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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第九章:白銀の煌めきと勇者な執事。いいえ、光る蕎麦はありません!
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21話:JKと聞いて常識的に考えてと答える人って今はもう少なくなっていそうだよね?

 待ちぼうけを喰らって幾日たっただろうか?

 暇をつぶす本を貸してもらっていたお陰である程度退屈はしなかったけれど、こうして寝ころびながら本を読むのにも流石にもう飽きて来たのが本音なところ。そろそろお外の空気が吸いたいな!


 ……まぁ、それも指名手配になっている現状では叶わぬ夢と言うモノなのだろうけど。


『そうそう、わがままを言ってはいけませんよ。でも、確かにそろそろ新しい本が欲しいところですが……。ああ、お城の大型テレビが恋しい……』

「異世界に来てテレビが恋しいっていう魔王様も正直どうかと思うけどね」

『だって仕方ないじゃ無いですか!ニチアサを見れないんですよ!録画はしている筈ですからそこの所は大丈夫だと思いますが、とはいえそろそろゲームもしたいです!私がこうなる前に新作が出るんだって話も聞いていましたし!』


 んんん、元の世界に被れ過ぎている!!思わず頭を抱えるけれど、もしかするとまだマシなのかもしれない。まだボーイズなんとかのBの文字も聞いていない上に、聞いている話では乙女ゲーに嵌っているわけでもない。そう、まだサクラは大丈夫。乙女ロードと聞いて不埒な想像ができるようにはなっていないからね!


 ……そういう意味では大賢者と言われる菜乃花さんと深く話をするのは危険なのかもしれない。噂話では美麗な男子の絡まったような絵本を収集しているとの話だし。……はっ!?まさかクロエさんも……?


「ご歓談中失礼します」


 唐突に声がして起き上がるとメイド服を着た少女がそこにいた。彼女の名前はイアさん。私がここにいる間お世話になっているクロエさん御付きのメイドさんだ。整った顔立ちで


「どうしたのイアさん?まだご飯の時間には早いと思うけど」

「はい、大聖堂襲撃の準備が整いましたのでご案内をと」


 なるほど、どうやらようやっと私たちの出番が来てくれたらしい。暇で暇で暇すぎて、本を読む以外は食べて遊んで訓練をして寝る位しかすることが無かった。まぁ、サクラと色々と元の世界の事とか真人さんの事とかで駄弁ったりはしてたけどね?けれど、ここ数日で何だか強くなったような気がしないでもない。尤も、サクラの指輪を付けているおかげで自分の力が底上げされているおかげだと思うけどね!


「それで、クロエさんは?一緒に行くんじゃないの?」

「はい、もちろんご一緒にいっていただきます。勇者教側が反勇者教ギルドへ向けてもう間もなく襲撃を開始いたします。ですので、その前に撫子様にはここを襲撃される前に大聖堂へ向かっていて欲しいとクロエ様からの伝言でございます」


 なるほど。と言う事はここは反勇者教ギルドシャングリラの拠点の下にあった訳だ。出るタイミングでようやっと知ることができてホッとしたような、残念なような、何だか不思議な気分だった。


『だけど、どうして反勇者教ギルドであるはずのシャングリラがこれほどまでの施設を持っていたのでしょう?』


 確かにサクラの言う事も確かに気になる。これほど広く、高く、頑強な施設なんて何か魔物でも閉じ込めていたのではと勘ぐってしまいそうになる程だ。まぁ、そんな魔物影も形もいなかったのだけど……。


「それではご案内いたします。さぁ、こちらへどうぞ」


 イアさんに促られるままに魔方陣に足を踏み入れる。――と、辺りが光に包まれて数日過ごした地下施設から転移する。もう二度と戻らないと思うと、あんな閉鎖空間であっても後ろ髪をひかれる気がするのは不思議なものだ。









 再び目を開くと――そこは大聖堂、その礼拝堂にいた。


「……え?」


 思わず目が点になる。振り向けば楽しそうに微笑むイアさん。


 おかしい、違う、どうして?何で?頭の中でグルグルと言葉が巡るけれど答えが出ない。


『わ、私たちはクロエさんに騙されていたのでしょうか?』

「わかんない。わかんないけど、これって大ピンチなんじゃない……かな?」


 震える声で辺りを見回せば、鎧姿の勇者達。


「おかえりなさい、勇者――撫子。君が隠れてくれていたお陰で私の目的を達することができる」

「――勇者教皇……!」


 そして、完全装備に身を包んだ勇者教最高指導者、柳生恭司が大きな魔石のついた杖を手に持ってその姿を現したのだ。


「さて、そろそろ大人しくここで()が来るのを待っていて欲しいものだが――」

「お断りよ」『です!』


 私の答えを聞いた瞬間に放たれた銃弾と矢の雨をくるりと躱しながら、その姿を変じる。エクスシーア・ハート、これこそが私のチートであり切り札だ。というか、これ以外無いんだけどね!


「数多すぎ!逃げるが勝ちって事で……サヨナラ?」

「させませんわ」


 ステンドグラスを突き破ろうと飛び出した瞬間、黒い影が私を思い切り蹴り飛ばした。飛び交う銃弾を躱しつつ、地面をくるりくるりと回って勢いを殺す。今のは――!


「まったく。せぇっかく教皇様がお招きくださったのにすぐに帰ってしまうのは失礼ですわよ?」


 くすくすとイアさんが楽しそうにまた笑っている。この人、最初から勇者教側の人だったの?!


「ああ、そう言えば――ごめんなさい。私はこうして素顔を見せるのは初めてでしたわね」


 そう言うと彼女はひざ丈のメイド服のスカートをつまんで頭を下げる。


「改めてご挨拶を。――十勇者が一人、(なばり)の勇者。それが私、深谷(ふかや)威亜(いあ)でございます。どうぞ、お見知りおきを!」


 瞬間、沢山のナイフが私に向けて放たれる。こんなもの!拳に魔力を込めて飛んでくるナイフを払い薙いで防いでいく。


「撃て!殺せ!」

「く、この!」


 殺されれば無防備な状態で復活させられる。放たれる銃弾とナイフを全力ダッシュで走って走って逃げて逃げる。けれど、ああもうきっつい!


『交代です、撫子!』

「あーもう、お願い!」


 指輪が桃色の色が弾けるとエクスシーア・ハートの姿が更にフリルが追加されて桜の装飾が所々に散りばめられて行く。これこそが、私とサクラの合体形態。エクスシーア・チェリーブロッサム・ハートである!これ絶対真人さんに話したら突っ込まれる奴だ!


「さぁ、お仕置きの時間です!」『うん、このままじゃやられるの私たちだけどね!』


 体を一時的に貸しているサクラがフンスと指を勇者教皇に向けている。だ、大丈夫かなぁ……?

今日も今日とて遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

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