挿話:魔法少女’sはお役に立ちたい!3
久々のお城の中はいつも通りきれいに掃除がなされ、黒――ではなく白を基調としたメルヘンチックな外壁んの佇まい通りの童話やかわいい絵本に出て来そうなお城がそのまま出てきたような内装をしています。
古くからお父様に仕えているリチャードさんに案内してもらいながら。私はずっとこのお城で暮らしていたので久々の我が家に思いを馳せます。けれども皆さんは何だか不思議なお顔をされています。ううん、そこまでおかしいでしょうか?
「いや、どう考えてもおかしい、おかしくないかな?何度でも聞くけど、ここのお城ってあのヴァンさんのお城何だよね?やっぱり雰囲気が壊滅的に合ってないよ?吸血鬼だよ?夜の魔王だよ!?夜王と言ってもいいんだよ!?なのに何で内装までファンシーなのさ!!庭は可愛い花が咲き乱れてるのはまだいい。でも、放し飼いされてるのが可愛い魔物っていうか着ぐるみだったよ!?いや、一応アンデット系だったっぽいけども!」
頭を抱えて真人さんがぷるぷると震えてます。ううん、お城の中が寒いのでしょうか?アンデット系の方が多い影響でお城の中は少し冷えた温度に調整している筈ですので確かに少し冷えるとは思うのですけれど。
「ねぇ、アイリスちゃん。色んな意味で突っ込みどころが多すぎるお城なんだけど、これって何かの罠みたいなものだったりするの?」
「そう思うのも無理はありません。だけど、何と言いますか全部お母様がこうするようにお父様にお願いされて……。私がもうこういうのは卒業しましたよって言っても聞いてくれなくって……」
「ああ、あるある。小さい頃に好きだって言ったモノをいつまでもプレゼントされるのよね……」
なんだかとっても姉さんがと真理ちゃんが意気投合しています。
姉さんと真理ちゃんは最近とっても仲が良くって、たまに二人して部屋で遊んでいたりするみたいです。私もたまに参加していますけれど、その時は三人でというよりも女子会みたいな感じで真人さん以外の皆さんで集まっていたりします。……真人さん、たまに寂しそうな顔をしていますけど、話題の中には真人さんの事に関しての事が結構多いので、とっても申し訳ないですが女子会参加は我慢していただければな、と思います。
「こちらが謁見の間になります。どうぞ――」
リチャードさんが重々しく扉を開くと、側近の皆さんとお母様。そして玉座にどっしりと構えるお父様がいらっしゃいました。ああ、本当にお父様はとっても格好いいです!
「よく帰って来たなアイリス、カトレア。久々にお前たちに逢えてうれしいぞ」
「おかえりなさい、二人とも」
いつも通りのにこにこ顔でお父様とお母様が出迎えてくれます。ああ、やっとここに帰って来れました。
「――しかし、こちらに来ているとは聞いていたが、よもや我の娘たちを連れて再び相まみえるとは思わなんだぞ、水無瀬真人」
「……は、はて、何の事です?私はピーター。そう、私はピーター!お父さんをパイにされてないけどピーターだよ!」
いつの間にやら仮面をつけた真人さんがばつが悪そうに顔をそらしてます。ええと、ごめんなさい。お手紙で書いてしまっていますので、仮面をつけても気づかれているかなって……。
「はぁ、ちゃんと口止めしてないお前が悪いんだぞ?」
「ライガー、そうは言われてもウキウキでお手紙を書いてるアイリスちゃんにそんなこと言えるかい?俺にはできないね!」
ドヤ!とどうしてか胸を張っている真人さんをライガさんがヤレヤレと首を振っています。ううん、何かダメだったのでしょうか?お世話になったのですから、お父様とお母様にもきちんと知って欲しかったのですけれど……。
「カトレアの気持ちもよくわかりますけど、真人さんの名前を出すのはダメだったかもしれませんね。なにせ――」
「そう、我を倒した男なのだからな」
ゆらり、とお父様が玉座から立ち上がります。頭に青筋を巡らせ、黒い闇の魔力が体中から溢れ出しています。え、あれ、なんでお父様怒っていらっしゃるんです?
「大丈夫だカトレア。お父さん。怒ってない。ああ、怒ってないぞ?むしろ喜んでいるくらいだ。我を倒した水無瀬真人が愛する娘たちを救ってくれたのだからな。だが――我の!大事な娘を!!誑かしおってえええええええええ!!!お父さんは!!!まだ!!!お前たちを嫁にはあああああああああああやらんぞおおおおおお!!」
「「は、はいいい!?」
姉さんと私の驚愕の声を上げます。だ、だって、何だってそんなことになっているんです?確かに、そのぅ、真人さんが旦那様だったら素敵だなぁとは思いますけれど……。
「ぐふぉおおお、あ、アイリスが頬を赤らめてモジモジとしているだとぅ!?水無瀬真人、き、貴様ぁ!うちの娘に何をしたぁ!!!」
「え、いや何もしてないですよ?」
「何もしてないとは何だ!!うちの子が可愛くないとでもいうのかぁあああ!!!」
「何で何もしてないのに怒られるのさ!?」
お父様から黒々とした魔力がドウと溢れ出し、背のマントがはためきます。お父様は鬼の形相で歩み寄り、手には――漆黒の剣。あ、あれれ、何でこんな事になっているのです!?
「まぁ、可愛い娘が急に男を連れて現れたら普通こうなるよね」
「しかも手紙に色んなところの魔王を一緒に倒して回っていますとか書いてた日には、父親として、魔王として、相対せずにはいられないかと」
ライガさんとシレーネさんが冷静に頷きあっています。何で他人事何です!?真理さんもビオラさんもそっと柱の陰に隠れないでください!って、姉さんまで隠れてる!
「く、くくく、今度こそ引導を渡してくれよう!水無瀬ぇ真人ぉおお!!!」
お父様が怒りの咆哮を上げ、その刃を真人さんへと振り下ろしたのでした。ど、どうしてこんなことに……。
今日も今日とてとってもとっても遅なりましt( ˘ω˘)スヤァ