3話:
神とは一体何なのか?
曰く、世界の創造者であるとあるモノは言う。
曰く、絶対的な強者であるとあるモノは言う。
曰く、世界の守護者であるとあるモノは言う。
それはどれもが当てはまっていて、どれもが当てはまっていない。
何せ神を自称する輩は一人二人ではなく幾多数多に存在するのだ。それ一つ一つが右に倣えで同じ存在であるかと言えばそうではありません。
剣士としての資質を高めに高めて人としての枠を逸脱して武神となったモノもいれば、魔法により世界の基軸を生み出し、その圧倒的な魔法知識と解析能力により魔法の世界の魔法システムそのものと成ったモノもいました。
私をこの世界に呼び出した神はデウスエクスマキナ――自らの肉体の全てを機械に置き換えて行き、その果てへとたどり着いたせいで世界から零れ落とされた存在、万物の工作物の神である機械神でした。
機械神の起こした機械文明。その最盛期に私は召喚された私は、同時期に召喚された仲間たちと共にロボたちを操縦して、襲い来る魔物達と闘いの日々を過ごしていました。
魔神を倒すユウシャの一人として――ではなく、機械神のその器となるためだった気付いたのは、仲間のユウシャの一人が身も心も乗っ取られたのを偶然にも見てしまった時でした。
私たちを救ったはずの神は自らの欲望のため、使い捨ての道具として私たちを使っていたのです。
だから――私はその神に反旗を翻しました。仲間の体を奪い盗り、降臨した神との戦いに備えて作り上げたのはチートではなく、私たちの知識と技術で生み出した機体。
それこそがルクスシリーズ。神をもうち滅ぼす希望の光でした。
「そして、その集大成と言うべきものがこの基地という訳です」
「ははは。まさか、まさかあの地下基地そのものがルクスシリーズだったなんて思いもしませんでしたよ」
興奮冷めやらぬという声でアーリアが鼻息荒くそう言います。
そうでしょう。そうでしょうとも。全長三千メートルにも及ぶ広大な基地自体がルクスシリーズだとは思わなかったでしょうとも!
その名も移動基地ルクス・サンクチュアリウム!
時速百キロメートルでの自走、そして浮遊魔法を使用しての空中移動まででき、また自衛装備として魔導砲と多連装ミサイルも装備!更に広大な基地内には全長五メートルほどもある魔導ゴーレム二百機が配備され、ルクスシリーズの補佐機体として自動同時可動させることが可能になっているのです!
ちなみに魔導ゴーレムには魔石を使用してはいますが、魔石を意識核としておらず、完全機械制御型の機体である為魔物とはまた違うモノになっているところがこの魔導ゴーレムたちの特徴です。
ちなみに私がまだ勇者でした頃の機体は流石に古すぎたので、現在はそのほとんどが最新機たちがその中に内蔵されています。数体だけ……そのころの仲間たちの機体だけは改修していたりしますが、電源は入らないようにしていますので、使う事も無いでしょう。
「……ちなみ、変形するんですか?」
「ふふ、どうでしょう?」
「合体、するんですね?」
「そこはまだ言えません」
「グランシップも空中戦使用に改造したとお聞きしたのですけれど、本当ですか?」
ギクリとして目をそらす。いえ、そんな事はありません。あれは移動商船。所有はアークルのモノ。私個人が同行できるものではないのですから!
「したんですね?」
「シテマセンヨ?」
く、この子まだ十二になったばかりだと聞きましたのになんて勘をしているのでしょうか!いえ、待つのです私。この子はゼブル家の一員。合体と変形と改修、そして最終決戦使用だなんて言葉に弱い筈っ!何せ、私の古い――と、この話はまぁいいでしょう。
――魔王バアルの先々代の事など最早誰も知ることも無いのでしょうから。
「それで、幾らほどかかったのです?」
「そうですね、ざっと――……玲さん、いつからそこに?」
「変形するんですか?あたりからですね。グランシップの改修費をサテラさんのポケットマネーから出していただけていたのなら構わない……いえ、とっても構うのですけれども、一体どこからその資金を拠出させたのです?」
なんだか青い顔でアークルの文官のトップになった玲さんがこちらをジト目で見られています。
それは、秘密です♪と答えたいところですが今の彼にそんな事を言った日には新機体の開発担当から外されてしまうに決まっています。それだけはどうにか避けなければなりません。
……本当の事を言ってしまえば、新規開発した魔導ゴーレムを様々な国や企業販売したお金と追加武装とメンテ費で稼いだお金を全部使った上で、借金を少々したというところ。ええ、全く問題ありませんね!
「ありますよ!あの魔導ゴーレムって共同開発でしたよね!?なのに何で全部使ってるんです!というか、借金また増えてませんか!?」
「大丈夫です。魔導車の開発も同時期に行っていまして、ええそれがいい値段がつきそうですので」
とはいえ、皮算用であるのは間違いありません。ふふ、背中がひんやりします!
「はぁ……。ともあれこの話は真人さんにもしてくださいね?……それで、魔神には通用するんですか?」
「……正直言って分かりません。神を屠ったモノから更に改修は加えましたが、魔神をうち滅ぼせる程の威力が出るかと言われればまだ疑問が残ります。大魔王様から以前からお話を聞いて、幾度もルクスシリーズたちにも改修を加えています。しかし、それでも――」
不安が残る。それほどまでに魔神とは強大なのです。なにせ、あの大魔王様であっても滅ぼすことができず、封印したほどの化け物。私の持つすべての武装を使ってやっとその力の一端に届くか届かないかと言ったところでしょう。尤も、まだあきらめるつもりは毛頭ありませんが。
「分かりました。費用に関してはこちらも考えておきましょう。ある程度は、ええ、ある程度ですからね?こちらの負担もやぶさかではありません。真人さんも、できうる限りは支援してあげて欲しいと言ってましたし。……頭を抱えていましたけれど」
真人様……!思わぬところからの後方支援に思わずキュンとします。今度逢った時こそ、ふふふ♪
「なんだかサテラさんが明後日の方を見て口を綻ばせいますが、いい案でもうかんだのでしょうか?」
「たぶん、よからぬことを考えているのでしょう」
む、よからぬこととは失礼ですね。私の将来設計をしていただけです。これでもまだ乙女なのですから。なにせ――勇者の記憶は最早記録でしかありません。つまり、私の精神年齢は――……はい、考え無い事にしましょう。
「あら、今度はしょげてしまいましたわ」
「たぶん、想像以上に想定以上だったのでしょう」
呆れ顔の玲さん、その通りですが言葉にしないで欲しいです。うう、乙女として私も早く何とかしないと……。折角第二の――基、第三の人生なのですから!
今日も今日とてとっても遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ




