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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第九章:白銀の煌めきと勇者な執事。いいえ、光る蕎麦はありません!
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6話:ボーイッシュの定義って多岐に渡り過ぎてほんの少しでも男の子っぽかったらそう呼ばれちゃってるモノだよね?

「へぇ、君は貴族のお姫様なのに勇者の力で変身できるのかい!この世界は謎だらけだと思っていたけれど、まさか普通の人も勇者の力を持っているとはね!ああでも、元々こちらの世界でも勇者がいたって話は聞いたことがあるし、私らみたいな外から来た勇者以外にたくさん勇者がいても不思議じゃないかな!この世界の神様たちって割と適当と言うか考え無しと言うか無計画に勇者増やしてるしね!」

「はぁ……」


 移動中の馬車の中。後ろの方から葵とビオラちゃんの声が聞こえる。

 今日も二つの馬車は連結して、前の馬車にビオラちゃんに真理、葵ちゃんが乗り。残りのメンバーであるアイリスちゃん、カトレアちゃんにシレーネさんは後ろの馬車に乗ってもらっている。アイリスちゃんはともかくカトレアちゃんはハーフとはいえヴァンパイアの力を多く顕現している。余計な勘違いを生む前に分けてしまったという訳だ。

 ボロボロになり果てた彼女の服は捨て置いて、今は真理の予備の服……キャミソールとミニショートパンツを貸すこととなったのであるが、理由がキチンとある。そう、一部位のサイズ的にちょうどよかったからである。うん、ライガー?真理と最近仲良くなったからって代わりに足を踏まないで欲しいな!痛いよ!!


「しかしながら、可愛い女の子たちと彼一人という少数メンバーで高難易度クエストをクリアして、Aランクを飛び越えてSランクとはね。なるほどなるほど、君たちがかの噂のパーティーか」

「噂、というと?」


 ビオラちゃんの可愛らしい疑問の声が聞こえる。


「ああ、最近魔法学園の方で魔法研究の事故が起きた時に活躍した少数パーティーが魔王を倒しまくっているっていう噂さ。なるほど、音に聞こえる怪しい仮面の男が彼なのか。噂通り怪しいよね!」

「そこは格好いいと言って欲しいな!」


 思わず御者台から窓を開いて叫んでしまった。だってこの仮面気に入ってるんだよ!何でみんな変な仮面っていうのさ!


「え、だって変だし?」

「変ではないとは思いますが、その、ねぇ?」

「まぁ、格好いいというのはボクも微妙だと思う」

「私もそう思うかな」


 まさかの全員からのフルボッコだった。俺の心はアルミ缶の如くベッコベコである。くそう、くそう……!


「兄さんの好きな特撮系のはダメだったの?」

「真理、確かにそう言うのもある。だけどね、どれも執事服と決定的にあわないんだ!」


 実の所、試しに作ってみてはいた。けれど、どうしても仮面ではお祭りのお面にしかならない。ちゃんとマスクにしなければ特撮系の格好良さは表せなかったのだ。そして、そうしてみるととてつもなく怪しい人物に成り果ててしまう訳だ。


「そうして辿り着いたのがこの仮面なのさ。うん、格好いいと言って欲しかったなぁ!」


 拘りに拘りぬいた仮面だったのだけど、正直評判が悪い。ううん、おかしいなぁ。作るのを手伝ってもらったサテラさんには評判が良かったのに……。


「サテラさんか……。あの人ってロボ好きと言うか好きすぎてロボになった人だからなぁ……」


 隣に座るライガーが何だか遠い顔をしている。

 そうだね。好きすぎて合体変形ロボを国家予算つぎ込んで作っちゃうからね。しかもこんな事もあろうかと!を言う為に俺にも黙ってたし!格好良かったけれども!!!


「な、何それ怖い。と言うか兄さんどう考えても人選間違ってるじゃない」

「ふむふむ、国家予算規模のロボってところに興味が尽きないけれど、遠い国にはそんなところもあるというのは驚きだ。私の知るどの国もは国家レベルで機械工学系の研究すら禁止している所ばかりだからね。魔法工学は魔法学園のお陰で多少なりとも進歩はしているけれど、それでも遅々たるものだ。異世界技術と現代技術の融合、ソレこそが新たなる進化への道標であるとか言った勇者もいたけれど、今は勇者教本部の()()()()だからこの世界は本当にどうしようもない。尤も、そんな風になってしまった原因が私たちの前の前に来た勇者達と言うのが救えない。何が民主主義だ、何が産業革命だ。何が奴隷解放だ。王政に奴隷経済で成り立っているこの世界には数百年早かった。ああ、早すぎたんだ。だのに、過去の勇者達は力任せのチート頼りでやってのけようとしてしまった。そして()()()()()()()()()()()()()()。だからこそ、この世界の国々は機械技術の発達を禁じ、民主主義を徹底的に排してしまった。最早そんなことを言っても聞く耳を持つ民は一人たりともいやしない。これが過去の勇者達のもたらした結果さ。私たちがその結果を覆すことは最早叶わない。――ただ唯一成功してしまったあの都市以外は、ね」


 マシンガントークを終えた葵の指さすその先――白い外壁に囲まれたその都市こそ聖都ヴァルハラ。

 いかなる国にも属さない、絶対唯一の勇者の勇者による勇者たちの都市。


「冒険者ギルドと商人ギルド、そして教会への寄付で成り立っている都市があのヴァルハラなんだ。さて、君にはどう見えるかい?ピーターくん」


 黒くて艶やかなおかっぱな前髪をかき上げて葵はニコリとほほ笑む。


「――綺麗だけど(いびつ)な所って所かな?うん、いろんな意味で中身が腐っている感じがふつふつと感じられるんだよ」


 彼らはどこを目指してこの都市を作ったのかが俺にはわからない。ユウシャ達の保護の為というのならあの魔石工場(地下施設)の言い訳が立たない。自分たちの利権の為ならば商会にしてしまえばいい。勇者教だなんて宗教組織にしてしまう理由が無いのだ。だから見栄えは綺麗だけど歪に見える。中身は何だかドロドロしてるよねこれ!


「そう。つまるところ、この世界の人々に褒めてそやして讃えられたかったという虚栄心なのさ。だから私たちはあの教会を否定している。勇者教の教会を使わず、依頼の為の冒険者ギルドのみを利用しているのだけど、結局は勇者教にお金を落とすことになるのだから私たちも矛盾してはいるのだけどね」


 また肩を竦めて葵は首を振って見せる。しかし、教会を利用せずにこの世界でユウシャが生きていけるモノなのだろうか?


「しようと思えばできる。自分を召喚した神の教会さえあれば良い訳だからね。尤も、私の場合は既に合一されてしまっているから勇者教の教会に復活することになるのだけど、まぁこれでもそれなりには強かったからね。何とかできていたんだ」


 だからこそ、勇者教を抜けてもBランクでいられたのだそうだ。

 対策を練られて数で圧倒されいても、それでも戦えていた。彼女の実力はなるほど、本物なのだろう。


「まさか犠牲者を出してでも私を狙うとはね。それほどまでの価値が私にあるとは思っていなかったのだがね。まさか最近噂になっている聖剣を勇者教が遺失していた聖剣を手に入れたから、邪魔な組織を一掃して魔王達に一斉攻勢にでるというのが本当とは思えないし――」

「ん、待って。勇者教が聖剣を手に入れた?」


 思わず葵の言葉を遮る。確かに聖剣の本来の持ち主であるサクラちゃんの魔石はあそこにはある。けれど、勇者教が手に入れている訳でもないようだし、聖剣の現在の所持者は俺でまだ聖剣は大魔王城の桜の大樹に突き刺さったままである。うん、寂しそうにまだ喚ばないの?とか聞こえてくるしね!


「あくまで噂さ。けれど、見つけたのは本当みたいなんだよね。ついこの前うちのギルド――シャングリラに入ってくれた子が情報を持っててね。その子によると何とその聖剣は白銀の勇者が大魔王に敗れたその日から未だにその城に残されているそうなんだよ。なんでも大きな木の上にあるとか。ああ、大魔王というのは――」

「ちょ、待ってくれるかな?その子って名前は?」


 慌てて俺は問い返す。大樹に刺さっているだなんて情報を持っている子はあまりにも限られる。更に、つい最近勇者教から逃げ出した子なんて、俺の知る限り一人しかいない。


「名前は残念ながら言えない。身姿も同じく。ギルドの仲間となったあの子を売る真似は私にはできかねる。尤も――君がうちのギルドに入ってくれるのであれば話は別だけどね」


 ニッコリと葵はこれまたいい笑顔でそう言ったのだった。うん、考える時間が欲しいかな、色々と!


「そうかい。ピーター君の答えを楽しみにしているとするよ。私を救ってくれたお礼もまだできていないしね」

「なら、暇を見て寄らせてもらうとするかな」


 聖都の大聖堂に行った後はどうせ暇になる。ならばその時にでも寄ってしまえばいいだろう。もしかするとサクラちゃんやナナちゃんの情報をゲットできるかもしれないしね!


「――で、門までもう少しみたいだけど、葵さんって入れるの?」

「あ」


 何だかジト目の真理の言葉で俺たちは思わず固まってしまった。いくらユウシャの為の都市とはいえ、反勇者教ギルドのメンバーが都市の中に入れるとは到底思えない。えと、大丈夫カナ?


「問題なく入れるさ。何せ、あそこはユウシャの為の都市だ。ユウシャが入れない道理は無いだろう?」


 無茶苦茶な理屈ではあるけれど、確かに俺が行ったときも都市の中に入るだけなら大手を振って入れた事実がある。そこから大聖堂の中に潜り込む所が大変だったのだけど、その話は割愛してしまおう。いないこと位しかわかんなかったしね!!


 ともあれ俺たちは、無事聖都ヴァルハラの中へと入ることができたのであった。

今日も今日とてとっても遅くなりm( ˘ω˘)スヤァ

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