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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
挿話:魔法少女'sはお役に立ちたい!
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挿話:魔法少女’sはお役に立ちたい!5

 トンテンカンと音が鳴り、兄さんの指揮の元小さな祠がお庭の片隅に建てられる。

 小さなことからコツコツと!と兄さんは言っていたけれどいまいち意味が分からない。ヒルコ様は満足げに頷いて出来上がった祠に満足げにほおずりしていたところを見るに、これはヒルコ様を祀る祠なのだそうだ。


『私という神はこっちの神とは違って祀られることでも力になる。認知とは集合的無意識に――と難しい事はさておいて、私という神を崇められずとも神として祀られるだけで意味がある。願いとは思いだ。思いとは力だ。力あるモノ――この世界の魔王と呼ばれる存在に祀られればそれだけ私の力も増すという訳だ!んふふ、流石我が巫子よ!愛してるー』


 と、兄さんの頭に抱き着いて全身で愛情表現をしていた。……ヒルコ様の姿がぬいぐるみだからワンコがなついてるようにしか見えない!とはいえ、元の姿も幼女だったのを思い出す。うん、今ままでいいかな?だってなんだか犯罪的なシーンに見えそうだし!


「まったく、うちの娘たちを嫁に連れて行くのだと思えば、勝負に勝った代わりに祠を立てさせろとは何を考えているのだ、お前は」

「俺は常に愛する人達の事を考えてるのさ。……もう後悔なんてしたくは無いからね」


 兄さんの視線がチラリとこちらに向いた気がした?私の顔に何かついていたのかな?と隣にいるビオラちゃんを見ると何だかすごく悲しそうな、辛そうな顔をしていた。え、何かそんなに深刻な事なの!?


「いえ、違います。真人さんは真理さんの事を本当に大事にされていたんだなと思いまして」


 大事にされていた、とは思う。


 誕生日の日にはどんなことがあっても家にいようとしてくれたし、変なモノもいくつかあったけれどプレゼントも必ずしてくれた。だけど、私が兄さんと過ごせた日々は本当に数えるほどしかない。


 今になって思えば、私が終わらせたあの家(水無瀬家)が原因で逢ったのは明々白々。私が死ぬ目にあったようなあんな事を兄さんに幾度も幾度も幾度も幾度も繰り返させ、最後の最後に私を使って死なせてしまった。


 けれど、兄さんは死んでも私の事を想ってくれていた。今私のつけている髪留めは兄さんからのプレゼントだ。これに兄さんは自分の魂の欠片を遺して私を護ってくれた。本当に過保護だと思う。思うけれど、それが私にはとっても嬉しかった。だって私は、兄さんの事を、ずっと――


「真人さんはこちらの世界に来た時、どうやってでも元の世界に帰ろうとしたそうです。何が何でも帰るんだと意気込んでいたところで大魔王様に真理さんの訃報を聞いて、それでこちらの世界に残ることを決めたのだと聞いています」


 もう何か月も前の事ですがと言うビオラちゃんの言葉に私は目を丸くする。え、あれ?何か月も……?

私がこっちの世界に来て一か月もまだ経っていない。転移した時期と兄さんに逢った日を鑑みても全く日付が合わない。神様!これは一体!


『第五の力じゃよ――ではなく、単に時間の流れが違うのだろうな。世界が違えば時流も変わる。元の世界でも神の世界と人の世界では時流は違う。異世界の時の神同士が気が合わん限りは同じ流れにはならんだろうさ』


 つまり世界が違うせいで、兄さんがいなくなって私が元の世界で過ごしていた数日がこちらの世界の数か月になってしまっていたらしい。もっと早くこの世界に来れていれば――とは思うけれど、流石に無理だったことに気づき、私は深くため息を付く。


 私が沙夜と二人で修行した数日は必要なモノだったとこちらの世界に来てからも常々感じている。精霊にお願いをするのは結局元の世界でも異世界でも変わらなかったからだ。まぁ、私の場合はヒルコ様が仲介してくださっているからか水の精霊との相性がすごくいい。


「でもまぁ、水と水で私とビオラちゃんの属性が被っているところが気になるところだけどね!」


 デュミナスアクアとフォーチュナー。名前は違えど水使いなのは実のところ同じ。あの神様何考えてるのかな!衣装の事以外頭になかったんじゃないの!?


『適正があったのが水だったと言う事でしょう。真理様の場合、ヒルコ様の巫子ですので水以外考えられなかったのでは?』

「私の場合はお父様が嵐の魔王様でしたから……」


 話によるとビオラちゃんはお父さんを討伐され、田舎で隠れて暮らしていた所を勇者教に勇者だったお母さんが連れ去られ、逃げるように大魔王城に奉公に出ていたところで兄さんに出逢ったのだそうだ。


 今は華やかな衣装を着ているけど、田舎娘なんですよとビオラちゃんは言う。だから、大好きな人と一緒にいられる今の日々がとても幸せなのだそうだ。

 くぅ、兄さんったらなんていい娘を捕まえてるのよ!というか、ビオラちゃんだけでもこんなに好かれているのに兄さんのもう一人の奥さん――攫われたサクラさんってどんな人なのかが気になる。とっても可愛くて眼鏡の似合う魔王様だとは聞いているけれど……。


「とても素敵な方です。氷獄の魔王とも呼ばれ恐れられもしましたが、真人さんと過ごすあの方はとても可愛らしくて、幸せそうで。私とお友達に、家族になってくださった大事な人。だから、私もフレアちゃんも、アークルに残ったシルヴィアさんだって真人さんと同じくらいにサクラさんを助けたいんです」


 なるほど、と言って私は再び兄さんに視線を移す。頭にはいつの間にか白いモフモフとしたフレアちゃんとその眷属の公くんが乗っていた。公くんはネズミモードにもなれるらしく、フレアちゃんが居る時はこの姿が落ち着くのだそうだ。


「兄さんの奥さん……か。最初は色々と思う所もあったけど、ビオラちゃんがそこまで言うんなら私も逢ってみたいかな。逢って話して小姑として仲良くなっておかないと!」

「ふふ、真理さんならすぐに仲良くなれると思いますよ?だって、真理さんと同じくらい真人さんの事を――」


 と、ビオラちゃんが口を滑らせそうになったのを全力で防ぐ。うん、ダメだからね!それ以上言ったらとっても危険が危ないから!

 ビオラちゃんが何だか嬉しそうに笑っている。うー……ま、全く、兄さんにばれたらどうするつもりだったのよぅと私が唇を尖らせたところで、カトレアちゃんとアイリスちゃんが中庭に私たちを呼びに来てくれた。どうやら歓待のお茶会の準備ができたのだそうだ。

 カトレアちゃん曰く、お母さんのクッキーとケーキは絶品なのだとか。久々のあまーい甘味!んふふ、楽しみだなぁ!




「食べすぎと体重には気を付けてね……」

「あ、うん、そだね」


 アイリスちゃんの震える声に私は相槌を打つしかなかった。どうやら異世界でもカロリーが女の子の天敵であることに変わりは無いようだった。

今日も今日とて遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

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