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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第九章:白銀の煌めきと勇者な執事。いいえ、光る蕎麦はありません!
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35話:台風の前に備えは重要だけどおにぎりとコロッケはどう考えても外せないモノだよね?

 多い多い数が多い!いくら倒してもキリがない、終わりがない、果てが無い!

 殺しつくしたと思った瞬間には教会から復活したプラントが現れてすぐさまに魔物を吐き出し始める。魔物を倒しても、プラントを潰しても唯々こちらが摩耗していくだけ。こんなのどうしろって言うのよ!


 そして極めつけはこれ。


「真理ちゃん!」


 アイリスちゃんの声に反応してその場を飛びのくと、魔力の塊が巨大なビームとなって建物ごと薙ぎ払って行った。ふふ、レキちゃん?何で異世界なのにビームとか撃ってるんですかね!まぁ私も撃つけどさぁ!


『ええい真理、見てられん!儂に変われ!儂に!』


 耳元でぬいぐるみなヒルコさまがワーワーと言ってくるけれどもそんな暇が全くありゃしない。動くのを辞めれば即死。近くの教会にセーブポイントを設定してもらっているけれど、死ぬとか絶対に嫌だし!まだゼロ死なんだし!


「ぎ、ぴ、じゃ、邪MA、シね。死ネ。SHIネ。し、NE」


 レキちゃんは壊れたような声を出しながら無尽蔵に魔法を放ち続けている。何で魔力が尽きないのかな?アレくらい撃ちまくったら私でも立っていられないくらいにふらっふらになるのに。


「何か絡繰りがあるのでしょう。彼女のチートはマジックスキャン。魔法解析(マジックスキャン)。一度見たり学んだりした魔法をすぐに使う事ができるモノです。つまり、知識チートという訳です」


 シレーネさんはそう言って、私の目の前にいた巨大な魔物を空から見下ろすレキちゃんに向けて投げつけたのだけど、無慈悲な魔力砲でその魔物は跡形も無く消し飛ばされてしまった。


「それじゃあ取り付いてるあの鬼みたいな何かのが絡繰りって事かな?でもあれ何!?」

「修羅の国に現れた黒い呪詛に似ていますが確証はありません。アレを付与したのは邪神を崇拝する組織――アラガミです」


 アラガミ!なるほどなー!そう言えば兄さんもそんな奴がいるって事を言ってたような気がしなくもない。はい、ごめんなさい。自分には関係ないと思って聞き流してました!


「流石真理様、ダメダメですね」

「ダメダメなのに流石って褒めてないと思うな!」


 何だかジト目でこっちを見ながら沙夜は魔物の首を斬り飛ばしていく。器用なことしてないでちゃんと前見て戦って!?


「それにしても本当にどうすればこの騒ぎって収まるの?」


 息を切らして何体目かもわからないオークの顔面を粉砕する。ゴロゴロと転がる魔石を全部回収したらひと財産になりそうだけど、そんな暇があるなら拳を振るって行くしかない。


「本来であればプラントを倒しつくしてしまえば終わりの筈、なのですが……」

「プラントの素体になっているのはユウシャさんたちなのです。だから、死んでも復活してしまっているのです」


 カトレアちゃんとアイリスちゃんが魔法で私たちを援護しつつ杖を振り回しながらそう答えてくれた。

 ええと、つまりどう頑張っても終わりがないって事ね!これ逃げるしかないんじゃないかしら!泣きそうなのを堪えてコボルトを踏みつけて蹴り飛ばして拳を叩きつける!


「ですが逃げればこの土地にいるすべてのユウシャがプラント化を免れません。そうなってしまえば――世界が終わります」

「だけど、どうすればいいのよ!」


 再び放たれたレキちゃんの魔力砲を躱してプラントに当てさせる。殺しても復活するからって味方ごとって本当に容赦ないよ!


「私たちができるのは封印くらいなのです。ですが――」

「それには大量の魔力と時間が必要になります。ですので、正直現実的では……」


 カトレアちゃんとアイリスちゃんの声が震えている。


 ――二人も怖いんだ。ううん、この場にいるみんなが怖い。私だってすっごく怖い。このまま全部が終わってしまう。何もできず、護ることも救う事も出来ず、全部、全部が……。


「ですが、諦めるのはまだ早い、です!デュミナスアクア――ヒーリングリキッドボール!」

「がもご!?」


 唐突に現れたのはビオラちゃんだった!青色の球体を思い切りレキちゃんの顔に投げると頭全部をすっぽりとその球体が包み込んでしまった。もがもがと藻掻いて外そうとしているけれど、液体だから掴むこともできない。え、えげつないよ!?


「んでもって!吹っ飛べ!ハートぉショック!」

「がぼぉ!?」


 続いて現れた桃色の旋風がレキちゃんのみぞおちをライダーキックよろしくジャンプ蹴りで吹っ飛ばし、そのまま地面へと叩き落してしまった。い、生きてるかな、あれ……。


「よし!」

「いや、よしってどなた様です?」


 フンスと鼻息荒く、ビルの上に仁王立ちする桃色な彼女に私は問いかける。


「初めまして、真人さんの妹さん。私はサクラちゃんをさらっちゃった犯人にさせられた七竃撫子です!」


 わかった、こいつをぶん殴ればいいのね!兄さんの代わりに一発思いっきりぶっ飛ばす!


「待って!?違うから!私悪くなあべし!」


 問答無用でぶん殴る。よし、悪は絶えた!


「真理さん、落ち着いてください。撫子さんも被害者のようなモノなのですから。まぁ完全に無罪とは言い切れないのですが」

「ぐす、分かってるわよぉ……。ちゃんと償うからぁ……」

「はいはい、きりっきりと働いてもらうからな」


 ライガさんが地面に突っ伏す撫子さんの首根っこを引っ張って立たせてあげていた。話を聞く限りライガさんも被害者なのに優しいなぁ。


 細かい話は後にするとしてここにきて増援は正直とっても助かる。レキちゃんは動かなくなってしまったけれど、一向に減る気配のない魔物群れとプラントたちを見下ろす。


「あいつら、ユウシャを喰ってプラントにしてる……」


 なるほど一向に減らない訳だ。倒しても倒しても復活し、その上にプラントたちは自らの倒したユウシャ達を喰らって自分と同じプラントにしてしまっていた訳だ。ゾンビよりよっぽどたちが悪い。というか、ゾンビの方が善意でやってる分ましすぎるよ!


「こんなの、もうどうすることも――」

「待ってください。なんですか、あれ」


 アイリスちゃんの指さす先――空の果て、雲を切り裂いて、白銀に光り輝くナニカが落ちてくる。アレは――流星?


「違います、アレは!」


 墜ちてきた流星は急激に角度を幾重にも変え、地面に墜落するギリギリの低空飛行でソニックブームを巻き起こしながら私たちの傍を突き抜けて行った。


「――兄さん?」


 はっきりと見えた訳じゃない。だけど私はそうだと思えたのだ。


「真理さん、プラントが!」


 くいくいと私の布面積の少ない衣装をカトレアちゃんが引っ張る。うん、ズレるとポロるからあんまり引っ張らないでね!と言う言葉を飲み込んで振り向くと、あれ程苦労していたプラントが消えてその場に裸女の人が倒れていた。まさか、プラント化を解いた?今のすれ違った一瞬で?


 だけど、まだ魔物達は健在のようでワラワラと私たちの周りを取り囲み倒れているプラントだったユウシャを回収しようとしていた。


「させない。兄さんが助けた人は絶対に私が救う!」

「はい、絶対に」

「私だって、勇者なんだから!」


 気付けば、魔法少女が五人。ビオラちゃんと私と撫子にアイリスちゃんにカトレアちゃん。これは、まさかの魔法戦隊!


「……サクラが見たら喜びそうな感じね」

「ああ、なるほど兄さんが好きになる訳ね」


 撫子のつぶやきに思わず納得してしまった。ようし!全部終わったら女子会しないと!兄さんとのなれそめを根掘り葉掘り聞いてやるんだから!

今日も今日とて遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

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