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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第九章:白銀の煌めきと勇者な執事。いいえ、光る蕎麦はありません!
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25話:欲望って危険で危ないものにも思えるけど人が生きていく上で必要なモノでもあるよね?

「何故、何故だ!私はすべて手に入れた!聖剣の真なる持ち主の魂も!聖剣の担い手の刻印も!なのに、何故!何故抜けぬ!!」


 ギリギリとあらん限りの力を込めて勇者教皇、柳生恭司は聖剣を石畳の床から引き抜こうと必死になっていた。まぁ、こいつに抜けるわけが無い。


「当たり前だ。何せあんたには資格が、ない


 両腕からダラダラと血が流れる。マジで痛い。本気で痛い。それでも何とか俺は立ち上がり目の前の男を憐みの目で見てやる。


「資格、だと?これ以上何が必要だというのだ!俺は!勇者だぞ!」


 憤怒の表情で両腕の無い俺を睨みつける。はは、これこそまさに必死の形相ってやつだね!


「ああ、そうだろうさ。だからお前はダメダメなんだ。だからジ・アンサーの声が聞こえない」

「声……?」

「……聞こえないなら代わりに聞いてやろう。あんた――何の為に力を欲する?」

「そんな事、決まっている!」


 柳生恭司は目を見開き、叫ぶ。


「この世界を平和にする為だ!そのためにこの力がいる!力があれば総てうまくぐぅ!?」


 バチリと白い光が迸り、聖剣から柳生恭司の手か弾かれる。うん、()()かな?俺の両腕から()()()()()が奴の指を貫き、切り落とす。


「ぎっ!?」

「帰してもらうよ、俺の大事な人を」


 素早く血を操り男の指を弾き飛ばして指輪だけを手元に引き寄せる。プカプカと浮かぶ俺の血が辺りの水分を引き寄せて無くなった腕の形を模る(かたどる)


『まーくん、まーくん!』

「おかえり、サクラちゃん」


 ギュッと胸元に彼女の入った指輪を抱き寄せる。やっと、やっと彼女を取り戻すことができた。思わず涙が出そうになるのをグッと堪えて血水でできた腕で拳を握る。感覚は無い。けれどその手のうちにはサクラちゃんの指輪をはめ込んで。


「何故、何故俺を受け入れぬ!聖剣、聖剣ジ・アンサー!!」

「お前のいうソレが勇者ではないからだ」

「何を――」


 そう、世界を救うだなんて世迷い事、勇者に吐けるセリフでは無い。


 そんな事を言っていいのは世界を救う装置と化した英雄とかそんな奴らだけだろう。


 そんなモノいてもらうだけで()()()()だ。なにせ、世界を救うと言う事と自らに従わぬ者たちを殲滅すると言う意味がイコールなのだから。


「だから、お前にはその剣は抜けない。抜けるわけが無い」

「ふざけたことを!!」


 柳生恭司の周囲から幾つもの巨大な剣が姿を現し、俺に向けて降り注ぐ。


「問う――!応えろ、ジ・アンサー!俺はまだ、お前の答えを聞いていないぞ!」


 ジ・アンサーが独りでに地面から離れ、その刃を煌めかせて俺の血でできた手に収まる。


『――答えは既に得ている』

「ああ、だろうさ」


 襲い来る凶刃をひと振りにて叩き斬り落とし、唖然とした表情の男に迫る。


「ふざけるな!ふざけるなぁ!!!何故俺のもとに来ない!俺こそが勇者だ!その剣にふさわしい男だぞ!」


 出現した巨大な複数の剣で俺の行く手を遮り、後ろへと柳生は飛びのく。


「本当にまだ分かんないのかい?ああ、なら教えてやろう」


――無限流/刃/玉


 くるんと体を回転させ、その勢いを載せて勇者教皇と呼ばれた男の胴を行く手をふさぐ大剣ごと切り裂く!


「がはぁ――!?」

「――勇者とは、目の前の大切な誰かを護ろうとする者の事を言うのさ。覚えておけ。お前は英雄にもなり切れない、ユウシャ未満のただの欲望まみれの、ただの……人間だよ」


 地面に真っ二つになった男が転がる。即死――はどうやらしていないらしい。頑丈だな!


「がふ、く、まさか、只のひと振りで……!だが、周防(すおう)!」

「……力よ」


 柱の陰に隠れていたのか、快の勇者・丹島 周防が姿を現しその力を発現させる。先ほども見せたその力は回復させる人数は限られてはいるが、正しくチートにふさわしい性能を持っている。


「クソが、聖剣を返してもらうぞ水無瀬真人――!」


 一瞬で体も指も完全回復した柳生恭司が俺の腕を封じた指輪を掲げる。


「そう、俺は知っているぞ!お前が契約した精霊たちを!さぁ、ここにその姿を現せ!爆炎龍!そして、風の大精霊、暴風龍!九尾の狐よ!!そして――くく……勇者ビオラ、その姿を顕現せよ!!」


 俺の腕を介して、現れたのは龍の姿となったフレアとウィンディアさんにシルヴィアに伊代ちゃん。そして、デュミナスアクア姿のビオラちゃんだった。


「さぁ、行け!あのふざけた勇者を殺せ!」

『え、やだ?』『お断りします』『誰が聞くか!』「……?」「お断りさせていただきます」


 みんながヤレヤレと呆れた表情でお断りしている


「――は?何故だ!何故契約の紋章を持つこの俺の命令を聞かない!」

「当たり前だ。俺のその紋章は契約じゃない。盟約の証だ。一方的な命令何てお断りできて当然なんだよ?」


 指輪の中の俺の腕から紋章が消え去り、新たに俺の背中にその刻印が刻まれていく。今度は切り取られないようにと。……で、そこじゃ俺が見えないんだけどね!鏡でも見にくいよそこ!


「馬鹿な、総て魔王クラスだぞ?それを、契約無しで御していると?」

「御してなんていない。力を貸してもらっているだけだ。まぁ、その違いもお前にはわからないんだろうがな」


 プルプルと震えて大きな魔石の付いた杖を構えて俺を睨む。あ、こいつまだ何かする気だ。


「まぁ、いい。ここに呼び出せたのなら俺の勝ちだ!さぁ――“俺に服従しろ”」


 勇者教皇柳生恭司が今まで奪ってきたチートの一つ、洗脳。その力は高めれば魔王すらもその心を染め上げてしまうほどの力を持つという。尤も――俺の奥さんでなければ、だ。


「デュミナスアクア!ヒーリング――ミスト!」


 白い霧が辺りを一瞬で包み込み、キラキラと輝いてその周囲総ての状態異常を掻き消してしまう。これは、以前ビオラちゃんが使ったデュミナスアクアヒーリングの上位版。旅したみんなで考えて研究して編み出した、ビオラちゃんの技だ。


「治した……?俺の洗脳を治療したとでもいうのか?!あ、あり得ぬ、あり得ぬ!!」


 頭を抱え頭に血管を浮かべて柳生恭司は声を荒げる。まぁ、こいつはもうここまでだろう。


「まったくもって話にならないな。さっさと出て来い。サクラちゃんをこの石にしたのも、この男の欲望を暴走させて勇者教を私物化したのも、こいつの使っていた洗脳を使って好き勝手やらかしたのも、総て、お前だろう……?」

「……?何を、言っている?」


 訳が分からないと言う顔の目の前の男に、もう興味はない。

 こいつがユウシャ達から奪い盗って来た、十九のチート。それを混ぜ合わせたモノ。それは奴の持つ、その杖に輝く魔石の持ち主だった。


「いつから――気づいていた?な、なんだ、口が勝手、にぃ……?」


 一人の男に二つの口調が混じる。


「やっと出て来たかクソ野郎。よくも俺の大事な人達を傷つけてくれたな――魔王グラトニウス」


 俺の言葉に目の前の男が笑い声をあげる。――最早勇者柳生恭司の意識は塗り潰されたらしい。


「あ、ああ。ふむ、久々に言葉を出すとぉ違和感がある。が、まぁいいだろう。さぁて、初めましてだぁ勇者真人。貴殿の活躍はぁ、よぅく聞いていたぞ?」


 ニヤニヤと下卑た笑みで男は笑う。うわぁ、こいつ俺の苦手なタイプなんだよ!


「だから、欲しくなったのか?俺の力が、聖剣が」

「そしてぇこいつの持つチートが、な。何せチートが十九だ!それほどまでにチートを携えた存在は二人といない!欲しいから奪ったぁ。それがぁ俺だ。強欲の魔王――グラトニウスたる俺なんだよ」


 杖から魔石を外し、自らの肉に埋め込む。まるで、最初からそこにあったかのように、柳生恭司の胸に紫色の魔石が鈍い光を放つ。


「少ぉしずつ、少ぉしずつ侵食してぇようやっとぉ奪い盗ることがぁできた。最後の一押しはお前のお陰だぁ勇者真人。くく、感謝するぞ?」


 そう言って用が無くなったとばかりに杖を投げ捨て、ボロボロになった法衣を脱ぎ去る。鍛え垂れた胸筋に僧帽筋!シックスパックは見事に割れて、見事な肉体美をその場に晒した。


「さぁて、改めてぇ――名乗ろう」


 昏い魔力が胸の魔石から溢れ出すと、羊角がメリメリと側頭部に生えその美しい肉体に魔力を巡らせ更に肉量を増していく。


「私の名は――魔王勇者グラトニウス!この世界を統べぇ、魔人をもぉ超える男だ!さぁ、勇者真人。その聖剣をぉ寄越せぇ。それは、俺のモノだ!」


 強欲の化身とも言えるその男は凶悪な魔力を放ち、俺に襲い掛かって来たのだった。


 BLはお断りだよぉ!!

今日も今日とて遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

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