31話:無限に増え続けるクリ饅頭を宇宙の果てに飛ばしたらどうなるのか今こそ検証してみたいモノだよね?
穿つように迫りくる大剣を足場にして空を高速にて駆け抜ける。風を纏い、振りぬくは一閃。
――無限流/刃/玉!
クルンクルンと回転し、こっちに突っ込んでくる魔物を切り裂きながら突き進む。
「既に我が計画は九割が完了している。後は貴様のその剣を奪えば良いぃ。意味が分かるか?分かるかぁ?」
「分かる訳があるか、こんにゃろう!」
勝ち誇った顔面に聖剣を突き立てる。が、その寸前で目の前に現れた魔物達に阻まれてしまった。ええい邪魔だなこいつら!
「そう、私とプラントたちがこの場にいる時点で貴様に勝ち目などぉ、無い。プラトニアスを分離したあの技も今の貴様では放つ事はできない。それも、これだけの数――貴様だけで対応することは不可能だ」
「それが、どうしたああああ!」
ジ・アンサーがきらりと輝き俺の望む通りの事象を切り取る。
――無限流/刃/奥義ノ弐/天之尾羽張!
ざんざんばらりの乱切りにて、グラトニウスの躱した先にいたプラント数十体の術式と魔石を斬り放つ!魔石が取れたユウシャ達に寄生していた魔物の肉体がザラリと崩れ、残った肉体だけが地面へと落ちていく。もともと、あの技はこの聖剣の力を模倣したモノ。聖剣を使わないという制約さえなくなれば、使う必要もあまりない。まぁ、腕がこんな状態だからうまく切れるか不安だったんだけどね!それに、あの技にはまだ意味がある。
「無駄だとぉ言っている」
墜ちて行く勇者達に他のプラントが喰らいつくと、また――救い出したはずの彼らがまたプラントにされてしまった。うげ、自己増殖までできるのかよあれ……。
「それで、お前は世界征服でもするつもりなのか?」
「ああ、その通りだ!私は!この世界をわが手に収める!人を!魔物を!勇者を喰らい尽くしぃ!神をも喰らいて私は!別世界をも喰らい尽くす!」
聖剣の一撃を大量の大剣で受け止めながら、本当に楽しそうにグラトニウスが笑い声をあげる。
真理がこっちの世界に来た時点で元の世界に未練は全くと言っていいほどに無い。なのにこちらの世界を喰らい尽くす?冗談じゃあない。ここはサクラちゃんとフレア、ビオラちゃん、シルヴィアに伊代ちゃんの、そして真理の為の世界だ。こいつは俺の大切なモノを奪うと言っている。そんな事、させてなるものか!
「雄々、おおおおおおおおおおおおおおおおおおッ――!」
水の腕に今一度力を込めて飛び交う魔物を、プラントを斬って斬って切り裂いて、嵐の如く切り捨てる!
――無限流/刃/奥義ノ伍/素戔嗚!!
荒れ狂う魔力と霊力の暴風の如き乱閃が瞬時に煌めき、爆風となって眼前百メートルほど都市の結界ご敵たちを切り開いた。
ああもう、キッツ!マジキッツ!!水腕の制御だけで意識持ってかれそうなくらいキッツいんだけど!
「ち、化け物めが」
「化け物が何言ってやがる!」
しかし、グラトニウスは健在だった。輝く指輪は青。どうやら快の勇者のチートで全快してしまったらしい。
本気でこれは不味い。残存している魔力が心もとない上に、あれ程湯水のように使っても駄々あまりだった霊力までが尽きかけている。想定以上に俺の腕の消費がしんどい!
「いいや。いいや、お前は化け物だよ水無瀬真人。貴様の心は人ではない、化け物だぁ」
「何を!」
グラトニウスの放つ多々多量の大剣を叩き落し、今一度その目前に迫る。
「――貴様に人の心はぁ、無い」
剣線で散る火花が花火のようにキラキラと煌めき、周囲の魔物が吹き飛んでいく。
「貴様はただ、義母親の言いつけを従順に守り続けているだけにすぎぬ」
「何を言ってやがる、この――」
「――-男の子なら約束を絶対に。守りなさい」
「っ!」
グラトニウスの言葉に意図せず振るう刃がぶれる。ああクソ痛い!マジ痛い!激痛で死ぬぞこれ!
「――貴方の家族はこれでたった一人。その一人だけをどうか護りぬいて」
空を踏む足に力を込めて溢れた風に乗ってその喉元に聖剣を振るう。
無限流/刃/奥義ノ壱/武御雷!
稲妻の如き剣線が走り、雲を、大地を魔物とプラント事切り裂く――が、殺ったと思ったその瞬間にその姿を消した。テレポート!?この瞬間に別のチートかよ!
「わかるか?お前は、あの義母親の言葉だけで生きている伽藍洞だ」
「だから何を!」
背後に現れたグラトニウスに向けて炎の弾丸を打ち放つ!けれどもどれも当たることなく、近くにいたプラントや魔物達を燃やしていた。また数増えてるんですけど!減らねぇ……。
「ははは、空っぽだぁ!お前はお前の心を護るために妹を愛しぃ、魔王オウカを愛したぁ!そう、すべて義母親の言う通りになぁ!」
吸う息すら苦しい、腕を構成していた水がぶるぶると震える。く、そろそろ限界が――!
「だから、お前は誰も愛せない」
「なっ!?」
唐突に目の前にぽっかりと水の腕を真中から寸断して空いた空間は漆黒。サクラちゃんの指輪は――大丈夫、俺の腕の方にある。――けれど、これじゃ!
「ああ、もう聖剣の担い手さえ消えてしまえば良い。聖剣さえ押さえられたならばそれで構わんのだからな。――貴様は無限なる闇に消え去るがいい」
「ぐ、があああああああ!!!」
避ける事も躱すことも叶わず、その暗闇に飲み込まれ――ついぞ俺はこの星から姿を消したのだった。
今日も今日とて遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ