緒に。むふふふ……。


『娘の顔が緩んでおる。嬉しい事だが、戦いにはまじめにの?』

『ん、問題ない。アレから(オレ)の炎も鍛えぬいている』


 牙を剥く複数の龍型魔物を展開させた炎の玉を射出させることで撃ち落としていく。炎をブレスとして吐き出すのではなく、炎を常時待機させて瞬間に反応ができるようになったのである。これはシルヴィアの助言で吐くという動作が隙になるから対応できる技を考えた方がいいと言われて考えた技だ。シルヴィアみたいに風の盾ならぬ炎の盾を常時展開できれば強かったのだけれど、魔力の消費があんまりに高いのでやめておいた。省エネ大事。とっても大事。


「おお、フレア様がまともに炎を!」

「あれ程まで戦いに無関心だったのに!」


 後ろの方から母様の部下たちの声が聞こえる。

 そんなに無関心だったわけでは無い。何と言うか、面倒くさかっただけというか、家庭教師であったイグニアが怖かっただけというか……。はい、さぼってましたゴメンナサイ。


 けれども真人たちと旅をするようになって、魔法使いのみんなとわいわいしながら戦い方を考えるのが楽しかったからこそこうして炎の扱いが研鑽されたのだ。そして、公くんの真人の戦う姿に憧れて変化したのあの無茶苦茶で破天荒な戦い方も又、己に間違いなく影響を与えた訳だ。


――そう決して、魔法少女ってかっこいいなとか、フリフリの衣装とか可愛いなとか、そんな風に思ったからではない。決してない。……よし、言い訳完了。お母様とのお叱りは後でうけるとしよう。


 炎が舞い散り、龍の姿から人の姿へと変じる。――その身姿はまるで魔法少女の如き姿に。真人の強い希望により、下にはキッチリとスパッツをはかせてもらっているけれど。うん、なんでかな?パンツじゃダメなの?と聞いたらフレアのを他の人に見せたくないからと照れながら言っていた。下着姿のバージョンは真人の前限定なのである。


「今度逢った時にお説教ですね」

『ま、まぁ、そう言うてやるな。夫婦の営み事だしの?』


 お母様とイグニアの視線がとっても痛い。だけど夫婦の営みって一体なんのことなのだろう。今度二人の時に真人に聞いてみるとしよう。


 炎を足に纏い、空中を高速にて駆け抜けて魔鳥たちを炎で薙ぎ払い、勢いのままに正面へと蹴り放つ。


 無限流/無手/奥義ノ伍/焔虎(ドゥン)


 超高速にて打ち出す炎を纏いし蹴り技である焔虎は炎と衝撃波にていかなるものを打ち貫く。たとえそれが鋼鉄であろうとも。


「うひゃぁ、十体まとめてとか流石姐さんっす」

「集中する。まだ敵は減っていない」


 それどころか増えている間である。倒しても倒しても切りなく増えていく魔物達は既に空を覆うほど。中には――龍種まで混じり出している。


「……公くん、行ける?」

「もちのろんっす。あ、お餅食べたい。後で絶対食べるっす!」


 ぐっと親指を立てて二人で炎を纏う。チーズ餅はとろとろ系最強の味!お醤油掛けると最強!!


「二人してなに話してるんでしょう……」

『じゅ、呪文?』


 もちろん呪文ではない。単純にやる気アップさせてるだけだ。うおお、ベーコンあっても美味しい!!


 グッと足に力を籠め、空を蹴り出して公くんと同時に空を駆け抜ける。炎を散らし、拳を震わせ、くるんくるんと蹴り飛ばし、戦場を縫うように炎が線を描く。


 目の前に敵しかいない場であれば龍の姿で公くんと一緒に焱をぶちまけてしまえばそれで済む。


 けれども、現状は敵味方の入り混じる乱戦。


 そんな中に龍の姿で突っ込んでしまえば見方諸共に蹴散らしてしまいかねない。実際、真人を何度か巻き込みかけたこともあったし……。

 だからこそ今の姿での戦い方が現状はベストと言えるだろう。決してフリフリの可愛い衣装が着たかったのが理由なだけではない。ちゃんとした理由があるのだ。……あるのである。


 そして、この戦い方にはまだ利点がある。

 公くんとの意識の連結ができるようになるのがその一つだ。現状、己と公の意識は戦場では無く二人で作り出した意識空間の中にある。さながら二画面プレイを二人でゲームしているような感覚で、互いの位置やどういう技を使っているかが瞬時に手に取るように分かるのだ。

 だからこそ、完璧に息のあったコンビプレーが可能となり、己の焱の力の譲渡も素早く行えるためにこんな事までできる。


「「ダブル――バーニングスマッシャー!!」」


 二人で手を繋いであらん限りの火力を敵しかいない眼前に向けて解き放つ。技名は二人でつけたオリジナル。叫ばなくてもできるけれど、叫ぶと威力がなぜか上がった。不思議だけど事実だから仕方ない。


 直線状に放たれた焱を振りぬいて薙ぎ払い、魔物たちを一挙に焼き尽くす。これで少しは減った……と思いたい。


「思いたいけど減ってないっすね……」

「だね……」


 お疲れ顔の公くんがため息を漏らす。空に浮かび上がっているプラントたちを護るように魔物達がその身を呈している。いくら焱で魔物達を消し飛ばそうとも、アレがある限りはいくらでも湧いて出てきてしまう。けれども、中々にそのプラントの数が減って行かない。


「だけど、やるしかない」

「ん、もちろんっす。真人様の特製特大クリームブリュレチーズケーキもまだ食べてないんすから、これじゃ終われないっす!」

「何それ美味しそう」


 人型モードな公くんの背丈ほどもある、大きなチーズケーキの想像図が現れて思わずよだれを垂らす。い、いけないいけない。ここはまだ戦場。しゅーちゅー!


 再び二人で炎を纏って蹴りを放つ。サクラが待ってる。だから、己は、己たちは負けない!

今日も今日とてとってもとっても遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

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