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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第九章:白銀の煌めきと勇者な執事。いいえ、光る蕎麦はありません!
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2話:褒めて褒めて褒めちぎられ過ぎると逆に何だか不安になって来るモノだよね?

 魔法学園の事件から一月が経とうとする頃。ようやっと勇者教の本部から俺たちのパーティに打診がやって来た。

 内容を端的に言えば、お前たち最近やらかし――頑張ってるから、教会本部に顔見せに来いや!と言ったモノだ。つまるところは教会本部付きのパーティにスカウトされた形である。魔王を二・三人倒せば来るかなと思って待ってたけど中々来なかったので、気付けば十人程倒して、五人封印して、二十人位の魔王と仲良くなってお社を作らせてもらっていた。

 ……後半焦りまくって魔法学園の二人を引き連れて魔王国行脚をしていたのは言うまでもない。うん、ちょっと張り切りすぎちゃったかな!


 そして今日はその書類を受け取りに魔法学園すぐ横のギルドへと、俺たちのパーティ全員でやって来たところである。昼を過ぎた当たりなので、冒険者たちの姿もまばらで受付の皆さんは各々に割り振られた書類仕事をしているようであった。たとえ冒険者が目の前にいなくとも、受付さんは忙しいのである。


「――正直に言いますと、報告の信憑性が疑わしいと言われているのです。というか、これほどの少数パーティーで魔王を倒すことが勇者教のトップですら難しいと言われているのですよ?大隊を組んで、ようやっと魔王一人。それが普通です。いえ、まぁ、ピーターさんならできる事はここ(魔法学園)のギルドのみんなが知るところなのですけれど……」


 大きな大きなため息を付くのはギルドの受付のお姉さん、ラテさんである。褐色の肌に綺麗な黒髪をポニテにまとめた彼女は、ここのギルドでは一番冒険者に人気のお姉さんだったりする。お姉さんって言ってるけど、俺より年上なだけでまだ十代の後半くらいらしいし、受付の人の中でも特にスタイルも抜群にいいから仕方ないネ!……とか考えていたら真名とライガーに足を踏まれてしまった。


 どうやら俺の視線がラテさんの顔から若干下に下がったのが見つかったらしい。


 うん、仕方ないんだ。これは男の本能だからね!けど痛いからやめて欲しいな!あ、ぐりぐりしないで!?やめて欲しいな!!


 そう、このラテさんこそ俺たちのパーティの担当になってくれている方で、現在進行形で多大にご迷惑をかけている気がする人だ。きっと、たぶん、恐らくは俺たちが張り切り過ぎたおかげで出世できそうではあったけれども、本人にはその気はなさそうだった。


「ふふ、相変わらず仲がよろしいんですね。ですが、パーティを結成してたったひと月足らずでDランクからSランクに上がるだなんて、本当に今までどこで過ごされていたのか私もとっても気になるのですが……」


 大きな胸の谷間が見えるように設計された受付の制服の、その谷間を大胆に見せつけながらラテさんは俺を見上げる。足の痛みが更に激しくなったのは恐らく気のせいではな、いったいからね!?


「ふうう……。俺ってばほら、記憶喪失だし?戦い以外の事は何にもわかんないんだよね!他のパーティメンバーも色々と言えない事情があるから中々説明し辛いんだよ」

「とはいえ、あちらに行けばこの質問にもある程度は答えれるようにした方がいいと思いますよ?勇者教の本部、には心を読めるチート持ちの人もいるとの事ですし、もし隠し事をされているのでしたらある程度のカバーストーリーは組んでおいた方が良いかと思うんです」


 腕をたわわな胸の下で組み、ラテさんはうんうんと頷く。

 あれ?こんな事を言うって事は俺が記憶喪失じゃないってばバレてるって事じゃないかな?うん、チガウカラネ?ちゃんと記憶喪失だからネ?


「はいはい分かってます。ピーターさんが何者であろうと、この町のみんなを救ってくれたことには変わりはありませんから、何も言いません。この一月でピーターさんの人となりも分かりましたしね」

「と、言うと?」

「普段おどけているけど、誰よりも真面目な頑張り屋さんで、知らない人であっても目の前の困っている誰かをそのまま見捨てて置けない――そんな人ですね」

「ううん、ありふれる位に普通な人じゃない?」


 俺程度の心構えの人間なら世界に五万といそうだけどなぁと振り向くと、ビオラちゃんは苦笑いをして、ライガーと真理はため息を付き、シレーネさんは優しく微笑んでいて、アイリスちゃんとカトレアちゃんは無い無いと手を振って、二人の腕の中のフレアと公くんはお昼寝中だった。ありふれてるよね!?


「そんな人ばかりならこんな世界になっていません。勇者の皆さんも含めて、みんな自分の事で精一杯なんです。だからこそ、この町のみんなはピーターさんの人となりを好ましく思っています。もちろん、私も含めて、ですが」


 むむむ、そんなに褒められてしまうと背筋がむず痒くなってしまう。俺ってばあんまり褒められ慣れてないしね!こんなに褒められた事なんて、ソレこそ小さい頃に義母さんの最後の時に褒められたくらいじゃないだろうか?うん、あんまり思い出せないな?


「なので、勇者教会の本部――聖都ヴァルハラへピーターさんたちが行くことを心配しているんです。これほどの実績をあげていても、勇者教は彼らの思惑と異なれば封印処置の判断をする可能性もありますから」


 封印処置。つまるところ、死ぬことのない勇者にとっては処刑と同義である。男であれば()()勇者の秘石にされ、使えなチートの女性であれば魔石工場の一部にされてしまう。恐らく、一般的には封印処置とだけ伝えられているのだろう。――そっと、ビオラちゃんが悲し気な表情で胸元に収められた赤い秘石を撫でたのが見えた。ビオラちゃんの胸の内が痛いほどに伝わって来る

 アレはビオラちゃんのお母さんだ。自らの教義にそぐわないからと、勇者教によって秘石へと封じられたのだ。巡り巡って、ビオラちゃんの手元へとやって来てビオラちゃんはこの世界の継承勇者として覚醒を果たしたのだが、それがビオラちゃんにとって幸せだったのかは俺にはわからない。

 俺と結婚して幸せだとは言ってくれるけれど、俺はビオラちゃんがお母さんと一緒に幸せに微笑んでいる所も見たい。だって、大好きな人には幸せで逢って欲しいからね!旦那さんとしては、当然ですよ、ええ当然ですとも!


 だから、サクラちゃんを助ける事と同時進行でビオラちゃんのお母さんの封印を解く方法も探す必要がある。もしかするとその方法はサクラちゃんを救う方法にも繋がる可能性もあるしね!

 サクラちゃんの魔石を奪い取ったというナナちゃんの指輪。まだ確証はないけれど、アザミちゃんが俺を何度も封印しようとした()()()と同類に思えるのだ。


 だとするならば、一石二鳥で二人を救い出せる可能性がある。


 希望的観測ではあるけれど、ここまで苦労して勇者教の聖都のその中枢に潜り込むのだ。そのくらいのリターンは求めてしまっても罰は当たらないだろう。


「本当に心配しているんですからね?」


 聞いていますか?とラテさんにおでこをツンツンされる。

 大丈夫です、聞こえてますよ?そしてたわわな谷間も見えてますよ?と言い返す前に再び両足に痛みが走った。うん、俺の足はペダルじゃ無いからそんなに踏まないで欲しいな!痛いよ?!

今日も今日とて遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

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