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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第九章:白銀の煌めきと勇者な執事。いいえ、光る蕎麦はありません!
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11話:観光旅行には下調べが重要だけれど不意に立ち寄る場所もまたいいモノだよね?

 ホテルに荷物と馬車を預け、とりあえず街に繰り出してみる事にした。連れ出しているのは匂いのエキスパート、ライガーとこの町に多少なりとも詳しいシレーネさん、そしてモフモフモードのフレアとネズミモードの公くんが俺の頭に乗っている。はたから見ればこれどういう風に見えてるんだろ!


「どう見ても怪しい集団にしか見えないと思う。というか、変装で顔を変えれるんだろう?そっちの方が楽じゃないのか?」

「え、やだよ。あれ蒸れるし。こっちだと材料をそろえるだけでも割と手間だしね!」


 魔力や霊力を使って変身してしまう方法もあるにはあるけれど、微細な力の流れを感知できる奴にはすぐにばれてしまう。つまるところ、適当にはがせない仮面をつけて居るという設定が色んな意味で楽だったりする訳だ。コスパも良いしね!


「それに、この仮面だったらサクラちゃんだったら一目で分かってくれると思うし」


 そう、この仮面はあの日――サクラちゃんの結婚式の時に付けた仮面を改造した、俺とサクラちゃんの思い出の品。他の誰もが分からなくとも、サクラちゃんが見れば一発で俺だと分かるという寸法である。まぁ、サクラちゃんが見れる状態であるかすらわからないんだけどね!


「魔石の状態になってるのに見れるモノなのかがきになるところだが、真人がそれでいいならいいさ。しかし……。本当にこの町の治安はどうなっているんだ?もう三回は襲われてるぞ!?」


 そう、街を適当にぶらぶらしながらサクラちゃんの手がかりを探しているのだけれど、既に三回ほど襲撃に逢っている。それも、すべて普通の強盗である。


「大体訳も分からない内に公くんの餌食になっていたけどね」


 小さいけれどパワフルボディ。手のひらサイズで魔王クラスの実力にいつの間にか上り詰めてしまった公くんは、露店で買ったチーズを満足げにフレアとモチモチと俺の頭の上で頬張っていた。まぁ、こんなに可愛い生き物が唐突に襲い掛かってくるだなんて普通思わないよね!


「更に真人様が無限流を教えられていることも大きいかと」

「なるほど!」


 シレーネさんの言葉にポンと、手のひらを打つ。道中、あまりにも暇だったため、俺の日々の鍛錬を興味深そうに眺めていた公くんに基本の型と、鬼達がよく使っていた無限流/無手の技を軽く触れる程度に教えてあげたのだ。そうすると存外に物覚えが良い公くんは瞬く間に覚えてくれたので、今は奥義習得に向けて技に磨きをかけている最中だったりする。


「可愛くて小っちゃくて、更にいい子で強い。いい事づくめだよね!」

「人の姿の見た目的には色々とアウトだけどな」


 何だか隣のライガーからジトの波動を感じる。まぁ、うん。見た目完全に幼女だしね!ごく一部分はフレアの影響でたわわだけども。あれ?なんだかライガーのジト力がさらに上がった気がするぞ!なんでだ!?


「と、兎も角だ。あてどなく街を歩いて何の意味があるんだ?さっさと予定通りに勇者教に入ってしまえばいいじゃないか」

「そうはいかないんだよ。あの依頼を受けてしまえばもしかすると見る事も出来ないものがあったりしそうだし?」


 所属と言うモノは思う以上に重要なモノだ。冒険者協会くらいしか所属が無い俺らであれば行ったり見る事ができるものがあったりする訳である。尤も、逆も然りではあるけれど。


「おや?おやおやおや、どこのだれかと思えば半日ぶりに見かけるはピーターさんじゃあないかい!こんなところで偶然だね!いや、出会いと言うモノは須らく必然に満ち満ちている、となれば君は正しく私にとっての!そう!運命の――」「あ、そう言うの間に逢っているんで」「ちょ、ちょっと待って待とう!話はきちんと聞いて欲しいなぁ!」


 まくしたてるように話していたのは先ほど華麗に馬車から飛び降りた葵だ。ずんずんと進む俺の足に縋り付いているけれど、く、意外に力が強い!く、流石はユウシャ!


「良かった、うちのトップが君たちを探してくるようにと言っていてね。いやぁ、こうして見つけることができて本当に良かったよ」

「そうかい!良かったね!おめでとう!大したものだ!そ、そういう訳でサヨナラ?」

「ああ、待って!本当に待って!何でもするから行かないでくれたまえ!」


 振り払おうとする俺の足に葵は必死になってしがみつく。なんでもするなら離れて欲しいな!


「離れたら逃げるだろう!」

「逃げるさ!」


 むむーと口を真一文字に結び、目をつぶって彼女は羽交い締めになって必死の形相で離れようとしない。はぁ、もうこれで話を聞くしかないだろう。


「それで、何で俺なんかにトップが逢いたがっているんだ?」

「簡単な話さ。――君が紛うことなき()()()()()()()()()()()だからだ」


 ぼそり、と俺に聞こえる位の小さな声で彼女はそう言ってにこりとほほ笑んだ。そう、俺の足にしがみついたままで!うん、ちゃんと話すからそろそろ離れて欲しいな!


「おっと、これは失礼。そう言う訳でうちのトップは非常に君に興味を持っている。場所はもう伝えた。逢う気があるなら来てくれればうれしい」

「今から付いて来いとは言わないのか?」


 ライガーが鋭い視線を彼女に向ける。


「言わないさ。他のお客さんはお呼びじゃあないからね」


 葵がそっと向けた視線の先。柱の影に小さな影が隠れたのが見えた。


「今の話がアレに聞こえているとは?」

「今彼らの耳には君たちが道を尋ねているようにしか聞こえていないよ」


 結界さ、と手に持ったお札を見せてくれた。――認識阻害のお札。割と高価なものだけれど、どうやら本気で葵の組織のトップは俺に逢いたいらしい。


「という訳だ。君が来てくれるのを楽しみに待っているとするよ。まだ……私のお礼もできていないからね」


 楽しみにしているよ、と言い残して葵はチートを足に発動し、トンと壁を蹴って跳びあがりどこかへと走り去ってしまった。本当に嵐のような奴である。


「で、行くのか?」

「行った方が良いんだろうね。俺の事を知っていることも気になるし」


 ともあれ、教会から割と必死になってついて来てる追跡者の子を巻く必要がある。

 しかたない。観光に見せかけたサクラちゃん探しの後、ホテルに戻ってからどうするか考えることにしよう。

今日も今日とてとってもとっても遅くなりましt( ˘ω˘)スヤァ

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