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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第九章:白銀の煌めきと勇者な執事。いいえ、光る蕎麦はありません!
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23話:寒い冬の時期はあったかい部屋の中で冷たいアイスを食べる事に幸せを感じるモノだよね?

 きらきらと輝く魔法の残滓が凍り付く世界を美しく輝かせます。


「凍てつけ――コキュートスパンチ!!」


 鮮やかなピンクの衣装に水色のフリルと背に伸びる半透明なローブをはためかせ、迫りくる勇者たちを蹴り、殴り、投げ飛ばしながら氷漬けにしてしまいます。


 ふふ、動ける!私すっごく動けます!ああ、本当に体が軽い!そう特に胸当たりが?


『比べないで!?私だってちょっとはあるんだから!というか、サクラは運動しなさすぎなのよ!動けば私より強いのに!』

「だ、だって、研究とメカが私を呼んでいるんですもの!」


 だから運動不足でも仕方ないんです!まぁ、結婚してからはスタイル維持も大事だと言うアリスお姉様の鶴の一声で寝起きのストレッチは欠かさず行うようにしていたのだけれど、今となっては詮無い事ですね!


「ええい、何をやっている!相手は一人だぞ!」

「し、しかし、凍らせられた皆が邪魔で!」

「それならば薙ぎ払えばいいだろう!どうせ勇者だ!復活してしまえば――!」

「させません!」『やっちゃえ!』


 地面に拳を突き立て周囲から溢れ出す炎の魔法を圧倒的質量の氷雪がその総てを掻き消してしまいます。


「こんな、チートすぎる――ぅ!?」


 氷結魔法アイスエイジ。周りに見方が誰もいないときに使う私の十八番の魔法です!


 氷漬けになった勇者たちは身じろぎすることなく氷の牢獄に閉じ込めてしまう。けれど、これは大魔王地下の永久凍結封印ではない。というか、今の体でそれをやってしまうと魔力過多でショートしてバタンキューですから!


「流石は魔王の魔石。低級レベルのチート持ちであった貴女が、Aランクの勇者達を事も無げに一蹴してしまうなんてね」


 ぱちぱちと褒めたたえるように威亜さんが拍手を私たちに送ります。この人、今までの攻撃を全部避けて!?


「範囲攻撃は確かに脅威だけれど、それだけ隙も多いの」

「!?」


 耳元で囁かれて思わず裏拳で答える。けれどそこには既に姿は無い。


「私が何故、隠の勇者だなんて言われていると思う?」

「忍者さん、だからですか?」

「忍者……ふふ、そうね。そうとも言えます。簡単に行ってしまえば」

「――っ!?」


 今度は首筋に鋭い感覚が奔り、慌ててその場を飛びのきます。斬られた?ううん、撫でられただけ?


「私は隠れて人を殺すことがとっても得意なの。ええ、とっても小さなころからね?最初は誰だったかしら?両親を手に掛けたのは覚えているのですが、それが最初だったかもわからないのですよね。ふふふ、沢山沢山殺しました。孤児院のお友達も優しくしてくれた保母さんたちも、良い寄ってきた男たちも」


 クスクスと楽しそうに威亜さんが笑います。

 な、ナナちゃん!この人怖い!なんだかすごく怖いですよ!?


『さ、サイコパスって奴かな?ヤバイから関わらずに早く逃げ――』

「どこに行こうと言うのです?」


 トンで逃げようとした私の側頭部を蹴り飛ばされて錐揉みをしながら私は地面に叩き落されてしまいます。い、今の私は身体を強化されている筈です。なのに!


「考えが読めすぎです。貴女、戦いに余り慣れていないのですね?それとも、圧倒的に力を振るう戦いばかりしていたせいで、戦闘の勘が育たなかったのでしょうか?まぁ、どちらにせよ好都合です、が!」

「はぐっ!?」『いっづうう!?』


 倒れこんだところを無防備なお腹を踏み抜かれます。何でお腹に布無いんですか!可愛いですけど!可愛いんですけど!


「はは!あの氷結の魔王も体が雑魚なら雑魚になってしまいますね!尤も、十勇者の私でやっとこの程度ですし、魔王の面目は保っているのでしょうけれど!」


 勢いをつけた回し蹴りで私は大聖堂の壁に思い切り叩きつけられます。な、何が隠ですか!思い切り白兵戦特化型じゃ無いですか!


「お褒めの言葉、ありがとうございます」


 眼前に拳。ええ、だからアナタが油断して目の前に現れると思っていました。


「――あ、ぇ?」


 痛みに耐えて設置して置いたこぶし大の絶対零度の冷気の塊。


 位置はちょうど彼女の心臓が来るであろう場所。極々集中して設置した冷気の塊は、触れた瞬間に凍り付き威亜さんの心臓の鼓動を完全に止めてしまいます。凍らせたのは彼女の心臓。鼓動が止まった彼女はグルンと目を裏返し、その場に崩れ落ちました。い、イチかバチかでしたが、う、上手くいって良かったです。


『あ、案外度胸あるよねサクラって』

「ふふ、こ、これでも魔王ですし!」


 とはいえ怖くって膝が笑っています。あ、でもこれはナナちゃんの体ですしセーフ!セーフ、ですよね?


「ははは!やはり中々やる。魔王をこの程度の戦力で相手を使用としているのが間違いだったなぁ。さて、周防(すおう)くん、お願いできるかな?」

「はい、教皇様」


 フリルのついた薄手のドレスを身に纏った少女が手を合わせると、彼女の手が眩く光りだす。

 すると、辺りの氷が砕け散り、勇者たちが次々と立ち上がります。心臓を凍らせたはずの威亜さんも――どうやら完全に復活していました。これは、完全復活のチート……?


「そう、周囲も含めて完全に通常状態に戻してしまうという彼女のチートだ。範囲はこの大聖堂の半分も無いが――クク、強力だろう?」


 楽し気に笑う教皇さん。ええ、とっても強力です。これでは、どう足掻いても私に勝ち目何て――!


「はいありません」

「がぐっ!?」『ぎっ――!』


 背後から後頭部を蹴り飛ばされて、意識が数瞬刈り取られます。地面に転がり、倒れたところを勇者たちに取り押さえられ――私の指輪の取り付けられているその腕(ななちゃんのうで)を切り落としたのです。


「あああああああああああああああああああああ!!!!」

『あああああああああああああああああああああ!!!!」


 激痛と絶望の中、意識がどんどんと暗闇に沈んでいきます。


 ああ、まーくん。まーくん!私、私は――


「サクラちゃん!!!」


 あ――


 意識が途切れるその瞬間。私は大好きな彼の声をやっと聴くことができたのでした。

今日も今日とて遅く……?なりまs( ˘ω˘)スヤァ

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